Facebook、PayPalらと提携してモバイルアプリで支払い情報を「オートフィル」

Facebookは、あの小さな画面に詳細な支払い情報をタイプするのをやめ、デベロッパーや支払いサービスがもっと儲かるよう手助けし、さらには自社のアプリインストール広告がEコマース会社に収益をもたらすことを証明したいと思っている。そして今日(米国時間9/23)Facebookは、PayPal、Stripe、およびBraintreeとの提携によって、JackThreadsとMosaicという2種類のEコマースアプリで、先月テストした「Facebookでオートフィル」(Autofill With Facebook)を提供開始する。

この機能は支払いプロバイダーと提携して行わるもので、少なくとも現時点では、競合ではなく互助的であることを理解する必要がある。いつの日かFacebookが、自身で支払い処理を行い支払いフローを支配しようとする可能性はある。しかし今のところ、もしデベロッパーがPayPalとそれに被せた「Facebookでオートフィル」レイヤーを使用した場合は、手数料はやはりPayPalに入る。3社のパートナーは近々2社になるかもしれない。本誌が報じたように、PayPalはBraintreeの買収間近であるかもしれない。

「Facebookでオートフィル」のデモはすぐに見ることができる。「初期テスト」とFacebookが呼ぶものは、Mosaic(フォトブックの購入)およびJackThreads(流行ファッション)のiOSアプリで、一部のユーザーには今日から、またFacebookに支払い情報を登録しているユーザーには今週中に提供される。Facebookの支払い情報はここで追加できる

これまでこのテストは、JackThreadsユーザーのごく一部の早期ベータテスターのみが利用できた。デベロッパーは今後のアクセスのためにサインアップできるが、承認されるまで機能は利用できない。

「Facebookでオートフィル」を使ってみる

ユーザーから見たしくみは次の通り。Eコマースアプリの買い物客は商品を眺め、いつものように商品をカートに追加する。しかし、以前デスクトップでFacebookギフトやクレジットを買ったりゲーム内購入を行い、Facebookに支払い情報を登録した人には、ここで何か違うことが起きる。

その人たちがチェックアウトしてクレジットカード番号や住所などの支払い情報を入力する画面に行くと、「Facebookで高速チェックアウト」というメッセージと、ブルーの「あなたの情報をオートフィル」ボタンが画面トップからスライドしてくる。タップすると、ユーザーはFacebookのiOSアプリに飛ばされ、支払い情報の詳細を確認し、送付先住所を選択できる。

「OK」をタップすると、バックエンドではFacebookとアプリデベロッパーの支払いプロセスが「ハンドシェイク」を行い、クレジットカードその他の情報が安全に転送される。フロントエンドでは、安全のためカード番号の下4桁のみが表示される。この後ユーザーが買い物アプリに戻されると、入力フィールドには支払い情報が事前入力されている。こうして、ユーザーは一文字もタイプすることなく購入を承認できる。

Facebookが自分のクレジットカード情報をたらい回しするのは気味が悪い、と感じる人たちは必ずいるだろうが、実際にはこのソーシャルネットワークのデータセキュリティー実績は比較的堅牢だ。たまの不具合バグはあるが、TwitterLinkedInで起きたような大規模なパスワードハッキングは起きてない。しかし、もしFacebookが世界を支配することを恐れているなら、このテストは間違いなく、あなたが何を買うかを彼らがより多く知るようになる前兆だ。ただしFacebookの株を持っている人にとっては朗報かもしれない。

Facebookコマースの大きな夢

ユーザーにとって、これはモバイルをより早くよりシンプルに変えるものだ。これは気を散らされたり考え直す前に、購入を完結する可能性が高くなることを意味している。Eコマースアプリの開発者は、コンバージョン率の増加によってより多く稼ぐようになる。

支払いプロバイダーにとっては、支払い件数が増えより多く手数料を得ることができる。
Facebookにとって、これは「作る ― 伸ばす ― 収益化する」プラットフォーム戦略の一環だ。あなたがオートフィルで買い物した時、Facebookは、あなたが誰でいくら使いどのアプリを利用したかを知っている。これは、アプリインストール広告の投資効果を証明する上で決定的に重要だ。もしJackThreadsが、アプリをダウンロードさせるためのFacebook広告に1ドル払っていて、クリックしたあなたが5分後にJackThreadsで25ドル使ったことをFacebookが知れば、FacebookはEコマースアプリの開発者にこれが価値ある広告であることを説得し、さらにキャンペーンを売り込むことができる。

Facebookの支払いサービス責任者のDeb Liuに、PayPalその他の支払いプロバイダーと協力していることについて尋ねたところ、彼女はこう説明した。「われわれは同じ問題を解こうとしている。デベロッパーの収益化とコンバージョンを手助けすることだ。コンバージョンが増えれば、BraintreeやStripeやPayPalが扱う支払い件数は増える[そして手数料収益が増える]」

そしてLiuは、現在FacebookはEコマースの別の問題を見極め、解決しようとしているところだと言った。「コンバージョンの壁が高いのはモバイルであり、そこは将来消費者が向かう場所だ。これを驚くべくモバイル製品にすることは非常に重要だ。それでも、いつかこれをデスクトップで行う可能性もわれわれは捨てていない」。

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(翻訳:Nob Takahashi)


投稿者:

TechCrunch Japan

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