Slackが新たなラウンドで大型の資金調達を実施した。評価額が50億ドル以上と伝えられる今回のラウンドをリードしたのは日本のSoftbankで、同社はこのところありとあらゆるテクノロジー企業に投資している。今回の投資も総額1000億ドルと伝えられるSoftBankの巨大なビジョン・ファンドからのようだ。
SoftBankは最近のシリコンバレーの大型投資案件の多くに参加しているが、今回はビジネス向けコミュニケーション・ツール、Slackの2億5000万ドルの資金調達ラウンドをリードした。このラウンドで、Slackは「人気があるといってもしょせんシリコンバレー周辺の現象」という通念を打ち破り、世界的なビジネス・アプリへの道を歩む可能性を示した。Slackはスタート当初は誰でも使えるシンプルさを売り物にしたチャット・サービスだったが、今や大企業のユーザーも多くなり、これに伴ってMicrosoftやAtlassianといったビジネス・ソフトの有力プレイヤーがひしめく競争の激しい市場に参入しつつある。
Slackが大型資金調達を実施するらしいという噂は以前から流れていた。われわれも今年の7月に同社は5億ドルのラウンドを計画しているという記事を掲載し、Amazonが90億ドルでSlackを買収する可能性も報じた。そうした背景からすると今回のラウンドはだいぶ規模が縮小されたことになる。
Slackは昨年アップデートを頻繁に繰り返しながらプロダクトを拡充させていった。この「コツコツやる」方式の改良は実を結びつつある。たしかにSlackの人気はシリコンバレーで非常に高いが、同社はニッチ・プロダクトという地位から脱却して成長を続け、ビジネスにおける共同作業の標準的なプラットフォームとなるべく努力をしている。今月、Slackは1日当たりユーザーが600万人、1年単位の課金額(annual recurring revenue)が2億ドルを超えたと発表した。当初のロケットスタートほどのスピードではないにしても、Slackの成長の勢いは相当のものだといえる。
昨年、MicrosoftはSlackの買収をかなり検討したもようだ。情報源によればこのときの会社評価額は80億ドルだったという。しかしMicrosoftは結局、傘下のSkypeを改善する方を選んだ。今月、MicrosoftはSkypeをアップデートして他組織のゲストも共有チャンネルに参加できるようにした。
Slackは買収ではなく資金調達ラウンドの実施を選び、Thrive Capitalから38億ドルの評価額で投資を得た。 つまりSlackにとって大型の資金調達ラウンドはこれが最初ではない。上で触れた噂のようにこのところSlackは熱い注目の的だったが、結局、噂よりは着実な評価額でのラウンドの実施となった。Slackに予想される次年度売上高と評価額の比は25倍程度だ。もちろん評価額には健全な成長が続くという前提とのれん代も含まれているはずだ。
Slackは今月に入って複数の組織のメンバーが参加できるチャンネルを開設した。開発に1年以上かかったものの、これは機能の自然な拡張であり、かつある種の口コミによっ企業ユーザーを拡大するという狙いも込められている。Slackは今後もさらに大企業の注目を集める機能を開発していくものと思われる。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)