Auroraがトヨタ、デンソーと自動運転ミニバン「シエナ」を共同開発

自動運転テクノロジー企業のAuroraは車両開発およびテストを実施する契約をToyota(トヨタ自動車)および大手部品メーカーのDENSO(デンソー)との間で締結した。Auroraのテクノロジーを搭載して開発される自動運転車両はまずミニバンのトヨタ・シエナが予定されている。

米国時間2月9日、Auroraとトヨタは自動運転バージョンのシエナを設計、テストすることで協力することを発表した。両社のエンジニアのチームは2021年末までに実車のテストを開始することを目標としている。

この発表は、2019年にAuroraがトヨタ、デンソー、SoftBankのVision Fundから10億ドル(約1046億2000万円)を調達してUberから独立したUber Advanced Technologies Groupを買収したことに続くものだ。1月20日に完了したこの買収は、UberがATGの株式を手渡し、4億ドル(約418億5000万円)をAuroraに投資するという複雑な取引だった。Uberは合併後の新会社の株式の26%を保有している。また、トヨタはAuroraの株式の一部を取得している。

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発表された提携計画は、 少なくとも部分的には 、2018年にトヨタとUberが合意したオンデマンド自動運転タクシー配車(ride-hailing)サービスを市場に投入するための計画に似たものとなっている。両社はUberのタクシー配車ネットワークでミニバン「シエナ」を使用し、同車にUber ATGの自動運転テクノロジーを搭載することで合意した。これにともないトヨタは5億ドル(約523億円)の投資を行った。当時、トヨタとUber ATGはこれらの車両はサードパーティーの企業が買い取って運用・管理することができると述べていた。

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Auroraの共同ファウンダーで最高製品責任者のSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏は、「これはまったく新しいパートナーシップであり、以前のトヨタのUber ATGn提携の延長ではない」と強調した。

トヨタとAuroraは、開発チームの規模、契約に関連した財務的インセンティブなどの詳細を明らかにしなかったため、現在のところこの提携が影響する範囲などを見極めるのは難しい。

それでもAuroraは一車種の開発とテストを超えたパートナーシップだという野心的なビジョンを打ち出し「長期的な戦略的提携」と表現している。また2021年の共同開発作業は、最終的に自動運転車両をトヨタと共同で量産し、Uberやそれ以外のタクシー配車ネットワーク上に乗せる基盤を築くことが目的だとしている。また自動走行に必要な部品の量産ではデンソーと協力する。自動運転車に関する融資、保険、メンテナンス等のカスタマーサービスのプラットフォームの構築でもトヨタと協力する方法を検討していくという。

アンダーソン氏はトラック運送のPACCAR、そして今回のトヨタとの提携が実現したことで「フリート管理などの商用の川下(ダウンストリーム)サービスの開発が同社にとってますます重要になってきた」と述べた。

最近のインタビューでアンダーソン氏はこう語っている。

タクシー配車サービスにはまず自動車とドライバーが必要ですが、その次にはサポートサービスが必要です。この一環としてトヨタと協力して研究している分野の1つは、Auroraのサポートサービスとトヨタの販売ネットワークを組み合わせ。Auroraの自動運転テクノロジーを搭載したトヨタ製車両を大規模に展開することです。これはトヨタのネットワークの巨大さが我々にとって非常に重要になる分野です。

自動車の場合、開発、テストから実際に市場で商用化されるまでの道のりは非常に長い。資金調達以外のも技術的な課題や規制上の課題が生じる。熟練労働者の確保をめぐるライバルとの競争もある。これらすべてをクリアしても自動運転タクシー配車ネットワークの運営にはまた独自のハードルがある。つまりAuroraがトヨタと提携したからといって今すぐに成功が保証されたわけではない。

しかし世界的な大手自動車メーカーとの提携はAuroraにとって極めて重要な一歩だったに変わりはないだろう。

Auroraの共同ファウンダーであるCEOのChris Urmson(クリス・アームソン)氏は米国時間2月9日のブログ記事にこう書いている。

トヨタには比類ない実績があり、エンジニアリングの専門知識と高いリーダーシップを持っています。これによりトヨタは高品質かつ手の届く価格で信頼性の高い車両を提供してきました。またタクシー配車ネットワークで真っ先に選定されるメーカーでもあります。我々はトヨタと協力できることをうれしく思っています。Auroraの自動運転テクノロジーでドライバーレス・モビリティサービスを実現しようと考えています。

アームソン氏はまた、同社初の商用プロダクトが自動運転トラックのテクノロジーであることに触れ「現在のライドシェア予約のかなりの部分が時速80km以上のスピードでの運転を必要としています。このため自動運転トラックで培った高速道路対応能力は乗客を安全に移動させるために非常に重要になると考えています」と付け加えている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Auroraトヨタ自動車自動運転

画像クレジット:Aurora

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:滑川海彦@Facebook

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