Polestar PreceptはEV自動車メーカーの未来を暗示している

Polestar(ポールスター)は、今後3年間で電気自動車を発売するという壮大な計画を遂行していく。その集大成となるのが、コンセプトモデル「Precept(プリセプト)」。これは、同社の未来を物理的に表現した「ロゼッタストーン」のようなものだ。

Volvo(ボルボ)から独立したブランドであるPolestarは、このコンセプトを「マニフェスト」と呼んでいる。言い換えれば、Polestar 5として生産されるPreceptにより、EV自動車メーカーである同社が目指す姿を消費者や将来の株主に伝えるのだ。

Polestar USAの責任者であるGreg Hembrough(グレッグ・ヘンブロー)氏は、ニューヨークで開催された会社説明会でTechCrunchのインタビューに応じ、「今後数年間は、Volvoのルーツから離れ、自社ブランドを確立していくことになるでしょう」と語った。説明会では、同社のCEO、Thomas Ingenlath(トーマス・インゲンラート)氏をはじめとする経営幹部が、新しい市場に進出し、販売台数を10倍に増やし、またその過程で3つの新型車を発売する計画を打ち出した。この野心的な計画は、同社のコアバリューであるデザイン、サステナビリティ、イノベーションに基礎を置いている。

これまでの道のり

Polestarは1996年、Volvo Carsのためにパフォーマンス・ソフトウェアを販売・開発するレース会社としてデビューした。スタートからVolvoと関連があったが、同盟は2011年には正式なものになり、Polestarはパフォーマンスパートナーとなった。そしてVolvo車のスポーツ性能を向上させた。2015年にはVolvo Car Groupに完全に買収された。その直後に独自のブランドとして分離独立し、2017年には最初で唯一のハイブリッド車「Polestar 1」を、2019年にはフルEVの「Polestar 2」を世に送り出した。

この2つのモデルを約2万9000台販売した。その大半を、4ドアのEV「Polestar 2」が占めた。Polestar 2は現在、本格的に生産されている唯一のモデルだ。Polestar 1の限定生産は先日終了し、次期SUVのPolestar 3は2022年中の発売を予定している。

将来のデザイン

Preceptは最初から、Polestarの理念をできるだけ多く視覚的に伝えることを目的としてきた。その中でも最も顕著なのは、ラグジュアリーとパフォーマンスだ。これは、同社のブランド・アイデンティティの鍵でもある。兄弟ブランドとの差別化を図り、唯一無二の存在にするものだ。

「Polestar 1とPolestar 2を見れば、私たちの兄弟会社のDNAが少しずつ残っているのがわかると思います」とヘンブロー氏はTechCrunchに話した。「Preceptの意図は、当社の将来のデザイン言語の形を示すだけでなく、デザインやサステナビリティの観点から見えてくる要素を明確に示すことにありました。これらは単にあれば良いと思うもののリストではなく、実際に製品化されるものです」

このことを念頭に置くと、Preceptのビジネスの側面が物語を語り始める。Volvoファミリーの面影は薄れ、より個性的で特徴的な外観となっている。例えば、兄弟ブランドの特徴である「Thor’s Hammer」ヘッドライトは「デュアルブレード」となり、オリジナルのデザインを物理的に半分に割ったように見える。加えて象徴的に、ということでなければだ。

「シャークノーズ」のフェイシア(前面)には、エンジン冷却用のグリルがなく、代わりに「SmartZone」と呼ばれるセンサー群が配置された。先進運転支援システムを強化するためのレーダーエミッターやカメラが格納されており、機能的に、「呼吸する顔」から「見る顔」へと変化した。

また、エアフローを改善するために、フロントにウイングを組み込んだフロントエアロフォイルも採用した。「もちろん、見た目も素晴らしいですよ」と、インゲンラート氏はイベントで熱く語った。

イノベーション

Polestarは技術面で課題を抱えている。例えば、高速道路での自動運転を一定レベルで実現したいという野望があるものの、競合車を上回る性能を実現できなければ意味がない。

Preceptの表層の下には、Polestar 5のスポーティな足回りを暗示するアルミニウム製の構造がある。このグランドツアラーには、Polestar 3に載せたものをベースにした電気系統を備え、Nvidia(エヌビディア)製のコンピューティングを組み込む予定だ。モーターは「P10」という450キロワットのユニットを開発中で、約603馬力を出す。出回っている製品の中でも、最もパワフルなユニットの1つにすることを目指している。また、800ボルトのバッテリーパックは、充電インフラに合わせて400ボルトに切り替えることが可能で、双方向充電にも対応する。

多くの課題がある中で、ヘンブロー氏は、ユーザーエクスペリエンスへの集中が、Polestarを正しい方向に導くと言う。「それは、Polestar 2で早くから取り組んできたことの1つです。Polestar 2は、Googleのサービスを組み込んだAndroid Automotive OSを採用した最初のモデルとなりました。毎月、顧客の車のソフトウェアをワイヤレスでアップデートします。Webブラウザ、ゲーム、ビデオプレーヤーなど、あらゆる面で驚きと喜びを提供しています」

「Polestar 3では、それを迅速に次のレベルに引き上げます。Preceptで示されたように、アイトラッキングのようなものは便利であると同時に、安全性にも寄与します。UXはイノベーションの一部であり続けると思いますが、私たちは安全性から離れることはありません」と付け加えた。

サステナビリティ

同社は、持続可能性の問題を強調し、生産における二酸化炭素の排出量を完全にオフセットするとまではいかないが、削減することに重点を置く。

Polestarは、2030年までに完全にカーボンニュートラルな自動車を生産することを宣言している。これは単なる自己満足ではなく、顧客も積極的に関わる話だ。

「振り返ってみると、5年前、10年前には、こうしたことに消費者が関心をもっていませんでした。しかし、世界は劇的に変化しています。あらゆる消費者が強く意識し、求めているものです」とヘンブローは語る。

「Polestar 0」プロジェクトを宣言したことで、社内の危機感が高まった。多岐にわたる方法を用意していた。まず、Preceptのインテリアには、炭素繊維のような亜麻由来のバイオコンポジット部品など、新しく革新的な素材を使った。シートは再生PES(ポリエーテルサルフォン)プラスチックを織り込んだものだ。ファッションやフットウェアの世界ではすでに使用されている素材であり、Polestarが旧来の自動車メーカーとの差別化を図る方法の1つでもある。「こうしたことは単なるキャッチフレーズではなく、私たちの核心をなすものです」とヘンブロー氏は話す。

革新的な素材以外にも、同社は目標達成のために炭素回収技術を採用するほか、サプライチェーンレベルでの透明性を高め、サプライヤーの業務改善にも力を入れる。

2025年以降

このような大胆な試みは、Polestarの計画のごく一部を表すにすぎない。

同社は、2030年までに完全なカーボンニュートラルカーの生産を目指しているが、その先はどうなるのか。それほど先の未来を描くことは、まさに未知の世界への航海だ。同社自身も、こうした努力が差別化につながるかどうかは、振り返ってみなければわからないと認める。同社には、2040年までに完全に気候変動に中立な企業になるというもう1つの目標があり、それが今後18年間の選択のすべてとは言わないまでも、多くを決定づけることになると思われる。

画像クレジット:Alex Kalogianni

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Nariko Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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