Nayutaがジャフコらから1.4億円を調達、ブロックチェーン上のレイヤー2技術開発へ

福岡市に本拠を置きIoTとブロックチェーン分野に取り組むスタートアップ企業Nayutaが、ジャフコおよび個人投資家を引受先とする第三者割当増資により1億4000万円の資金を調達したことを明らかにした。調達実施日はこの2017年7月28日、出資比率は非開示。同社が外部から資本を調達するのはこれが最初である。

調達した資金は主に研究開発に振り向ける。現時点では同社のフルタイムスタッフは2名だが、Nayuta代表取締役の栗元憲一氏は「人員を増やしエンジニアを5〜6名にしたい。Biz Devの人材も採りたい」と話している。また、同社の取り組みにはハードウェア開発が関係することもあり大きめの資本が必要と判断したとのことだ。

同社が注力するのは、ビットコインを筆頭とするブロックチェーンの上に構築するレイヤー2(あるいは2nd Layer)技術だ。ブロックチェーンの上に「ペイメント専用のレイヤー(層)」を構築する試みである(下の図を参照)。現状のビットコインでは難しい「単位時間あたり取引能力の拡大」、「リアルタイムな取引」、「マイクロペイメント」を可能とする技術群を開発していく。

今までのNayutaの取り組みとしては、ビットコインのブロックチェーン上のOpen Asset Protocolを応用したスマートコンセント(発表資料(PDF))や、BLE(Bluetooth Low Energy)に基づく人流解析システム、大型放射光施設「SPring-8」の測定データの有効活用を図るためブロックチェーンを応用して構築したデータ流通インフラシステムのプロトタイプ(発表資料)などがある。この7月28日に開催した「MUFG Digital アクセラレータ」第2期のDemo Dayでは「準グランプリ」を受賞している。

レイヤー2で世界の最先端と実装を競う

レイヤー2に関連しては、ビットコインのLightning Networkが知名度も高く注目されている。Nayutaは、このLightning Networkと同様の機能を実現する層と、その上のアプリケーション層の両方を開発していく。同社が開発したビットコインの「レイヤー2」を用いる決済技術については以前TechCrunch Japanで報じている。同社はこの時点で、Lightning Networkの既存実装とは独立に、自社による実装に基づくマイクロペイメントを実現している

ブロックチェーンとレイヤー2は、どちらも必要とされる技術だ。この2017年8月には、レイヤー2プロトコル実装に必要となるSegWit仕様がビットコインのブロックチェーンでアクティベートされることが決定した。最近、いわゆる「ビットコイン分裂」の懸念が盛んに報道されたが、この騒動の実態はSegWit有効化をめぐる動きだった。SegWit仕様が使えるようになれば、レイヤー2技術の実装と応用が加速することは間違いない。

このように聞くと「すでに登場しているLightning Networkの実装を使ってその上のレイヤーを開発した方が効率的ではないか」との疑問を持つ人もいるかもしれない。この疑問に対して、同社では「レイヤー2はどの実装が標準になるのか、まだ分からない段階。Lightning Networkだけではなく、様々なパターンの技術が出てくるだろう。IoT分野に取り組む上で、自分たちで作ることでレイヤー2の技術を身につけておくことは大事だ」(栗元氏)と話す。特に大事な部分はリアルタイム性に関連する部分だ。

「IoT分野では、ほとんどのものにリアルタイム性が要求される。レイヤー2がうまく構築できれば、(リアルタイム性に欠ける)パブリックブロックチェーンでもIoT分野で新しいソリューション、ガバナンスを作っていける可能性がある」(栗本氏)。

Nayutaが狙うのは特にIoTと関連するレイヤー2分野だ。リアルタイム性を筆頭にIoT分野(あるいは組み込みシステム分野)では、技術をブラックボックスとして利用するだけでなく「中身」を把握していることが競争力につながる場合が多い。同社が自社による独自実装にこだわっている理由はそこにある。

ブロックチェーン、レイヤー2、IoTの組み合わせは世界的に見ても最先端の取り組みだ。その最先端のソフトウェアテクノロジー分野で日本のスタートアップが正面から世界との技術競争に挑む形となる。資金調達のタイミングと同時にSegWit仕様の有効化が重なったことは幸運でもあるが、競争も激しくなるだろう。今後の同社の取り組みは要注目といえる。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。