YouTubeの新しいコメントシステムを使うにはGoogle+を経由する必要がある。Google+は「理屈の上では」重要でも、実際にどうしても使わねばならない場面は少なかった。これが大いに変わることになりそうだ。
Googleは一種のソーシャル身分証明として利用できるようGoogle+をデザインした。Google+以前には、Googleは個別ユーザーについて、メールのやりとりから分かる程度の情報しか持っていなかった。その他ログインした状態でGoogle検索を行えばその履歴も利用できる。Androidのユーザーであればさらに他の情報も得られる。しかしGoogleはユーザーの年齢、教育、職歴、興味、そしてなかんずくソーシャル・グラフについては推測するしかできなかった。
そこで2011年にGoogle+がローンチされた。「ソーシャルネットワーク」という建前だったが、実際にはユーザーから自分自身についての大量の情報を引き出すことが最大の狙いだったはずだ。
しかし当時すでにFacebookとTwitterが地位を確立した後で、この出遅れは大きかった。
だが、われわれがかわいいネコや最新の音楽ビデオを見ようと思えばYouTubeを訪問するしかない。VimeoやDailymotionには悪いが、YouTubeとは比較にならない。そこでGoogleは昨日(米国時間9/24)、近くYouTubeを楽しむにはGoogle+アカウントが必要になると発表した。
つまりYouTube (それにBlogger)のコメント・システムが完全にGoogle+ベースに移行するというのだ。今後コメントするには必ずGoogle+アカウントが必要になる。
ユーザーのメリット…
ユーザーにとって第一のメリットは悪名高いYouTubeのコメント荒らしをかなりの程度防げることだろう。ヘイトスピーチやいやがらせなどのためにその場限りの使い捨てアカウントを作って書き込むろくでなしが大勢いる。もちろん今後も偽名でGoogle+アカウントを作ることはできるが、荒らしのコメントをするためにいちいち偽アカウントにログインしなければならないのは手間だから、やはり抑圧効果が期待できる。
またGoogle+アカウントをベースにすることで、ホワイトリストを作って特定のユーザーのみコメントを許可するなどビデオの投稿者がコメント欄を管理しやすくなる。[情報開示:YouTubeのコメント担当プロダクト・マネージャーのNundu Janakiramは私の友だちで以前ルームメイトだったこともある。ただしそのことはこの記事になんら影響を与えていない]
Googleのメリット
Google+がYouTubeコメントのインフラになるのはGoogleにとって計り知れないメリットがある。
短期的にはGoogle+のユーザー登録が大きく増える。特に一日中YouTubeにへばりついてあれこれ大量のコメントを書き込んでいるような若者層を取り込むのに効果抜群だ。Google+のユーザー層は平均年齢が高くであまりおもしろみがないという評判を打ち消すことができる。
中長期的には、効果的な書き込みAPIを欠いているため、他のサービスから書き込めず、そのためコンテンツの質、量ともに不足するというGoogle+の大きな欠点を是正する糸口になるだろう。
Googleは比較的容易にYouTubeのコメントとビデオをGoogle+のストリームに統合することができるはずだ。YouTubeビデオが多数、Google+のストリームに現れれば、コメントも活発になり、ユーザーエンゲージメントも上昇する。
またYouTubeをプロモーションの重要な手段としているミュージシャンや俳優などのセレブをGoogle+に引っ張り込むこともできるだろう。一般ユーザーがスターのアカウントに惹かれてソーシャルネットワークを頻繁に利用するようになるという現象はFacebookやTwitterでも見られた。
万能全知のGoogleだが、Google+アカウントに関連づけられることで今後はさらに個人別のYouTube視聴履歴にもアクセスが可能になるわけだ。これをターゲット広告にどう活かすかは分からないが、サイクリングのビデオを頻繁に見ているから自転車関連の広告を表示するといった直接的な方法以外に、同一の視聴傾向のユーザーに効果がある広告を判別してターゲティング精度を改善するするといった応用も考えられるだろう。
いずれにせよ、現在のインターネットに残る最後の掃き溜めの一つであるYouTubeのコメント欄がソーシャル化によって少しでも改善されるならよいことだ。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)