NYでドック型の電動自転車シェアリングをJOCOが開始、私有地にステーション設置

Citi Bike(シティバイク)よりも一歩進んだ、ドック型の新しい自転車シェアリングサービスが登場した。自転車はすべて電動だ。JOCO(ジョコ)は来週、一般利用のために電動自転車ステーションを私有地に置くネットワークを立ち上げる、ニューヨーク市では初の自転車シェアリングオペレーターとなる。

シェアリングモビリティプラットフォームVulogで動くこのサービスは、まずはマンハッタンに設置するステーション30カ所と電動自転車300台で始まり、2021年6月までにステーションを100カ所に、電動自転車を1000台に拡大する。2021年ニューヨークでモビリティシェアリングを提供するオペレーターはJOCOが初めてではない。先週ニューヨーク市はブロンクスで展開する電動スクーター試験事業に参加する企業を選んで発表した。しかしBird、Lime、Veoがブロンクスで事業を展開できるエリアは限られており、 Citi Bikeの範囲には遠く及ばない。だが、JOCOにはそうした制限はない。

JOCOの自転車はまず、ニューヨーク最大の駐車場オペレーターIcon Parkingのガレージを含め、街のあちこちにある駐車場に駐輪される。しかし近い将来、住宅ビルや商業ビルにも拡大したいとJOCOは話す。同社は駐車場の利用料金を駐車場のオーナーに支払い、駐車場オーナーたちは運営したり電動自転車のメンテをしたりする必要はない。

「Citi Bikeと異なるのはまず、当社の自転車は100%電動で、100%プレミアムであるという点です」と共同創業者でニューヨーク育ちのJonathan “Johnny” Cohen(ジョナサン・“ジョニー”・コーエン)氏はTechCrunchに語った(2人の共同創業者はいずれもジョナサン・コーエンという名前で、1人はニューヨーク出身、もう1人はロンドン出身だ。それでJOCOという社名だ)。「ユーザーは自転車を事前に予約できます。ステーションは私有地にあり、ステーションには手指消毒液も用意されています。自転車は夜間に雨に濡れることはなく、少しは綺麗でアクセスしやすくなっています」。

JOCOのニューヨーク市内にある電動自転車ドック30カ所のマップ(画像クレジット:JOCO)

Citi Bikeの自転車は約30%が電動だ。電動自転車を充電するのにLyft傘下のCiti Bikeは人を配して自転車をステーションから移動させているが、JOCOの自転車はステーションで充電される。Citi Bikeと同様、自転車はフル充電で約30マイル(約48km)走行できる。

「マンハッタン内を何回か駆け回るのには十分です」とロンドン出身のジョー(2人のコーエン氏を区別するためのもう1つの名前だ)は話した。「当社の自転車は常に充電されていて、いつでも利用できる状態にあるはずです。かなり持続可能である自転車に関し、バッテリーを交換するのにガソリン車でやって来るというのは本末転倒です。当社は真に環境フレンドリーな会社になり、より一貫性があって信頼できるサービスを提供することを目指しています」。

2019年に創業され、Fortune 500企業の元CEOのグループ、特にテクノロジーや不動産のバックグラウンドを持つ投資家から出資を受けているJOCOは、Citi Bikeと同じような価格帯で電動自転車を提供する。自転車を解錠するのに1ドル(約108円)、そして乗車1分当たり25セント(約27円)かかり、つまり10分の利用は3.5ドル(約378円)になる。Citi Bikeでは解錠に3.5ドル、そして1分あたり18セント(約19円)で、10分の利用は5.30ドル(約570円)になる。

「当社の真新しくゴージャスなフル電動のプレミアムな自転車の方がずっと安くなります」とニューヨーク出身のジョーは話した。

JOCO、Citi Bikeのいずれも会員には解錠料金を課さない。JOCOの会員費は月49ドル(約5285円)で、無制限に利用できる。Citi Bikeの会員費は月20ドル(約2157円)だが、会員も利用1分あたり18セント払わなければならない。年間会費を払う人の場合、1分あたり12セント(約13  円)となる。Citi Bikeの年間メンバーシップでは10分の利用が1週間に平均5回あれば、毎月の支出額はJOCOと同じくらいのものとなる。

「Citi Bikeは2013年からサービスを展開していて、ニューヨーク市における自転車の浸透にかなり貢献しました」とVulogの北米マネージングディレクターMonica Wejman氏はTechCunchに述べた。「そしていまVulogで動くJOCOが、Citi Bikeを補い、電動自転車へのアクセスに対する急増している需要を満たすために参入します。当社はモビリティオペレーターがモビリティプログラムを大規模展開するのをサポートしています」。

JOCOはドッキングステーションのスペース確保で通りや歩道を削るためにニューヨーク市の交通局に頼ることはないが、それでも市当局と良い協調関係を確保するための方策を取っている。当局はニューヨーク市内におけるすべての自転車シェアリングシステムは交通局からの事前の承認文書が必要だとTechCrunchに述べたが、その一方でJOCOの弁護士Matthew W. Daus氏の声明には、それは同社が「明確にしようとしている単純な誤解」だとある。

「クライアントのJOCOは2020年秋、そして最近もNYC DOT(ニューヨーク市交通局)の上層部と純粋にプライベートな電動自転車レンタルの取り組みコンセプトを共有するために連絡を取りました。市の持続可能な目標を推進するのをサポートするための情報事項です。このバイクレンタルイニシアチブはニューヨーク州の法律で許されているものであり、特にレンタルのために市道ではなく私有地を使っています。NYC DOTからの許可や承認は必要ではないと思われます。JOCOは来週初めにサービスを開始する計画です」と声明には書かれている。

ロンドン出身のジョーは、JOCOの自転車は破壊行為の影響を受けにくいようにする隠れたケーブル、パンクしないエアレスタイヤ、自転車追跡など安全性を重視した機能を搭載していることを知ると市当局は安心できるだろうと話す。自転車追跡はVulogのバックエンドによるものだ。

「加えて、私有地で展開することで、当社は市のために自転車が歩道に散らかる問題をなくしています。そして市は新たに自転車50台を通りにもってくるにはどうしたらいいのか頭を悩ませる必要はありません。市の大きな頭痛の種を当社は取り除いていて、これによりよくコントロールされた状態を維持し、市に頼る必要はありません」とロンドン出身のジョーは話た。

カテゴリー:モビリティ
タグ:JOCO電動自転車ニューヨーク

画像クレジット:JOCO

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。