IDC、ファブレットやウェアラブルの影響を考慮にいれて、2013年タブレットの出荷台数を2億2700万台に下方修正

一般消費者および企業の意識が急速にタブレットに向かう状況を迎え、PC業界というのはかなりの勢いで縮小しつつあるように見える。iPadのような軽量デバイス、ないしAmazonのKindle Fireのような安価なデバイスが、より大きく、そして高価なコンピュータデバイスからシェアを奪いつつあるようだ。しかし、そのような状況の中、IDCはタブレットの年内出荷台数予測を減らすこととなった。

IDCによると、今回の分析の背景には「競争の激化」があるとのこと。タブレットと競合するのは、大きな画面を備えたスマートフォン(最近はファブレットという呼び方が定着してきた)や、スマートウォッチのようなウェアラブルコンピューターであるとしている。そうした先進デバイスへの期待と、さらにはQ2の間に大きな話題となるタブレットが登場しなかったこともあって、2013年におけるタブレットの出荷台数予測を2億2930万台から2億2740万台へと、200万台減らすこととなった。

下方修正といっても、ほんの少しの減少に過ぎないというのは正しい。「予測」の話なので、大した意味はないという意見にも一理ある。もっといえば、下方修正した数値であっても、2012年比で57.7%増ということになっている。しかし、IDCが予測を下方修正することになった原因については、なるほど興味深い事実があるようだ。たとえば、いくら安価になったとはいえ、依然として一般消費者にとっては、タブレットが高価なものなのだ。また、PCから無駄を省いたというのがタブレットのウリ文句のひとつであるが、それでも一般消費者からするとオーバースペックである面もあるということだ。利用者の拡大を狙うに連れ、価格面の問題が一層強調されるに至っているのが現状であるようだ。

ちなみに、企業利用面で言えば、タブレットというデバイスは現状ではマイナーな存在だ。しかし徐々に存在感を増している。IDCによれば、とくに教育や小売産業によるタブレット購入は、2012年の販売台数のうちの10%程度だ。2017年までには、少なくとも20%まで増加するだろうという見通しもある。

そうした見込みはあっても、先進諸国では既に急激な成長というのが望めない段階に達しているともIDCは見ている。「アメリカなどの成熟市場はアジア太平洋地域に対してシェアを失っていくことが予測される」とのこと。新興国にて2017年までには4億700万台のタブレットが出荷されることになる中、タブレット先進国においては製品の飽和状態に達するだろうとのこと。

短期的に見れば、ファブレットなどとの競合により、タブレットのさらなる低価格化が実現されるだろうとIDCは予測する。「低品質で使い勝手も良くないながら、低価格で勝負を挑もうとするタブレットメーカーに対抗するために、メジャーなメーカーもパーツの低価格化によるコスト削減を行ってくるはずだ」とタブレット関連でリサーチディレクターを務めるTom Mainelliは言っている。

地域的にみれば、これまでタブレット市場の牽引役であった北アメリカ、西ヨーロッパ、そして日本での売り上げはシェア面で減っていくことになると見ているようだ。これまでを引っ張ってきた主要国の売り上げ割合は、現在でこそ60.8%となっているが、2017年にはこれが49%までに下落するだろうと見通している。そして残りの51%は現在の発展途上国が担っていくことになるだろうとのこと(Google、Facebookなどもそうした新興市場をターゲットにしたプランを種々実行に移している)。

「先進国での飽和状態をうけて、タブレット市場の年次成長率というのは取り敢えず落ち着きを見せる状況になる」と、IDCのWorldwide Quarterly Tablet Tracker部門リサーチアナリストを務めるJitesh Ubraniは述べている。「そして消費地域の構造が変わることになり、販売シェアは世界平均を上回る成長を期待される中国などが担っていくことになるだろう」とのことだ。

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(翻訳:Maeda, H)


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TechCrunch Japan

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