Oculus創業者が起ち上げたAI防衛企業Andurilの評価額が約5000億円超に

テック業界の因襲打破主義者であるPalmer Luckey(パルマー・ラッキー)氏が設立したAI防衛企業のAnduril(アンデュリル)は、新たにシリーズD投資ラウンドで4億5000万ドル(約497億円)の資金を獲得し、わずか4年でこのスタートアップ企業の評価額は46億ドル(約5080億円)に達した。

2021年4月には、同社が新たな投資を求めており、2020年7月に19億ドル(2093億円)だったその評価額は、40~50億ドル(4407億〜5508億円)になる見込みと報じられていた。

今回のラウンドは、エンジェル投資家であり、シリアルアントレプレナーでもあるElad Gil(イラッド・ギル)氏が主導した。同氏は元Twitter(ツイッター)のバイスプレジデントで、Google(グーグル)出身者でもあり、急速な成長を遂げる企業への投資実績がある。このラウンドには、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)、8VC、General Catalyst(ジェネラル・カタリスト)、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Valor Equity Partners(バロー・エクイティ・パートナーズ)、D1 Capital Partners(D1キャピタル・パートナーズ)も参加した。

ギル氏は今回の投資について、ブログで次のように述べている。「ほとんど組織的な刷新が行われていない旧態依然とした機関が私たちの新型コロナウイルス対策に影響を与えたように、防衛産業も過去30年の間に著しく凝り固まってきました。これらの既存企業に直接挑戦する新しい防衛技術企業は、この何十年もの間、存在しませんでした……」。

Andurilは2017年にひっそりと創業したが、トランプ政権下で税関・国境警備局や海兵隊から契約を獲得し、急速に成長してきた。Oculus(オキュラス)をFacebook(フェイスブック)に売却した後、会社から追い出された若くて野心的な創業者のラッキー氏は、一般的にトランプを嫌うテック業界において、トランプ大統領の最も著名な支持者の1人として注目を集めた。

Andurilは、長時間飛行可能なドローンや監視タワーなどの防衛用ハードウェアを製造しており、これらは同社が開発した「Lattice(格子)」と呼ばれる共有ソフトウェアプラットフォームに接続されている。このシステムは、軍事基地の安全確保や国境の監視のために使用され、同社の対UAS(無人航空機)技術「Anvil(アンヴィル)」は、敵のドローンを空から叩き落とすこともできる。

比較的安価なハードウェアとセンサーフュージョンや機械学習技術を組み合わせ、防衛分野の大手企業よりも機敏に契約パートナーを介して提供するというAndurilのミッションを、共同設立者でCEOを務めるBrian Schimpf(ブライアン・シンプフ)氏は「変革」と表現している。

「国防総省が我々と同じ問題を認識しており、エマージングテクノロジーを陸・海・空・宇宙の各領域で大規模に展開することに真剣に取り組んでいるという我々の自信が、今回の資金調達には反映されています」と、シンプフ氏は語る。

Andurilは創業当初から国防総省との提携を視野に入れており、2020年には空軍がJADC2(Joint All-Domain Command and Control、全領域統合指揮・統制)プロジェクトのための技術をテストする50社のベンダーのうちの1社として国防総省から選ばれた。JADC2は米軍のすべての隊員、機器、車両をつなぐスマートな戦争プラットフォームの構築を目的としている。

米国の税関・国境警備局との協力関係も、2020年には試験的なものから正式な認定事業へと発展した。Andurilは、米国の国境付近を自律的に監視する能力を持つネットワーク接続型の監視塔を供給している。

Andurilは2021年4月、大型機から発射可能な小型ドローンの開発で知られるArea-I(エリアI)を買収した。Area-Iの顧客には、米国陸軍、空軍、海軍、NASAなどが名を連ねており、その関係性が今回の買収を後押ししたものと思われる。

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カテゴリー:ドローン
タグ:AndurilOculus資金調達軍事国防総省

画像クレジット:Anduril

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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