EtsyのiOSアプリに壁掛けアートをARで自室に飾りサイズや雰囲気などを試せる機能追加

欲しい商品を自宅に置いたときにどう見えるかを、客が自分で確認して購入を決められるようにTargetHome DepotWayfairIKEAなどの小売り業者は拡張現実(AR)を採り入れている。米国時間6月16日、EtsyもアプリにAR機能を搭載した。iOS版のEtsyアプリが更新され壁に飾るアート作品を客が拡張現実で確認できるようになる(Etsyリリース)。

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック以来、部屋の装飾品を買う客が増えていると同社はいう。Etsyによると、例えばこの3カ月間で2019年の同時期と比べて、壁飾りやアート作品の検索数が94パーセントも跳ね上がったという。同様に絵画で63パーセント、版画やイラストで54パーセント、それぞれ検索数が増えている。

家の装飾品はみなそうだが、近くにある家具との兼ね合いや部屋のカラーコーディネートとの調和などを含めて、壁に掛けるアート作品が自宅で実際にどう見えるかを想像するのは難しい。また、作品のサイズも飾りたい場所に適しているかどうか、そもそもそれを飾れる場所があるかどうかも心配なところだ。

画像クレジット:Sarah Perez

EtsyのAR機能は、そうした心配に応えることを目的としている。EtsyのiOSアプリで、Paintings(絵画)、Photography(写真)、 Prints(版画)のカテゴリーから商品を選び、商品画像の右上に新しく追加された拡張現実アイコンをタップすると、それが部屋の壁に出現する。同社によると「アート&コレクターズアイテム」のカテゴリーでは500万点を超える作品が提供されているというが、そのうち壁掛けアート作品として分類されるものがどれほどあるかは不明だ。

Etsyは、新型コロナウイルス禍が始まるずっと前の2019年初めから、AR機能の開発をしてきた。サイズや画像が標準化されたカタログにAR機能を追加できる一般的な電子商取引サイトとは異なり、EtsyのAR機能の導入は容易ではなかった。Etsyの場合、対象となるのがタイトルやタグや写真を個々の作家が独自に決めた大量の非構造化データだからだ。

この機能を構築するために、Etsyのエンジニアは3D空間に配置するアート作品の取り出しにiOSの画像処理アルゴリズムVisionフレームワークを、次に必要な場合の画像の切り出しにiOSのCore Imageを使用した。さらに、その画像に余白が含まれているかを検出し、トリミングが必要かをデバイス上で識別するための機械学習画像分類処理を実装した。利用者の環境にアート作品を配置するためにSceneKitARKitが使われてる。

アプリを起動してAR対応の商品を読み込み、iPhoneまたはiPadを動かして壁の空いている場所を探し、商品をタップすればそこに配置される。複数のサイズがある商品の場合は、商品をズームしてサイズ変更を試すことも可能だ。この機能は、長方形または正方形の商品でもっとも正常に機能するとEtsyは話している。

スマートフォンでの買い物を好む利用者が増えたことで、Etsyの販売のほとんどはモバイルで行われるようになった。2020年第1四半期の総収入は2億2810万ドル(約245億円)で、前年比35.7パーセント増となった。総利益は1億4560万ドル(約156億円)の24.8パーセント増。第1四半期は2020年3月31日までなので、この数字にはパンデミックの全体的な影響は反映されていない。第1四半期では、総売上の58パーセントがモバイルによるものだったとEtsyはいう。

このAR機能は、まだiOS版Etsyアプリではベータ版となる。Etsyによれば、Android版は現在開発中とのことだ。

画像クレジット:Etsy
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(翻訳:金井哲夫)