iPhone 12 Proのカメラは撮影後に写真をいじくりまわすのが好きな人が喜ぶ機能が満載

アップルが発表したiPhone 12 Proシリーズは、すでに強力だったカメラシステムにさらに改良を加え、「本格的な」写真家、つまり撮影後に写真をいじくりまわすのが好きな人が喜ぶ機能を追加した。もちろんこのアップグレードは、私たちのような「興奮して忘れる」撮影者にとっても注目すべきものだ。

最も目に見える変化は、背面カメラの3つのレンズシステムのうち2つの再設計だろう。iPhone 12 Pro Maxは、より奥行きのある新しい望遠カメラが搭載されており、従来の52mm相当ではなく65mm相当となっている。この近接光学レンズは多くの人が重宝するだろう。結局のところ、52mmはポートレート撮影ではまだかなり広角寄りだった。

iPhone 12シリーズの全モデルに共通する改良された広角レンズは、レンズを7つの要素に簡素化し、光の透過性を向上させ、F/1.6と同等の口径を実現している。特に改良された「ナイトモード」では、多くの光を取り込めるようになっている。

iPhoneのカメラ分解図

そして、おそらくより重要なハードウェアの変化は、センサーレベルの手ぶれ補正が広角カメラに導入されたことだろう。このシステムは、デジタル一眼レフカメラで初導入された仕組みで、動きを検出し、それを補正するために1秒間に何千回もセンサーを少しずつ移動させる。これはレンズ自体をシフトする手ぶれ補正よりもシンプルな代替手段だ。

実際のところ、各社のどのスマートフォンでもフラグシップモデルにも何らかの手ぶれ補正機能が搭載されているが、重要なのはその実装方法。アップルはiPhone 12 Proの手ぶれ補正機構を「ゲームチェンジャー」と表現したが、それは実際のテストで判断したい。いずれにしても、これが今後のiPhoneカメラシステムの標準になることが予想される。ちなみに本日のバーチャルイベントのプレゼンターは、約2秒間の手持ち撮影を可能にする機能を紹介していたが、私はこの機能については話半分に聞いておく。

iPhoneで処理された写真のレイヤーを示す画像

ソフトウェア面では、Apple ProRAWが発表された。iPhoneをプライマリまたはセカンダリのカメラとして使用している写真家にはありがたいフォーマットだ。通常、iPhoneで撮影した画像は、センサーが収集した情報のほんの一部しか画面に表示されない。余分なデータの削除、色のパンチング、良好なトーンカーブの検出など、大量の処理が必要になる。これらの処理によってカスタマイズ性を犠牲にしつつも、見栄えのいいイメージが作成されるわけだ。しかし「余分な」情報を捨てると、色とトーンの調整範囲が大幅に狭くなるというデメリットもある。

iPhoneのカメラアプリでRAWモードで撮影した画像

デジタル一眼レフカメラを扱う写真家なら当然知っているように、RAWファイルがその答えだ。RAWでは、センサーが収集するものを最小限に処理した表現となり、写真の見栄えをよくするための作業ををユーザーが実行できるようになる。 RAWフォーマットで撮影できるようになると、iPhoneのデフォルトの画像処理に縛られていると感じていた写真家を解放できるわけだ。もちろん、iPhoneの画像処理を回避する方法は以前にもあったが、アップルはiPhoneのカメラアーキテクチャへの低レベルのアクセスが可能なサードパーティ製アプリよりも当然優位性があるため、Apple ProRAWはおそらく新しい標準になるだろう。

また、iPhone 12 Proシリーズでは、Dolby Visionで撮影することも可能になる。Dolby Visionのグレーディング(補正)は、映画やコマーシャルをデジタルシネマカメラで撮影した後の、いわゆるポストプロダクションで使われるものだ。iPhone 12 ProをBカメラ(2台目のカメラ)として使う場合に、このフォーマットは便利かもしれない。実際にiPhone 12 Proを使ってDolby Visionで撮影した撮影監督のEmmanuel Lubezki(エマニュエル・ルベツキ)氏が認めれば、地球上のほぼすべての人にとって十分な映画を作れるだろう。まぁ、スマートフォンのカメラで一緒に仕事をする人がいるとは思えないが。

Apple ProRAWとDolby Visionという2つの進歩は、新搭載のSoC(System-on-a-chip)であるApple A14 Bionicチップによって写真処理に多くの余地を残していることを示している。前にも書いたように、SoCは現在のイメージングワークフローの中で最も重要な部分であり、アップルはおそらく最新チップが提供するパワーを活用するためにあらゆる方法を考え出すだろう。

カメラやレンズの大型化は通常のiPhoneシリーズには望めない利点だが、その逆もまた然りだ。そして、iPhoneが映画のようなクオリティを提供できるようになればなるほど、携帯性と使いやすさといった利点も大きくなる。アップルは熱心な写真家をターゲットにしてきたが、彼らは高機能カメラ付きのスマートフォンに加えて、一眼レフやミラーレスを買いたいのかどうか確信が持てない。アップルは、こういった層に向けてスマートフォンとしての側面をアピールし、世代ごとにユーザー数を増やしているに違いない。

もちろん、iPhone 12 Proシリーズは通常のiPhoneよりも高価で、10万円を超えるプレミアムな価格だ。しかし、これらの改良店は、将来的にローエンドモデルに搭載することも困難ではないはず。おそらく来年のiPhoneにはProシリーズの一部の機能が通常のiPhoneシリーズでも使えるようになるはずだ。もちろんそれまでに、アップルはProシリーズ向けにまったく新しい機能セットを用意するだろう。まあ、写真家にとって計画的なカメラの陳腐化はライフスタイルの一部だ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Apple、iPhone、Apple iPhone Event

画像クレジット:Apple

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(翻訳:TechCrunch Japan)

投稿者:

TechCrunch Japan

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