先週、早まって一瞬公開されたFacebookの新しい写真とビデオの共有アプリ、SlingshotがiOSとAndroid向けにアメリカで正式リリースされた。
このアプリは友だちに写真やビデオを送れるが、その友だちがコンテンツを見るためにはまず自分も写真などを送り返さねばならないというユニークな仕組みになっている。プロダクト・マネージャーのWill Rubenは「全員がコンテンツのクリエーターになる。単なる観覧者は誰もいない。そこがSnapchatとの大きな違いだ」と述べた。
Slingshotの成否は、ユーザーがこの「返信してアンロックする」というユニークな特徴を不必要に面倒なハードルと感じるか、参加のインセンティブと感じるかにかかっている。
詳しい話に入る前に、簡単に概要を紹介してておこう。Slingshotは写真や15秒以下のビデオを、相手を指定して、または最近Slingshotで会話した友だち全員に送信できる。,コンテンツの存続は一時的で、閲覧後に消去される。ただし自分が作成したコンテンツは自動的に保存できる。友だちはFacebookの友だちリストないし電話帳の連絡相手から選べる。
ただしプライバシーはあまり強固ではなく、ユーザー名を秘匿するといういわゆるくオブスキュリティー・モデルに頼っている。したがって簡単に推測できるユーザー名を選んだ場合、誰でもSlingshotを通じて写真などを送りつけることができる。
デザインは全体に楽しげで、文字や線を描き込んだり、ユーモラスな効果音やBGMを入れたりできる。
こちらはFacebookのイントロ・ビデオだ。
Slingshotの動作
SlingshotはスタンドアローンのアプリでFacebookの一部ではない。サインアップにはスマートフォンの電話番号を用いる。アプリは電話帳と(メンバーである場合)Facebookの友だちリストをスキャンして新たなソーシャルグラフを作成する。FacebookのメンバーでなくてもSlingshotは利用できる。Slingshotは定期的に連絡相手をスキャンしてソーシャルグラフを最新の状態に保つ。
Slingshotのデフォールトはカメラ画面で、上部に小さいカウンターが表示され、ロックされている未読メッセージとすでにアンロックされたメッセージの数が表示される。画面下部のShootボタンをタップすると現在の画面が撮影され、長押しすると動画が撮影される。Selfieボタンをタップするとフロントカメラに切り替わる。さらにタップして最大5行のテキストを書き込める。
Slingshotにはよく出来たお絵かき機能も用意されており、右側のカラーピッカー・レールを使って好みの色を選択する。左右にドラグしてブラシのサイズを変えることができる。写真の顔にヒゲを描いたり夕日を付け加えたり自由自在だ。ドローツールは操作するたびにマンガ的な効果音が鳴って気分を盛り上げる。
処理が終わったらUseボタンをタップすると、最近Slingshotでなにかコンテンツを送ってきた相手のリストが表示される。その下にSMSで友だちをSlingshotに招待するオプション、まだSlingshotからコンテンツを送っていない友だちのリストが続く。アンロックしていないSlingメッセージにはモザイクをかけてぼやかしたサムネールが表示される。
プライバシーにはご注意
Slingshotの「オブスキュリティによるプライバシー確保」というポリシーには少々懸念を抱かざるをえない。もしユーザー名がどこかに公開されたり、簡単に推測できるようなものだったりすると誰でもあなたにSlingshotメッセージを送りつけてくることができる。メッセージを受け取りたくユーザーは、そのユーザー名を左にスワイプして非表示にできる(設定から再度表示するようにできる)。もしわいせつ写真などを送りつけてくるユーザーがいればFacebookに通報できる。
送信したコンテンツは全員がアンロックして閲覧した後、あるいは30日後に自動的に消滅する。このときFacebookはコンテンツをサーバーから削除するということだ。
Slingshotはブレークするか?
謎めいたコンテンツに「返信してアンロック」するという仕組みは自然に好奇心を刺激して自分もコンテンツを作ろうとするインセンティブになる可能性はある。誰もが興味を持つような印象的な写真はFacebookやInstagramに、親しい間でのプライベートな写真はSnapchatに、普段のなんでもないような写真がSlingshotに、と住み分けることになるかもしれない。
しかし同時に、「返信してアンロック」は面倒すぎる小細工だと感じられるかもしれない。テキスト・メッセージですむところをどうしていちいち写真つきでやりとりしなければならないのか、と感じるユーザーが多ければ利用は進まないだろう。
「ソーシャルメディアでコンテンツを作っているのは1%のユーザーにすぎない」という「1%の法則」の現実を変えるのは必ずしも不可能ではないだろう。Instagramは巧みなUIデザインによって誰でもアーティスティックな写真のコレクションを作れるようにして裾野を大きく広げた。Slingshotはメッセージ・サービスというもっとも競争の激しい分野に挑戦している。もしかするとSlingshotはなんでもない日常写真を友だちと共有するという新しい分野を開くことができるかもしれない。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)