MicrosoftとDropboxが提携―Office 365とDropboxストレージが高度な相互連動へ

今日(米国時間11/4)、MicrosoftとDropboxは提携関係を結んだことを発表した。その内容はDropboxがOfficeをサポートし、MicrosoftがDropboxのストレージ・サービスをOfficeに連動させるというものだ。これに先だって、Dropboxのライバルでエンタープライズ向けクラウドストレージに力を入れているBoxもMicrosoftのOffice-as-a-serviceソリューションであるOffice 365を取り込んだサービスをスタートさせている。Microsoft自身も最近、OneDriveの無料ストレージ容量を無制限とした。

今回の提携で、両社は近くウェブとモバイル・アプリの双方で、DropboxのアプリからOfficeドキュメントを編集、OfficeアプリからDropbox内のファイルにアクセス、OfficeアプリでDropboxのファイルをリンクで共有という次の3つの機能を提供するという。またDropboxはWindows Phone版のOffice連携アプリを開発する。〔時期については日本版注参照〕

OneDriveを運営するMicrosoftがライバルとこれほど密接に提携するとは驚きだろうか? 必ずしもそうではない。MicrosoftはOneDriveなしでもOffice 365を売ることができる。逆に、Office 365というサービスを膨大なDropboxユーザーの企業や個人に売りやすくなる。電話で取材したところでは、両社ともにDrobpoxに数億のユーザーがおり、有料で利用している企業だけでも8万社に上ることを重視しているようだった。MicrosoftもOneDriveがそれくらい広く普及しているのだったらあえてDropboxと提携する必要はなかったかもしれないが、残念ながら現状はそうなっていない。

Microsoftはすでにエンタープライズ・クラウド・ストレージの事実上の標準となっているDropboxを無視することは不可能だった。MicrosoftがOffice 365をエンタープライズに本気で売り込もうとするならDropboxコミュニティーを抜きに考えるわけにいかないのは当然だ。OneDrive for BusinessはDropboxのために席を詰めねばならない。

BoxのOffice 365取り込みはBox側の一方的なイニシアチブだった。しかし今回の提携ははるかに高度な戦略的提携だ。両社とも今回の提携にともなって「どちらがどちらいくら払うのか?」についてはコメントを避けた。しかしMicrosoftがDropboxに支払うと考えてもよさそうだ。 Windows Phoneは世界でもっとも人気のあるモバイル・プラットフォームというわけではない。MicrosoftはDropboxを保護育成する必要がある。大企業ユーザーがOfficeをクラウドで使いたい場合、これまでは馴染みのあるクラウドストレージのオプションがなかった。今回の提携でそれが存在するようになったことは大きい。

Microsoftが本気でパッケージ版Officeの売上をOffice 365の売上で代替しようと考えているなら選択肢は限られている。MicrosoftはDropboxを買収することもできるが、aQuantiveの買収が結局62億ドルの損失に終わった苦い記憶がまだ新しい。それなら戦略的提携のほうが安上がりで危険も少ない。

上機嫌のシリコンバレーのベンチャーキャピタリストはDropboxは収益化に成功しつつあると主張する。そうなるかもしれない。ともあれDropboxは、短期的関係かもしれないが、強力な友人を持つことに成功した。

〔日本版〕Microsoftのプレスリリースによると、OfficeとDropboxの連携機能は、まず数週間後に予定されているOfficeのモバイル・アプリのiOSとAndroid版のアップデートで実装される。ウェブ版のDropboxとOffice 365の連携は2015年の前半にリリースされる。Dropbxoが開発するWindows Phone版のスマートフォン、タブレット向けOffice連携アプリの公開は数ヶ月後を予定している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


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TechCrunch Japan

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