スマートニュースは3月11日、ニュースアプリ「SmartNews」上で、川崎市男子生徒殺害事件の被疑者として逮捕された少年の実名と顔写真とされる内容が含まれた記事を表示していたと発表した。すでに自社の判断で表示を停止している。
SmartNewsでは、ソーシャルメディアをはじめとしてインターネット上で話題になっている記事を収集し、独自のアルゴリズムで選定・表示している。同社はそれを説明した上で「当社の運用基準に抵触すると判断した場合は、自主的に表示を停止している。また、そのような事象を未然に防ぐよう、アルゴリズムの改善を継続的に行っている」とし、「人的およびシステムによる監視体制の強化と精度の向上に取り組むと」と今後の対応を説明した。
毎日新聞が報じたところによると、スマートニュースは「コンテンツは自社で作ったものではないが、掲載した社会的責任はある」「(少年法61条との兼ね合いについて)個別案件について見解は答えられない」とのコメントをしている。
問題になった記事は、いわゆる「2chまとめ」系ブログのもの。実名および顔写真とされる内容を掲載したメディアの記事を引用して作成していた。毎日新聞が記事上に掲載したSmartNewsのスクリーンショットに掲載された内容(一部はぼかされ、人名や写真が分からなくなっている)を検索すると、当該人物らしき実名や顔写真が掲載されたサイトがすぐ見つかる。
自社の「炎上記事」でもニュースとして表示
あらためてスマートニュースに問い合わせたところ、少年法に関わる点は「一部報道にあるとおり」と歯切れの悪い回答ではあったものの、同社の記事の表示・非表示に関する方針を聞くことができた(一部は3月12日に同社の発表に追記された)。
SmartNewsでは、公序良俗に反する内容の記事について、人力およびアルゴリズムで表示をしないようにしているのだそうだ。それに加えて、“事実が更新された記事”についても表示しないようにしているという。どういうことかというと、ある選挙の結果が出た際、以前に表示されていた「(落選した)特定の候補者が有利」といった記事を消すというように、情報のアップデートを図っているのだという。
今回の一件で人力、システム両面での監視を強化するとしたスマートニュースだが、前述のような記事のアップデートを除いては、人力で特定の記事の露出を増やす、というような編成機能を持つことはしない。ただし、「(公序良俗に反するなどとして)特定の記事を取り下げた場合、その内容を学習することでアルゴリズムをさらに改善していく」のだそうだ。
自社の「炎上記事」でもニュースとして表示
3月11日のスマートニュースの対応には、評価されるべき点もあるんじゃないかと僕は思っている。取材に対して「サービスの社会的な意義」について語り、毎日新聞の「スマートニュースが少年の実名と顔写真を含む記事を表示していた」というニュースもSmartNews上で掲載しているからだ。
僕はこれまで、広告主のネガティブニュースを掲載しないように(主にビジネスサイドから)編集サイドに働きかけるというような残念な話を何度か聞いたことがある。広告でメシを食うメディアのジレンマだ。
だがスマートニュースはそういったことはしないと語る。「ビジネスと編集の分離という考え方は持っている。過去にSmartNewsのサービスが炎上したときも、(アルゴリズムで選ばれれば)表示していた」——メディアとして考えれば当たり前な話ではあるかもしれないが、この方針を明言したことの意味は大きいのではないだろうか。