B2BクラウドコンピューティングサービスのMirantisがDocker Enterpriseのメジャーアプデを公開

Mirantis(ミランティス)が、昨年末にDocker(ドッカー)のEnterpriseプラットフォームビジネスを買収したのは大変な驚きだった。そのDocker自身は開発者に再び焦点を合わせている一方で、MirantisはDocker Enterpriseの名前と製品を引き継いできた。そして米国時間5月28日、MirantisはDocker Enterpriseの初のメジャーアップデートであるバージョン3.1をロールアウトした。

このアップデートの大部分は、ここ数カ月の間にコンテナエコシステムで起こっていたことと一致している。内容としては、Kubernetes 1.17 のサポートとWindows用Kubernetesのサポートの改善だ。後者は、Kubernetesコミュニティが昨年あたりからかなり熱心に取り組んできたものだ。また、プリインストールされたデバイスプラグインによる、Docker EnterpriseへのNvidia GPUの統合、Kubernetes用のIstio Ingressのサポート、Docker Engineを使ったクラスタをデプロイするための新しいコマンドラインツールも新たに追加された。

製品のアップデートに加えて、Mirantisは顧客向けに3つの新しいサポートオプションや、リモート運用管理のSLA、専任のカスタマーサクセスマネージャー、積極的な監視とアラートの提供なども発表している。サポートオプションとしては、すべてのサポートプランに対して24時間365日のサポートを受けられるなど。これによってMirantisは、マネージドサービスプロバイダーとしての性格を明確にした。

しかし、もっと興味深いのはDocker Enterprise買収がMirantis自体にどのような影響を与えたのかだ。結局のところ、この数年の間にMirantisはOpenStackプラットフォームによる上昇からレイオフに至るさまざまな出来事などのあらゆる浮き沈みを経験してきた。

「そもそもなぜこのようなことをするのか、また、ある時点で私が絶対にこれをやりたいと感じたのかというと、たとえ短期的な課題があったとしても、これがより競争力のある面白い会社を作ることになると感じたからです。そしてそれは真実でしたし、素晴らしいことでした」と私に語ったのは、MirantisのCEOで共同創業者のAdrian Ionel(エイドリアン・イオネル)氏だ。「私たちが買収以来知ったことは、まず第一に、顧客ベースは、私たち自身も含めて皆が考えていたよりも、はるかに忠実だったということです」。

イオネル氏は、少なくとも顧客の観点からすると、これは明らかに大きな変更であるために、一部のユーザーは離脱するだろうと考えていたことを認めた。「もちろん、私たちはお客様方に本当に説得力のある何かを提供するために、可能な限りのことを行いました。買収後の12月には新しいロードマップをすぐに公開して、そしてお客様方には、大々的にそれを受け入れていただきました」と彼は語る。これによってMirantisは、顧客ベースの90%以上とDocker Enterpriseの大規模ユーザーのほとんどを維持することができた。

これには少し驚かされたように見えるイオネル氏は、このことが会社が2つの「素晴らしい」四半期を迎えるのに役立ち、新型コロナウイルス(COVID-19)にもかかわらず前四半期に利益を上げることができた理由だと指摘した。

「私たちは、リスクに対する冷静な評価でこの買収に取り組みたいと考えました、多くの買収が失敗したことはよく知っていたので、それを成功させたかったのです」と彼は説明した。「私たちは決して超楽観的なアプローチでこれに取り組みたくはありませんでしたし、実際にそうしませんでした。おそらくそれが、私たちが良い意味で驚いた理由の1つなのです」。

現在の成功の理由は、企業がコンテナへの移行へさらに注力していることと、彼らが本当にDocker Enterprise プラットフォームを愛してくれているからだと強調した。愛される理由として彼が挙げたのは、インフラストラクチャの独立性、開発者向けの注力、セキュリティ機能、そして使いやすさだ。多くの大規模な顧客が求めていたことの1つは、今回のアップデートが提供する、大規模なマルチクラスター管理に対するさらに良いサポートだった。

「現在立つ場所に、私たちは1つの製品開発チームを持っています。1つの製品ロードマップを持っています。そして私たちはDocker Enterpriseの、非常に大規模な新しいリリースを行っています。すべてが完全に統合されていて、1つの営業部隊として運営され、実績を上げています。そのため、日々非常に忙しいですが、素晴らしくエキサイティングです」。

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画像クレジット: Jorg Greuel / Getty Images

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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