Macworld 2001で、スティーブ・ジョブズは有名な「デジタルハブ」戦略を紹介し、Macを動画撮影や音楽再生等のあらゆる単目的ガジェットを管理するデバイスにすると語った。今年のWWDCイベントで、AppleはiPhoneが新しいハブになり、Mac、iPad、そしてクラウドにあるものすべてが、単なるアクセサリーになることを示した。
これはAppleにとって大きな転換だ ― スティーブ・ジョブズは最後のWWDC基調講演で、iCloudはあらゆる人々にとってデジタル生活の新たな中心になると宣言した:「われわれは、PCとMacを単なるデバイスへと格下げする」
今のところ、iCloudはあの約束を果たすに致っていない。デバイス間の連絡先の同期等はiOSでスムーズに働いているが、iCloudにデータを保存しようとするデベロッパーにとって、Appleの約束通りにはなっておらず、自身で解決するか、Dropbox、Amazon、Google等の統合ソリューションを利用する結果となっている。
一方、デバイス利用時間の膨大な部分が、ノートPC、デスクトップ、タブレットから、スマートフォンへと移りつつある。Andreessen Horowitzのアナリスト、Benedict Evansは4月にこう言っていた:「タブレットやノートやデスクトップは『ビッグスクリーン』という一つのカテゴリーとしてスマートフォンと戦っていると考えた方がよい。そして、そのチャンスはスマートフォンよりも小さい」
Facebookの月間平均ユーザー数を見れば、このトレンドが実世界での利用にどう反映しているかがわかる。モバイルだけでアクセスする人数は、デスクトップだけ ― あるいはノートPCだけ ― の人数より多い。そしてユーザーの79%は、利用の一部がモバイル経由だ。
iOS 8でAppleは、モバイルに集中する生まれたてのエコシステムを推進することによってこのトレンドを後押ししている。今週Appleが披露した「新」エコシステムのほぼ全てが、ユーザーのデジタル体験の中心にiPhoneを据えている。
- Mac OS Yosemiteで電話をかけたり、SMSメッセージを送るためにはiPhoneが必要。
- HealthKitおよび新しい健康アプリで、iPhoneはあらゆるフィットネス・ダイエット用アプリやセンサーの主要情報格納場所であり、Appleはエコシステム全体の中心にiPhoneを置いている。
- 同様に、HomeKitはiPhoneをあらゆるホーム用スマートデバイスの制御に使う。特に、HomeKitでAppleは、初めてデベロッパーにSiriの語彙を増やす機会を与えた ― ユーザーは「Siri、キッチンの明かりを全部消して」とか「Siri、1階の明かりを全部つけて」などをSiriに命令するために、家の中の部屋と「ゾーン」を定義できる。
- CarPlayは、車内のインフォテイメントシステムを、iPhoneが制御を乗っとるための無能なインターフェースへと変え、“Hey, Siri”コマンドによって充電中のiPhoneが完全ハンズフリー体験を提供する。
- Touch IDをサードパーティーデベロッパーが利用できるようになり、iPhoneをバンキングやプライベートメッセージ等を行うための最も安全な手段にする。
- AppleがiOS 8でAirPlayのピアツーピア接続を使用することにより、ビデオやゲームのコンテンツをApple TVに送るためにWiFiネットワークすら不要になる。
iPhoneはあなたのホームパソコンほど強力ではないかもしれないが、十分能力があり、ほぼいつでもそばにいて、デスクトップ機では殆ど意味のないソフトウェア機能やセンサーを満載している。
iOS 8でマジックを起こすのはiCloudだが、それは、ユーザーによる自分や自分のデバイスのすぐ近くの世界とのやりとりを利用することによって行われる。これは、デスクトップ(そしてクラウド)から離れることによって可能になることだ。こうして、コンピューティングは、よりパーソナルに、そして私たちが実際に生きている世界とより密接なものになる。
Appleの最新CMのキャッチフレーズは、「iPhone 5sのパワーを得たあなたは、自分で思っているよりパワフルだ」。彼らはそれがどのように、創造性を表現したり、身体をより良くケアする ― より人間らしくある ― ために使われているかを示した。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)