アメリカで新設されたQuiltは、これまでアメリカの保険制度で散々痛い目にあってきた人たちを救おうとしている。
消費者は、新しい保険オプションがすぐにでも誕生することを願っている。最近の60 Minutesによる暴露記事では、受取人に対して保険金を支払っていない生命保険会社の存在が明らかとなったのだ。そしてそれが業界の通例だという。
ハリケーン・カトリーナによる被災後も、その時点まででアメリカ市場最悪の自然災害に見舞われたにも関わらず、保険会社は最高益を記録していた。さらに、ハリケーン・サンディがニューヨークを襲ってから3年が経った後も、何100人もの被保険者が保険金を受取ることが出来ていない。
もっと良いやり方があるはずだ。
今月末にまずフロリダでローンチ予定のQuiltは、はじめに旧来の賃貸人向け保険商品を提供する予定で、最終的には保険契約内容や保険金の払い出しにも全面的な変革を起こそうとしている。今のところは、既存の保険商品を販売すると共に、(とてもひどい)他社よりもずっと良いサービスを提供すると約束している。
「『俺は保険業界に参入したいんだ!』と言う人はいないと思います」とQuiltの共同設立者兼CEOであるBalir Baldwin氏は言う。
以前マーケティングやアドテック系企業の幹部を務めていたBaldwin氏は、ボストンを拠点とする自動車保険の見積もり比較サイトGojiのビジネスに携わってから保険業界に興味を持ち始めた。
「保険業界を覗いてみて、私のやりたいことが組み合わさった世界だということや、顧客がどれだけ本当にひどい体験をしてきたかということを知り、つい目を細めてしまいました」
Gojiのような企業は、今の保険会社が抱えているある問題を解決しようとしている。その問題とは、顧客が多くの時間を過ごしたいと考えているインターネットというプラットフォームを活用できていないということだ。
Baldwin氏にとってこの問題は根深く、「消費者がオンライン上や電話で連絡をとりたいと考えていることから、既存の連絡チャンネルは機能していない一方、その根底にある保険商品の改革なしに、連絡チャンネルの改革はありえません」と語っている。
彼は茨の道を進もうとしているのだ。
PolicyGeniusのCEO Jennifer Fitzgerald氏の推計によれば、保険業界はおよそ1兆ドルにのぼる契約を結んでおり、さらに年間7兆ドルもの投資を行っている。そのため、ベンチャー投資家には保険がとても魅力的なビジネスとして映っているのだ。しかし、この業界を縛っている法律は、保険業界が生まれた当初に作られた100年以上前のものを含む、これまでの規制が重なりあったつぎはぎ状態にある。
ベンチャー投資家はそんな苦労をいとわずに参入を進めており、確かに近年保険テクノロジー分野への投資は極めて活発だ。
Accentureの調査を引用したFinancial Timesの記事によれば、2015年の保険業界へのベンチャー投資額は26億ドルで、2014年に比べて8億ドル増加していた。その背景の一部として、大手保険会社もこれまでのやり方では、少なくとも新たな顧客をつかむという観点からは、上手くいかないと気づきはじめているのだ。
Quiltは保険サービスが提供される場を変えていくだけでなく、保険ビジネスのあり方さえ変えようとしているとBaldwin氏は語る。つまり、賃貸人向け保険契約内の、Quiltが変更を加えようとしている箇所について各州から個別に許可をとり、その後は生命保険やペット保険、旅行保険にも変革を起こそうとしているのだ。
賃貸人向け保険の顧客に対して恒常的に起きている支払保険金の不足について、彼は一例を挙げた。顧客である賃貸人は、保険で電子機器が全額保障されていると思っていながら、実際は電子機器に対する保険金は掛け金の一定額までと契約で決まっているのだ。
そのため、もしも電子機器が故障したり壊れたりした場合に、被保険者は買い換えに必要な金額のほんの一部となる保険金しか受け取ることができない可能性がある。
しかしBaldwin氏によれば、契約の内容を変更するためには、州ごとに異なる機関をたずねて許可を得る必要があるのだ。
アメリカ全土への拡大に向けて、QuiltはリードインベスターのNextView Venturesを含む複数の投資家から、325万ドルをシードラウンドで調達した。NextView Ventures以外の投資家には、Eniac Ventures、Founder Collective、Titan Partners、Basset Investment Group、さらには少数の重要なエンジェル投資家が含まれている。
Quiltが最初の商品をローンチ予定のフロリダでは、旧来の保険契約の処理や、新しい契約の作成にあたり、Security First Insuranceとパートナーシップを結んでいる。
Quiltが、実際に保険業界の他社とは違うことをやっていると証明できるようになるまでには時間がかかることが予想され、今の時点では、これまでと同じ商品にあたるもののパッケージングを一新しようとしている。
それでもQuiltは、保険ビジネスの難題に取り組んでいる成長目覚ましいスタートアップのひとつとして存在しているのだ。業界のビジネス慣習を変えようとしている他の企業としては、P2P保険のLemonadeや、マイクロ保険のTrov、そしてまだステルスモードにある、不動産・災害保険のJettyなどが挙げられる。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)