重要な科学研究のすべてがクールに見えたり、名前がクールだったりするわけではないが、でもときには、その両方の場合がある。この、自分で自分を組み立てるカーボンナノチューブ(self-assembling carbon nanotubes)は、Teslaphoresis〔仮訳: テスラ泳動〕と呼ばれる工程で作られる。あなたが今日見たあらゆる文の中に、これよりもクールな響きを持つ文*が一つでもあったら、教えてほしい。〔*: 全文: These self-assembling carbon nanotubes are created with a process called Teslaphoresis.〕
ライス大学(Rice University)の化学者Paul Cherukuriの研究室も、まるでマッドサイエンティストの隠れ家みたいだ。でも、そんなけばいびらびらに騙されてはいけない。これはきわめて重要な研究開発なのだ。
ナノチューブは一連のカーボン製卓越機能素材(supermaterials)の一種で、グラフェンと同じく、興味深い特性がたくさんあり、理論上の応用技術/製品も多い。しかし、これまたグラフェンと同じく、安価で信頼性の高い製法が難しい。このテスラ〜〜法は、超薄型で超強力で超伝導性のあるカーボンナノワイヤを作るための、画期的な方法かもしれない。
Cherukuriは、子どものころから今日まで、テスラコイルのファンだ。それは、強力な交流電界を作り出す。
同大学が発表したビデオの中で、彼はこう言っている: “われわれが発見したのは、この電界下ではナノチューブが自分自身でひも状につながってワイヤーを作ることだ。Teslaphoresis〔という言葉〕は、それが離れた空間における自己組み立てであることを理解するための、いちばん簡単な方法だ”。
コイルの交流電流が、ナノチューブの小片に極性を与えるようである。すると彼らは直ちに隣同士で列を成(な)し、長い鎖(さ)を作る。下図のように:
上の二つめのgifでは、ワイヤーが実際に二つのLEDを接続し、それらに電気を送っている。これまでで最長の鎖は15センチだ。ワイヤーがやや毛羽立って見えるのは、たくさんのナノチューブが、われもわれもと列に並ぼうとするからだ。面にパターンがあって、余分なのをそぎ落としたり、行き先をガイドできたりすれば、この現象は防げる。あるいは、コイルを複数使ってもよい。
この研究のペーパー執筆を監督しているLindsey Bornhoeft(テキサスA&M大学の院生)によると、“これらのナノチューブワイヤーは神経のように成長し行動する”、という。“ナノ素材のコントロールされた組み立てがこのようにボトムアップで行われるのなら、再生医療のためのテンプレートなどの応用がありえるだろう”。
恒久性のある電子回路インプラントとか、可撓性のある電子回路なども、この技術の応用として可能になるのではないだろうか。もうすぐ、それらが世の中の当たり前になる。研究者たちは彼らの仕事を、アメリカ化学学界の機関誌Nanoに発表している。