Spotify(スポティファイ)のビジネスが新型コロナウイルスのパンデミックから継続的に影響を受けていることが、7月29日の2020年第2四半期決算発表で明らかになった。良いニュースもあった。ソーシャルディスタンスを保ちながら娯楽を求めてストリーミングサービスを利用するユーザーが増え、月間アクティブユーザーは29%増加し2億9900万人に達した。有料会員数もウォール街が予想した1億3640万人を上回り、1億3800万人に増加した。だがパンデミックが広告ビジネスにマイナスの影響を与え、同四半期の広告売上は前年比21%減の1億3100万ユーロ(約170億円)となった。
Spotifyの売上高の大部分(約90%)を占めるプレミアムプランは、同四半期は17%増加して17億6000万ユーロ(約2200億円)に達した。同社は成長の要因を、より高額なファミリープラン会員の増加、新しい2人向けのデュオプラン、ロシアなどの新しい市場へのプラン拡大などによるものと考えている。
また同社はユーザーのリスニング時間も新型コロナの健康危機前のレベルに戻ったと強調した。パンデミックの影響で第1四半期当初、デイリーアクティブユーザーとリスニング時間が減少した。在宅勤務や子供のホームスクーリングなど、ユーザーが突然のライフスタイルの変化への対応を迫られたためだ。本日のSpotifyの発表によると、6月30日の時点でラテンアメリカを除く世界のすべての市場で消費時間が「新型コロナ前のレベル」に回復した。ラテンアメリカではグローバルな健康危機の前のレベルを6%下回る水準にとどまっている。
リスニング時間の回復は、EUやアジア太平洋地域など新型コロナの拡大が鈍化している地域が主導したと同社は指摘した。また、政府のロックダウンや在宅勤務により利用が鈍化した他の地域でも伸びた。例えば車内利用は4月の最低時点で新型コロナ前の50%にまで減少していたが、同四半期末では10%未満の下落にとどまった。
マイナス面として、Spotifyの広告売上は同四半期を通じて低下した。新型コロナ危機前より市場全体が慎重になったためだ。同社はこの傾向が年間を通じて続くと見込む(ロイター記事)。この影響により同四半期の売上高は市場予想に届かなかった。売上高は13%増の18億9000万ユーロ(約2340億円)だったが、アナリスト予想は19億3000万ユーロ(約2400億円)だった。
「前四半期は世界的な健康危機により売上高が著しく減少した。特に3月の最後の3週間で当社の見通しと比べて20%以上落ち込んだ」と同社は株主への書簡(PDF文書)で述べた。「業績は4~5月は予想を下回ったが、6月は大幅に上回った。4~5月の累計で広告売上は前年比25%減だったが、6月の業績は大幅に改善し前年比12%減にとどまった」。
現在、広告は売上の主な原動力ではないが、同社のポッドキャスティングビジネスの戦略の重要な一部だ。同社は最近、 Kim Kardashian West(キム・カーダシアン・ウエスト)氏、Joe Rogan(ジョー・ローガン)氏、Michelle Obama(ミシェル・オバマ)氏、DC and Warner Bros.(DCとワーナーブラザーズ)、TikTokスターのAddison Rae(アディソン・レイ)氏などとの独占契約に多額の投資を行った。同社は積極的に資金を使っている。例えば、伝えられるところによればジョー・ローガン氏との契約には1億ドル(約105億円)以上かかったようだ(Wall Street Journal記事)。
また、この分野への投資の一環として、独自のポッドキャスト広告を販売するほか、ポッドキャストの作成、編集、配信のためのツールに取り組んでいる。例えば同社は、ポッドキャストの収益化を狙った新しい広告テクノロジーを開発している。一例は同社が最近テストしているアプリ内オファー(未訳記事)で、ユーザーはSpotifyアプリからいつでもオーディオ広告に表示されるクーポンコードやその他のオファーを使用できる。
最近ではビデオポッドキャストにも投資した。Streaming Ad Insertion(ストリーミング広告挿入)テクノロジーも、この夏米国の広告主にも広く利用可能になる予定だ。それから、Omnicom Media Group(オムニコム・メディア・グループ)との2000万ドル(約21億円)の広告提携を発表した。同社によれば、ポッドキャスト広告の提携としては史上最大の全世界ベースでの戦略的提携だという。
Spotifyは、全体として同四半期のポッドキャスト広告の実績は予想を上回り、その傾向が7月は続いていると語った。
画像クレジット:Bryce Durbin
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(翻訳:Mizoguchi)