マーク・ザッカーバーグは「 拡張現実(VR)こそFacebookの未来だ」と語ったが、その言葉どおり、ザックはニュースフィードのVR化に力を入れているだけでなく、早くも収益化を図ってきた。
広告へのVRフォーマットの採用に当たって、 Facebookは消費者の関心を盛り上げるため、通常では人が行けないような場所の記録を提供しようとしている。こうすることでVRビデオへの自発的なアクセスが高まり、各方面に共有される。こうなればFacebookとしてはフィードに自社のVmaRketingのCMを忍ばせておく効果が出る。
Facebookはこの9月にウェブとAndroidアプリで360度ビデオのサポートを開始していたが、今回ユーザーはiOSでもVRビデオを体験することができるようになった。
Facebookは「没入的ストーリー」となるVRフォーマットのCMをAT&T、Corona、 Nescafe、Ritz Crackers、Samsung、 Walt Disney Worldのような有力スポンサーからまず受付を開始する。
こうしたビデオは通常のモニター上でもタップしてドラグすることで周囲360度を見回すことができるが、Samsung Gear VRのような立体視できるVRデバイスを使えば本当の臨場感を得られる。一方でFacebookはニュースフィードに360度ビデオのコンテンツを増やすため、日本のリコー(Theta)を始めGiropticや IC Real Techなどのカメラメーカーに呼びかけて、カメラアプリに「Facebookで共有」ボタンを設置させようとしている。このボタンが普及すれば、ユーザーは録画した360度ビデオをニュースフィードにアップロードできるようローカルで面倒な処理をする必要がなくなる。
またFacebookはフィルメーカーが高品位な360度コンテンツを制作するためのノウハウを掲載するミニ・サイトを開設し、ガイドラインやFAQなども載せ始めた。世界的なVRビデオ・プロデューサーのChris MilkやAaron Koplin(Vrse)がクリエーター向けに没入的ビデオの効果的な制作方法をプレゼンしているので関心がある読者は訪問してみるとよい。
全体としてみるとVR普及戦略はFacebookが過去に写真、のちにビデオの投稿を増やそうとして採用した戦略とほぼ同様であることがわかる。Facebookはそのフォーマットでもっともダイナミックで魅力的に見え、ユーザーの関心を集めそうなコンテンツの制作、投稿を積極的に応援している。そこで一般ユーザーブランドが制作する非商業的コンテンツが十分集まった段階で、ユーザー体験を害しない範囲で徐々に広告を挿入していくわけだ。
現在この戦略がVRビデオに対して用いられている。FacebookのニュースフィードにはFelix & PaulやBuzzFeedのような有名な有名なビデオ製作者がトップ・メーカーの360度カメラを用いた作品が続々と登場している。
この段階でブランドの果たす役割は大きい。360度ビデオ、VRビデオは制作に金がかかる。インディーの映像作家は、通常のビデオ制作に比べてはるかに多額の資金を調達するために苦労しなければならない。ここでブランドには比較的少額の投資で優秀なビデオに作品を制作させることができるチャンスが生まれる。ただしこの場合でも、作品のCM化はできるだけ控え目にすることが重要だ。
FacebookはYouTubeを始めとする有力ビデオ・プラットフォームと競争していかねばならない。新しいビデオ・サイトは皆「VR時代のYouTube」になろうとして必死だ。Facebookとしては他のプラットフォームで制作されたビデオを再共有するデスティネーション・サイトとなることは本意ではないだろう。しかしセレンディピティ〔偶然の発見〕の魅力に関するセオリーからしても、VRビデオ、360度ビデオに必要なのは、ユーザー体験を阻害するブランドの身勝手な広告化の抑制しつつ、誰も見たことのないシーン(合成された架空の景色でもよい)をできるかぎり広汎に採録してユーザーに推薦することだろう。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)