Slackは再度資金調達ラウンドを進めている。 Recodeによれば50億ドルの会社評価額で5億ドルの資金調達を試みているという。この資金は大企業を顧客に加えて新たなビジネスモデルを確立するために必須だ。
昨夜のBloombergの記事によれば、AmazonはSlackの買収に90億ドルを提示したという。Slackはこの買収に興味を示していないようだが、評価額は50億ドルからさらに上昇する可能性がある。
Slackが大口顧客獲得や新たな大型資金調達ラウンドを進める上で、こうしたトレンドは追い風となるだろう。大企業の多くは(たとえ機能が劣っていても)既存のシステムにロックインされている可能性が高い。大口顧客の獲得と同時にSlackの優れたデザインを発展させていくには多額の資金を必要とする。
Slackはシリコンバレーの寵児だ。単にシリコンバレーだけでなく世界のスタートアップ・コミュニティーの心をしっかりつかんでいる。同社のチャット・インターフェイスはきわめてシンプルなデザインで、誰であれ訓練の必要なしにすぐに使える。Slackではこのサービスを大きなチームがプロジェクトを進める上でのツールにしようと努力している。Slackの機能はこれまでもメジャー・アップデートを重ねて進化してきた。たとえばこの1月の メッセージのスレッド化だ(Slackはスレッドの開発に1年以上かけたという)。
Slackのメリットであるシンプルなインターフェイスを維持しようとするあまり、大企業が要求するような機能の導入に消極的であると、結果として成長の頭打ちを招きかねない。
昨年10月の発表によれば、1日当りアクティブ・ユーザーは500万、有料ユーザーは150万だった。Recodeの記事によれば、年間10億ドルの売上があるもののまだ黒字化を達成していないという。
今年5月のアップデートでは特定の質問に対して詳しい情報を持っているメンバーにすぐ回答してもらえる仕組みが導入された。Slackを利用するチームのサイズが大きくなればなるほど情報は混雑してくる。既存のビジネス・コミュニケーション・ツールと競争するには、Slackは使いやすいシンプルなインターフェイスを維持しつつ、情報の混雑をかきわける方法を編み出する必要がある。もちろんライバルはいつでもSlackの機能をコピーできる。SlackはFacebookが容赦なくSnapの機能をコピーして成長を続けた例を教訓とすることができるだろう。
今年に入ってSlackははっきりと大企業に狙いを定め、エンタープライズ・グリッドをスタートさせた(これも1年以上前から準備されていた)。5月には画面共有がサポートされた。こうした段階的なアップデートはすべてライバルの先を越して大企業ユーザーを取り込もうとする努力だ。
昨年4月、Slackは38億ドルの会社評価額で2億ドルの資金を調達している。SaaS企業、成長企業を探している強気の資金マーケット(先週はやや陰りがみえたが)はSlackを利するだろう。新たな資金調達は成長をさらに加速し、単にSlackの機能を強化するだけでなく、企業イメージも改善するに違いない。これは大企業に対しライバルのプロダクト、たとえばMicrosoftなどの既存のツールからの乗り換えを説得するにあたって大きな武器となる。
新たな資金調達ラウンドについてSlackの広報担当者に問い合わせたがまだ回答はない。
F画像: David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)