Boxがデジタルトランスフォーメーションの恩恵を受けて成長予測を引き上げ

クラウドストレージサービスを提供するBox(ボックス)は、ウォールストリートにとって、そしておそらく一般的なエンタープライズソフトウェアとして、いつでもちょっと謎の存在だった。HR、CRM、ERPなどのクラウドツールに移行したベンダーたちとは異なり、Boxはクラウド内のコンテンツを管理する手段を開発している。他のエンタープライズソフトウェアよりも理解するのは多少難しいものの、ゆっくりと、しかし確実に、Boxはより利益を生み出す会社へと移行してきたと言えるだろう。

同社は米国時間8月26日に、2021年会計年度第2四半期(2020年4月1日〜7月31日)の決算報告(Boxリリース)を提出した。内容は堅調だった。実際、同社は1億9230万ドル(約204億3000万円)の収益を報告している。同社によれば、これは前年比11%の増加であり、アナリストの予想である1億8960万ドル(約201億5000万円)を上回っている。一方で年間を通しての収益予想も、7億6600万ドル〜7億6800万ドル(約814億1000万円〜約816億3000万円)の予想から、7億6700万〜7億7000万ドル(約815億2000万円〜約818億7000万円)の範囲に上方修正された。

こうした結果は、同社がその基盤を固めたことに伴って得られたものだ。忘れてはならないのは、Tartboard Valueが1年前に7.5%の株式を取得(未訳記事)したことだ。だがこの積極的な投資家がほぼ沈黙を守り続けてきた中で、新型コロナウイルスの感染蔓延が顧客をBoxの得意な方向でクラウドに迅速に移動させる強制力として機能したために、Boxは株主の忍耐に報いることができているようだ。

利益を出そう

BoxのCEOであるAaron Levie(アーロン・リービー)氏は、それまでの自分たちの努力を上回って、パンデミックがいかに企業の素早いクラウドへの移行を促したかについて(未訳記事)、あからさまに語ることにためらいがない。彼はデジタル企業として、従業員を在宅勤務へと移行させ、変わらない効率で働かせることができたという。なぜなら、Slack、Zoom、Oktaのようなツールがあったからであり、もちろんBoxもその役に立っている。

これらすべてが、パンデミックがもたらした非常に困難な時期を通じて(未訳記事)、ビジネスを継続し、さらには繁栄させるために役立っている。「この環境のなかで、そのように業務をできたことは幸運でした。これは、私たちが100%SaaSであり、ビジネスを遂行するための優れたデジタルエンジンを持っていることを助けてくれます」と彼は語った。

彼はさらに付け加えて、「同時に、お話してきましたように、私たちは利益率を向上させてきました。このため、ビジネスの効率性も劇的に向上し、結果として、全体として非常に力強い四半期となり、予想を上回る成長と予想を上回る利益率を実現できました。その結果、今年度後半の収益と利益の両方に対して目標を引き上げることができました」とリービー氏はTechCrunchに語った。

デジタル化しよう

Boxは、既存の顧客と新しい顧客が同じように、より迅速にクラウドに移行するのを観察しており、それが同社にとって有利に働いている。リービー氏は、企業たちが現在、短期および長期のデジタル戦略や、クラウドインフラストラクチャ、クラウドのセキュリティ、コンテンツなどを問わず、クラウドに移行すべき仕事を再評価していると考えている。

「お客さまは、最も重要なデータと最も重要なコンテンツをクラウドに移行できる方法を模索なさることになるでしょう。それが、私たちのお客さまの中で起きていることです」とリービー氏は述べている。

「クラウドにアクセスするかどうかを、もはや問題にする段階ではなく、今の問題は、どのクラウドにアクセスするかなのです。もちろん私たちは、現在目にしているような、データをクラウド環境に移動し、安全に管理し、ワークフローを推進し、アプリケーション間で統合できるようにしたい企業のみなさま向けに、私たちの主要なプラットフォームを構築することに、重点を置いてきました」と彼はいう。

この結果、この四半期で10万ドル(約1060万円)を超える大規模な取引の数が60%増加した。そして直近の四半期で、プラットフォームのユーザーは世界で10万を超えた。つまりこのアプローチは上手く行っているということだ。

作り続けよう

1世代前のSalesforce(セールスフォース)と同様に、Boxはサービスのプラットフォーム上に、自社製品セット(未訳記事)を開発することを決定した。これによって、顧客は暗号化、ワークフロー、メタデータといった基本サービスを利用して、独自のカスタマイズをおこなったり、Boxがすでに開発しているツールを利用して、フルセットのアプリケーションを構築することもできるようになった。

Salesforceの社長でCOOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏が最近TechCrunchに語ったたように、プラットフォームアプローチは会社の成功の不可欠な部分(未訳記事)であり、リービー氏はBoxに対しても同様な考えを持ち、それを彼の会社の成功の基本とも呼んでいる。

「そのプラットフォーム戦略がなければ、私たちはここにいなかったでしょう」と彼は語る。「私たちはBoxをプラットフォームアーキテクチャとして考え、そのプラットフォームに次々に多くの機能を組み込んできたために、現在この戦略的優位性がもたらされているのです」と彼はいう。

これは、Boxを使用する顧客の役に立つだけでなく、Box自身が新機能をより迅速に開発するのにも役立っている(未訳記事)。これはパンデミックの中で急速に変化する顧客の要求に素早く対応しなればらななかった同社にとって、間違いなく本質的なことだった。

リービー氏は、BoxのCEOとして15年間在籍しているが、それでも会社も市場もまだ始まったばかりだとみなしている。「チャンスは大きくなる一方ですし、それは私たちの製品やプラットフォームでこれまで以上に対処可能なものなのです。なので、私たちはまだデジタルトランスフォーメーションのごく初期の段階にいると思っていますし、現代的なドキュメントおよびコンテンツ管理の仕組みについても、最も初期の段階だと思っています」。

関連記事:Aaron Levie: ‘We have way too many manual processes in businesses’(未訳記事)

画像クレジッド:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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