シードVCのTHE SEEDは11月25日、京都のスタートアップや最新テクノロジーに関心のある人材に対して作業場所や最新VRデバイスなどを無料で提供するインキュベーション施設「SEEDKYOTO」を開設したことを明らかにした。
SEEDKYOTOは関西の若手起業家および起業家予備軍のチャレンジを後押しすることを目的として立ち上げられたスペースだ。主に学生を対象に無料で使えるインキュベーションオフィスを提供するほか、アクセラレータプログラムを通じて先輩経営者と交流できる場やVCなどによるメンタリングの機会なども設けていくという。
背景にあるのは「関西では投資家や先輩起業家に気軽に会うことが難しい」という課題感だ。
THE SEEDのジェネラルパートナーである廣澤太紀氏によると、ここ1〜2年の間だけでも関西圏におけるスタートアップ支援の総量自体は増えてきているそう。複数のアクセラレータプログラムやピッチコンテンツが開催されていたり、京都リサーチパークを始めとした支援施設が充実してきていたり。「肌感としては2010〜2013年くらいの東京のように、いろいろなスタートアップ活動が盛り上がり始めている」という。
一方で東京と比べて圧倒的に不足しているというのが「初期の段階からリスクを取って挑戦を後押しするVCや個人投資家の数」だ。
「関西にはプロダクトがないような状況でもスピーディーに出資の判断ができるエンジェルや独立系のシードVCがまだ少ない。同じ金額を調達するにしても東京の方が選択肢が豊富で、投資家も出資慣れしているので話がスムーズに進む。また出資後も投資家経由で起業家のコミュニティや集まりに呼んでもらえたり、人を紹介してもらうことも多いが、関西だと『ランチがてら先輩経営者に相談に乗ってもらう』といったことも簡単ではない」(廣澤氏)
廣澤氏はもともと関西学院大学の出身。昨年8月にTHE SEEDを立ち上げる以前から関西の学生がスタートアップや起業に触れるきっかけとなるコミュニティを運営してきた。現在もメインの拠点は東京になるものの、大阪や京都にてミートアップの開催や創業投資を継続的に行っている。
これまでに出資した十数社の中には関西出身者が立ち上げた企業など関西に関わりがあるところも多いが、関西に拠点を置く企業はまだ少ないそう。京都拠点の開設を機にTHE SEEDとして関西圏のスタートアップ投資を強化していくのはもちろん、同じような志を持つ同世代の起業家と交流できる場や、東京のVCや経営者などメンターとなる人物を出会える環境も整えていきたいという。
「若い才能は東京だけでなく関西にもたくさんいる。実際大学生の人口分布を見ても東京の約25%に対して関西(※大阪、京都、兵庫)は約18%と大きな差はなく、もっと関西からも活躍する若い起業家を増やしていける可能性はあると考えている。自分が関西の若い起業家と東京のVCや先輩起業家をつなぐハブとして多少なりとも機能する手応えも掴めてきたので、SEEDKYOTOを通じて大きな挑戦を後押ししていきたい」(廣澤氏)