なんとも早いエグジットだった。この新しいスマートウォッチブランドは他とは違う製品を提供するため、昨年3月に登場したばかりだ。中央ヨーロッパ、ルーマニアの優秀なエンジニア、ロンドンのビジネスに優れた人材、そしてCitizenの元役員が立ち上げたのがVectorだ。Vectorは「お手ごろなラグジュアリー」という新たなスマートウォッチの分野を切り開いた。
そのたった1年後、Vectorはウェアラブルのグローバル企業Fitbitに買収された。買収額は非公開だ。VectorのファウンダーでCTOのAndrei PitisはTechCrunchに対し、この買収は同社のソフトウェアプラットフォームとデザインチームの獲得が目的だったと話す。だがこの買収により、Fitbitがラグジュアリースマートウォッチの分野に進出することはないようだ。
この買収が示唆するのは、Fitibitはウォッチ、ウエアラブル、フィットネスデバイスにおける優秀な人材を獲得する施策を続けているということだ。昨年11月、FitbitはスマートウォッチのパイオニアPebbleを買収し、エンジニア人材をFitbitに吸収した。VectorにもPebbleと同じ運命が待ち受けている。Vectorは少額しか調達していないが、ハードウェアとソフトウェアの優れたインテグレーションと魅力的なデザインで注目を集めた。
オンラインの声明でVectorは「私たちの独自の技術とFitbitの体験やグローバルコミュニティーから得られるノウハウで、新たに素晴らしいプロダクト、機能、体験を制作していきます」と伝える。
Vectorのスマートウォッチは、e-InkのLCD画面を搭載し、30日のバッテリー寿命とiOS、Android、Windows Phoneでコントールできるスマホアプリの開発で、この業界に新風を吹き込んだ。また、Vectorは独自のスマートウォッチのOSを開発し、開発者にAPIを開放した。開発者はそれを使って、独自のアプリやウォッチフェイスを作ることができる。ウォッチ自体の見た目もいい。LCD画面は近くで見ても本物のウォッチみたいに見える。ステンレスのケースに強化ミネラルガラスを搭載し、50m防水であることを考えると良い品物だ。色はローズゴールド、シャンパンゴールド、ステンレススチール、ブラックプレイテッド(黒メッキ)があり、ベルトは革、ステンレス、スポーツ用のストラップもあった。
Pitisがルーマニアで創業したVectorは、昨年ローンチするまでの2年間、ステルスで開発を行っていた。資金はGecad fundからシードラウンドで調達した200万ドルだけだ。Pitisは ClevertaxiとI-Rewindのエンジェル投資家であり、ブカレストのTech AngelsとInnovation LabsをBogdan Iordacheとともに創業した経歴を持つ。
Pitisはウォッチ業界の精鋭チームを集めていた。Joe Santana(有名ウォッチブランドTimexの前CEO)、デザイナーディレクターにSteve Jarvis(TimexやNikeのFuelBrandのプロジェクトでクリエイティブリーダーを務めた)。COOのRon Spencerは、FossilとBulovaでもCOOも務めた。
Vectorは、以後Vectorの名前を冠した新製品が登場することはないとしたが、既存のプロダクトと関連するソフトウェアは引き続き利用できるという。だが、その開発も停止する。Vectorは、カスタマーへの今後の対応を記した包括的なFAQをリリースしている。
カスタマーサポートチームはヘルプページやメール(support@vectorwatch.com)で対応し、保証は維持するという。
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(翻訳:Nozomi Okuma /Website)