Googleの「公正使用」勝訴後も残る著作権に関する疑問

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OracleがGoogleを相手取った長きに渡る裁判に関し、もしも陪審員がどのような判断を下したか知らなければ、昨日(米国時間5月26日)の両社の弁護団の様子からは、その結果について推測することはできなかっただろう。判決が読み上げられた直後、両サイドの知的所有権を専門とする弁護団は、それぞれ肩を寄せあって小声で話し合っていた。その光景からは、OracleがGoogleのポケットから最高で90億ドルを手に入れる可能性のあった、重要な戦いに敗れたということは見てとることができなかった。

陪審員の、GoogleによるAndroid上でのJava APIの利用は公正使用である、という判断は、Googleが巨額の小切手を切ることを防いだだけではなく、Javaを利用したソフトの開発者にも一息つく間を与えた。しかしながら、前回の裁判では、APIが著作権による保護の対象とされるという判決が下っており、公正使用を認める判決さえ覆される可能性があるという意味で、Googleにとっては複雑な勝訴であったといえる。さらに、Oracleは既に控訴の意向を示している。

デューク大学でコンピューターサイエンスの教授を務めるOwen Astrachan氏は、今回の判決に関し「APIに著作権が認められていることを考えると、今回の判決は興味深い」と語る。Astrachan氏は、著作権に関する前回の裁判と、今回の公正使用に関する裁判両方で、Google側の鑑定人として証言しており、ホテルの部屋で、Twitter上に現れた判決に関するニュース目にしたときには、喜びで飛び跳ねたという。「Java APIの利用について、それが一件ずつ公正使用かどうか裁判で争わないといけないということでしょうか?面白いですね。Oracleは誰に対しても裁判を起こせるくらい十分なお金を持っていますし」

開発者には、これから自分たちの製品を裁判で守る必要があるかどうか、という問題がまだ残されている。彼らのJavaの再実装が、公正使用と認められる可能性はあるものの、誰もOracleのような資金力のある会社を相手に、裁判で戦おうとは思わないだろう。EFFのような支援団体は、ラベルAPIに著作権さえ認めない方が、開発者のコミュニティーにとってはよりシンプルで安心できると主張する

Googleの弁護団は、公正使用の四大原則をもとに議論を作り上げ、Astrachan氏いわく、これが陪審員に対してうまく効いたようだ。弁護士と証人は、コードの実装について一風変わった例を示した。問題となっていたAPIは、2週間に及ぶ審理の中で、キャビネット、ハンバーガー、コンセント、ハンドルさらにはハリーポッターシリーズにまで例えられていた。しかし、結果的にこの奇妙な例えが、望まれていた効果を発揮したのだ。

「多分、ハンバーガーとコンセントとハンドルの例えに効果があったんだと思います」とAstrachan氏は語り、さらに陪審員による評決が発表された後、「私たちはハンバーガーを食べにいこうかと冗談を言っていました」と話した。

一方、Googleの弁護団はシャンパンで勝訴を祝っていた。

しかし、祝福ムードはOracleのオフィスまでは届いていなかった。今回の裁判でOracle側に立った、知的所有権専門弁護士のAnnette Hurst氏は、LinkedIn上で判決内容を非難するブログ記事を公開した。Hurst氏は、今回の判決で、Oracleが不意打ちを食らったと示唆し、「GoogleによるAPIの使用法が、公正使用にあたると予想した著作権の専門家はいなかったでしょう」と綴っている。

「この度の判決が覆されることがなければ、世界中のクリエイターが苦しむことになるでしょうし、フリーソフトウェア運動自体も今大きな危機に直面しているといえます。」とHurst氏は付け加えた。「著作権で保護されている全てのソフトウェアの所有権が、この結果を受けて今後どのように守られていくのかわかりません。ソフトウェア企業は、ソフトウェアそのものとしてではなくサービスとして製品が管理されるよう、今からクラウド化を加速させなければなりません」

Hurst氏の、GoogleによるAndroidの開発でオープンソース・ソフトウェアが痛手を負ったという主張は、Oracleの共同最高経営責任者であるSafra Catz氏が証言中に述べたコメントと内容を同じくする。Catz氏は、Androidの導入によってJavaのオープンソースコミュニティーが分裂し、開発者をふたつのプラットフォームに振り分けることになってしまったと語っていた。

Hurst氏は、開発者コミュニティーを強く非難しながら、フリーでオープンなソフトウェアを推進する運動の草分け的活動家でプログラマーでもあるRichard Stallman氏の名前を挙げ、ブログ記事を締めくくった。「この戦いであなたたち開発者は、Oracle側に立つべきでした。Googleの言うフリーは、Richard Stallman氏が言っていたフリーとは意味が違うんです」

5年におよぶ法的論争をもってしても、Oracleの辛口批評家の大多数がその意見を曲げることはないようだ。しかし、そこには控訴という手段が残っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

投稿者:

TechCrunch Japan

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