Vineは思い出の悲しいブラックホール?!

Vineほどに、私を悲しい気持ちにさせるアプリケーションを他に見たことがない。ここで言うVineはもちろんTwitterの提供している6秒動画作成ツールのことだ。ムービーを撮影して、どういうタイトルを付けたものかなどと考えていると、いつの間にやらアプリケーションが終了してしまっていることがあるのだ。もちろんもう撮影した動画を投稿することはできない。せっかく撮影した思い出は失われてしまったのだ。Vineが大好きではある。しかしこうして強引に大切な思い出を奪い去っていくのは度し難いことだと思う。

ムービーを撮影して、タイトルなどを付けて、そして並行して投稿するソーシャルネットワークを決めて、投稿を済ませるというのがVineの基本的な使い方だ。しかし投稿せずにアプリケーションを閉じたり、あるいはアプリケーションがクラッシュすると、撮影した動画は失われてしまう。

非常にラッキーな場合には、Vineを再度立ち上げると編集画面に先ほど撮影した動画が表示されていることもある。しかし何事もなかったかのようにホーム画面が表示されることの方が多い。なるほど、撮影した動画はカメラロールには保存される。しかしVineにはインポート機能がない。動画は常にVineアプリケーションで撮影する必要があるのだ。カメラロールに残った動画をVineに投稿することはできない。もはや手軽に共有することもできないのだ。また、クラッシュ時にはカメラロールにも何も残っていないことも多い。個人的には、撮影した動画の半分ほどが時空の彼方に失われてしまった印象を持っている。

他にもVineにはさまざまな不具合がある。もちろん登場からわずか4ヵ月のアプリケーションであり、まだバージョンも1.0.7であってみれば、不具合があるのも致し方ないこととも言える。ただ、頻繁にアップロードできなかったり、フィードの読み込みがうまくいかなかったり、プライベート共有のオプションがなかったり、そして撮影時にしばしばクラッシュするという状況はひどすぎるように思う。

そもそも、Vineのようなアプリケーションを使うというのは、「ライブ」と引き換えに「思い出」を得ようとしているわけだ。リアルタイムに体験することを諦めて、その代わりに記録を残そうと考えている。ところが「ライブ」を諦めて使ったはずのVineは、しばしば「思い出」さえも消し去ってしまう。これはあまりに暴力的で、深く失望してしまう。記録に残したいものを見ても、なかなかiPhoneに手が伸びなくなってしまう。

それはそれで良いじゃないかと言う人もいるかもしれない。私たちは記録に残すことに慣れすぎて、単純に美しさ、楽しさ、スペクタクルなどを楽しむことができなくなっているという人もいる。iPhoneに手が伸びなくなれば、シンプルに「今」を楽しむことが出来るようになるのかもしれない。しかし、それでも「ずっと残しておきたい」瞬間もあるはずだ。そういう時にはやはりきちんと記録に残したい。「ライブ」も「思い出」も永遠に失われてしまうことになるかもしれないなどという恐怖は感じたくないのだ。VineはSnapchatではない。一瞬で消え去ってしまうことなど、誰も期待していないはずなのだ。

Vineはしばらく前に、種々の不具合がありながらもAppStoreの無料部門でトップになった。これはコンセプトに優れ、使いやすくわかりやすいデザインを採用しているおかげだろう。しかしそろそろ利用者の声を聞いて欲しいのだ。次のことを切に希望したい。「全てが失われるバグをなんとかして欲しい。撮影した動画は撮影終了時直ちに保存するようにして欲しい。アプリケーションとしての信頼性を身に着けて欲しい。アプリケーションを使いながら、無情な喪失感などを味わいたいと思う人はいないのだ。そんな悲しさは現実の世界だけで十分だ」。

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(翻訳:Maeda, H)


投稿者:

TechCrunch Japan

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