AzureとiRobotで実現するJR渋谷駅構内の無人ラーメン店、利用者の行動をカメラで追跡・分析

エースコックは2月14日、マイクロソフトのMicrosoft Azureを基盤にした無人店舗システムのSmart StoreやiRobotの床拭き掃除ロボットの「ブラーバジェットm6」を活用した、駅ナカ無人ラーメン店「モッチッチ ステーション」をJR渋谷駅の外回りホーム上にオープンした。2月28日までの期間限定オープンとなる。

モッチッチ ステーションで食べられるのは、その名のとおりモチモチした食感が特徴のインスタント食品「モッチッチ」シリーズの焼きそばとラーメン(ワンタン麺)。店内には立食用のテーブルが5席用意されており、5人が入店して満員になると自動ドアが開かなくなる仕組みだ。店内の客が誰か一人退店しないと、6人目の客は店内に入れない。

モッチッチの貯蔵庫は計量器メーカーであるイシダの計測器を内蔵しており、客が商品を手に取って貯蔵庫の扉を閉めると、全体の重量から減少したぶんを計算して、客が手に取ったモッチッチの個数を算出する。

価格はいずれも212円で、交通系ICカードもしくはクレジットカードで決済する。内蔵の液晶パネルに決済金額が表示されたら決済方法を選んで、決済端末にICカードをかざせばいい。クレジットカードの場合は残念ながらタッチ決済(コンタクトレス決済)には対応しておらず、決済端末の下部に備わっているカードリーダーにクレジットカードを差し込んで暗証番号を入力する必要がある。ちなみに、決済端末はCoiny(コイニー)製。Coinyは決済サービスを提供するスタートアップで、現在は事業持株会社であるヘイの傘下企業だ。

決済終了後は、モッチッチ貯蔵庫の左側のテーブルに設置されている、電気ポットもしくはウォーターサーバーからモッチッチのカップにセルフサービスでお湯を入れる。割り箸などもこちらに用意されている。このテーブルを注意深く見ると、それぞれの置き場がテーブルとは独立していることがわかる。

実はここにもイシダの計量器が仕込まれており、モッチッチの調理に必要なお湯の量である320mlを計測している。具体的には、お湯が減ったぶんの総重量の変化を認識する。計測器が320mlのお湯が注がれたと判断すると、自動的にモッチッチの標準調理時間である5分のタイマーがスタートする仕組みだ。なお割り箸置き場の計測器は、補充の目安を判断するためのもの。

あとは、お湯を投入したモッチッチを持って5席ある立食スペースのいずれかに移動すると、各スペースに設置されている液晶パネルに先ほどの5分のカウントダウンタイマーが表示される。

出来上がったらモッチッチを味わい、食べ終わったら返却口にカップを返すとともに、液晶パネルに表示される掃除ボタンをタップすることで、立ち食いスペース奥に設置されているiRobotの床拭き掃除ロボットのブラーバジェットm6が自動起動し、テーブルをまんべんなく拭いてくれる。

入店から退店までは以上のような流れになる。この店舗でAzureのSmart Storeがなにをやってるかというと、来店直後に客がモッチッチ貯蔵庫の前に立つと、設置されているカメラで性別や年齢を判別。

上部に設置されている超指向性スピーカーからモッチッチ貯蔵庫の前に立っている客だけに聞こえる音声で店内システムを解説してくれる。

店内に入って天井をを見上げると、モッチッチ貯蔵庫以外にもさまざまな場所にカメラが取り付けられていることがわかる。これらは来店者の移動経路を追跡・分析しており、お湯を入れて客がどの立食テーブルに移動するかをSmart Storeが判別し、その客が選んだテーブルの液晶パネルにモッチッチにお湯を入れてからの正確な時間を表示する仕組みだ。前述のように320mlのお湯を入れた直後からカウントダウンは始まっているので、席に着いたタイミングで表示される残り時間は数秒経過した4分55秒や4分50秒などになっている。

もちろんAzureのSmart Storeは、専用端末を使った決済処理も担っている。さらには冒頭で紹介した自動ドア制御による入店人数の制限もSmart Storeの役回りだ。

今回は試験店舗なので、モッチッチ貯蔵庫に異物が入ったり、モッチッチがスペースに正しく並べられていないと正確な計算処理ができない、自動ドア制御による入店制限を周知するために人員が必要など、完全な無人化とは言えない。しかし、飲食業界の人手不足を解消するソリューションとして進化する期待感は高い。

実際のレストランで電子レンジや電気ポッドを使って調理するのは、味的にも見映え的にも顧客満足度が低いと思われるが、客が退店したあとのテーブル掃除はコミュニケーション不要なのでロボットでの自動化余地が大いにあると感じた。

なお、下膳についてはすでにグーグル出身のエンジニアが創業したスマイルロボティクスが開発を進めているほか、職人顔負けの技術でたこ焼きを作るコネクテッドロボティクスのアームロボ「オクトシェフ」もある。さらには、弁当工場などで活躍する協働ロボットとしてはアールティの「Foodly」も実際に導入されている。人手不足が深刻化している飲食業界にとって、人と一緒に働く協働ロボットは今後さらに重要な存在になっていくだろう。

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