Facebookの戦略は当初から「包囲して征服せよ」だったが、SMSについても同様らしい。FacebookはこれまでSMSのユーザーをMessengerに誘導しようと努力してきたが、今後はAndroid版のFacebook Messenger内から既存のSMSが読めるようになる。
ほぼ全世界にリリースされたこのSMA機能により、SMSを使う友達を持つFacebookユーザーはFacebookとSMSアプリの間を忙しく往復せずにすむようになる。
Facebookのプロダクト・マネージャー、Andrea Vaccariは私にインタビューに対して、「Facebookの外には非常に人気の高いSMSクライアントが存在する。カスタマイズに特化して成功しているプロダクトもいくつかある(GO SMS ProやQKSMSなどはカラーテーマなどを選べる)。一方、Facebookが提供しようとしているのは使いやすさだ」と語った。
SMSのスレッドをすべて一箇所で管理できることになれば便利だ。FacebookはMessangerでSMSが使えるという能力を強調することによってSMSのユーザーをFacebookの世界に取り込もうとしている。
Facebook SMSsenger
最初にFacebookがAndroid版MessengerにSMS能力をもたせようとしたのは2012年だった。これはユーザーのデフォールトのメッセージ・アプリに着信したSMSメッセージをMessengerでも表示できるようにしたものだ。しかしあまりユーザーを集めることができず、2013年にこのサービスは停止された。この頃からFacebookの戦略はMessengerの使える場面を拡大することに集中し始めていたようだ。 2016年の2月、MessengerMessengerから利用できるSMSの新バージョンを発表した。
今日から世界中たいていの地域でAndroid版Messengerの「設定」を開くと「SMS」の項目が現れる。ここで「標準のSMSアプリ」オプションをオンにするととMessengerですべてのSMS会話がFacebook Messengerで処理されることになる。SMSのメッセージはMessengerでは紫色に着色されたスレッドとなる(Facebook内のチャットは従来通り空色表示)。この設定を行っても、Androidデバイスの標準メッセージ・アプリを含むSMSアプリでSMSメッセージを受信し読むことはできる。ただしメッセージの送信はMessengerからのみ可能となる。料金がかかる場合は従来通り。
SMSの受信側については従来通りで何も変更はない。すべてのプラットフォームのユーザーがSMSを受信でき、それがMessengerから発信されたのか他の標準アプリから発信されたのかを区別することはできない。ただしAppleはデベロッパーに対する制限が厳しく、
サードパーティーは標準のSMSクライアントを切り替えることができない。つまりMessengerでSMSを処理刷る機能はiPhoneでは利用できない。
既存SMSユーザーに巧みな誘い
AndroidデバイスでSMSアプリにMessengerを指定するとFacebookが提供するスタンプを送信できる。また写真、ビデオ、オーディオを添付ファイルにできる。ホームスクリーンその他に表示されるチャットヘッドにもSMSの着信が表示され、返信も可能になる。他のアプリを利用している最中でもチャットヘッドはその上に表示される。ただし、送金、GIF、VoIP通話、ビデオ通話の発信やサードパーティーのアプリを経由してUber、Lyftなどを呼ぶ場合にはSMSは利用できず、Messenger本来のFacebookチャットを利用することになる。
Facebookの Messengerプロダクトの責任者、David Marcusは、「Androidのテキスト・アプリにはメッセージ・テクノロジーの進歩に取り残されているものが多い。そこでわれわれはAndroidで本当にベストとなるSMSクライアントを作ることにした」と説明する。FacebookはまたMessengerを通じたチャットは一切無料であり、必要とされるデータ量もごく少ないということも指摘する。 これに対して一部のキャリヤではSMS1通あたりかなり高額な料金を課している。
またユーザーのプライバシーを保護するため、FacebookのサーバーではSMSを処理することも保管することもしない。「〔SMSの〕データ自体はFacebookを経由しない」とVaccariは説明する。またたとえ同一の発信者からのメッセージであっても、SMSのスレッドとMessenger本来のスレッドは別個に扱われる。同じ相手から同時にSMSとFacebookチャットを受信した場合にはかなり困惑させられることになるかもしれない。
VaccariによればSMSとFacebookチャットを統合することは「将来はあり得るかもしれない。しかし当面われれわれはSMSの振る舞いに手をつけるつもりはない。SMSの機能に変更はなく、単にMessenngerが新しいクライアントとして追加される」だけだという。
そうであってもFacebookはSMSのユーザーに対し微妙な方法でFacebookチャットをプロモーションしている。新しいメッセージを送信しようとして宛先の名前をタイプすると、Facebookに登録しているユーザー名が電話番号の上に表示される。相手がFacebookのメンバーであればSMSを送信するよりFacebookのチャットを選ぶことになるかもしれない。
一方、FacebookがチャットについてMessengerアプリをユーザーに使わせようとする努力は猛烈だ。2014年にFacebookは本体のアプリからチャットのタグを除去し、チャットをするならMessengerアプリを使うよう仕向けた。さらに今月に入ると、モバイル・デバイスからm.facebook.comを通じてチャットすることが不可能になった。Facebookではチャットをソーシャルメディアの未来と見ており、一部のユーザーが反発することなどは気にしていないらしい。
Messengerには9億人のユーザーがいる。Facebook傘下のWhatsApp at overのユーザーは10億人を超える。Facebookは現代のチャット・ビジネスで圧倒的な地位を占めている。WeChat市場を独占している中国を別にすれば、Facebookのチャットには深刻なライバルは存在しない。ユーザーが昔ながらのSMSを使い続けることはあり得るが、気づいてみると使っているアプリはMessengerだったということになりそうだ。
〔日本版〕6/15朝の訳者の環境ではまだFacebookのAndroid版MessengerアプリにSMSのタグは表示されていない。なおSMSは2段階認証などに用いられており、利用頻度は高いものの設定方法はまちまちなのでデバイスごとに確認する必要がある。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)