「人機一体」こそウェアラブルの本質–JINSがまんま”メガネ”の新デバイス「JINS MEME」を2015年春に発売

 

 

Google Glassの登場以来注目を集めるメガネ型のウェアラブルデバイス。「JINS」ブランドでアイウェアを展開してきたジェイアイエヌもその領域に参入することを明らかにしたが、そのコンセプトはこれまで発表されてきた製品とは一線を画すようだ。同社は5月13日に記者会見を開き、次世代戦略商品となるアイウェア型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」を発表した。2015年春に国内での発売を開始する。

これまで「PC向け」「花粉対策」など、視力矯正以外の「機能性アイウエア」を世に送り出してきたジェイアイエヌだが、4年前に東北大学 加齢医学研究所の川島隆太教授に打診し、新しいアイウェアの可能性を探ってきたのだそうだ。ジェイアイエヌ代表取締役社長の田中仁氏は会見で、これまでのアイウェアが「外を見る」ための役割であったことに対して、JINS MEMEが「内を見る」ためのものだと説明する。

JINS MEMEは、三点式の眼電位センサーと六軸の加速度、角速度センサーを備える——といっても、センサーは少し太めのフレームに収められている。Google Glassのようにモニターがついているわけでもなく、メガネそのものとほぼ変わりないと言っていい——ウェアラブルデバイスだ。ウェリントン、ハーフリム、サングラスタイプの3種類のモデルを用意。ウェリントンタイプで重量約36グラムとなっている。僕も実際にデモ機を掛けてみたが、通常使用しているメガネ(フレームが太くて多少重く感じていた)よりも軽い付け心地だった。通信にはBluetooth 4.0を採用する。バッテリー内蔵で連続8時間の使用が可能。メガネのフレームを延長して頭部をカバーするヘアバンドのようなアタッチメントパーツを取り付ければ、約16時間までの利用が可能になるという。非接触での充電に対応する予定で、蓄積されたデータを送信するためのUSBポートも備える。価格は現状非公開だが、「JINSが作る商品なので、皆さんの手の届かない物ではない」(田中氏)とのことだ。

注目はこの眼電位センサーだ。眼電位とは、角膜側が正、網膜側が負の電荷をそれぞれ帯びているのだが、その電位差のことをいう。眼電位を計測することで、目の動きをモニターすることができたのだが、これまでの技術では目の周囲に4点のセンサーをつけないと計測ができなかった。今回JINS MEMEでは、眉間、鼻パッド部分の3点のセンサーを開発。これによって通常のメガネとほぼ同じ形のデバイスを実現したという。センサーは9方向とまばたきを検知可能で、現在特許出願中。センサーやセンサーを利用した各種の技術は、川島氏をはじめ、芝浦工業大学 工学部電子工学科の加納慎一郎氏、慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科の稲見昌彦氏らと協力し、産学連携で技術を開発しているという。バッテリーや回路でも国内メーカーと連携しての開発を進めているということだが、その詳細については、非公開とされた。各種センサーや産学連携で開発する技術により、目の向いている方向から姿勢や疲れ、眠気などの個人の詳細な身体データ(DEEP DATAと呼んでいた)を可視化できるようになるという。

会見では、ビジネス、ドライブ、フィットネスという3つのシーンでの利用イメージが紹介された。JINS MEMEでは眠気や疲れを「me」という独自の単位で測定する。この数値が高ければ元気で、低ければ疲れているということだ。例えばビジネスシーンやドライブシーンでは、数値が低くなれば連動するスマートフォンアプリでアラートを出してくれる。また頭に加速度センサーがつくことで、フィットネスのシーンでもリストバンド型のデバイス以上の精度で姿勢も含めた健康状況を図ることができるといった具合だ。ドライブ分野ではすでにデンソーと慶應義塾大学メディアデザイン研究科との産学協同での研究を進めることが決定しているという。また順次APIも公開し、開発者らとオープンなプラットフォームを作っていくとしている。ちなみに以下の動画は、会見で実際に行われたデモ。目線を左右に動かすことで、その動きに合わせて画面をスクロールさせている。

田中氏はJINS MEMEについて「内側を見るデバイス」と語ったが、同じく会見に登壇した川島氏や稲見氏も、これまでのアイウェア型ウェアラブルデバイスのあり方に疑問を投げる。川島氏はそもそも人間がGoogle Glassのカメラのように、「あえてつける装置」を利用しないのではいかと語り、稲見氏は「メガネ型のスマートフォンやカメラがウェラブルなのか? 無意識の行動を把握してサポートする『人機一体』、これがウェアラブルの本質的な意義ではないか」と語った。もちろんGoogle Glassや開発中のTelepathyのデバイスなど、モニタまでを搭載したデバイスとJINS MEMEを同じように考えても仕方ないのだけれど、ウェアラブルデバイスにまた1つの可能性が生まれたのは事実だろう。現時点ではパートナー向けの施策など詳細は明らかにされなかったが、ほかのデバイス同様、今後の展開を楽しみにしたい。

右から稲見氏、田中氏、川島氏


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TechCrunch Japan

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