ジャーナリストであり投資家でもある筆者は、単一製品のみの超ニッチな企業には常に少々疑問を感じている。うまくいかないことがたくさんあるし、消費者直接取引ブランドがうまくいく方法の1つは、顧客にクロスセルする(関連製品を売り込める)力を持つことだからだ。
Morphée(モーフィー)はそんなブランドの1つだった。同社がはじめて発売したのは、率直にいって滑稽なほど過剰なデザインの(しかし驚くほど美しい)99ドル(約1万1500円)の非デジタルの睡眠・瞑想用製品だった。その後、子ども向けの製品を追加した同社は、さらに今回のCESで「Morphée Zen(モーフィー・ゼン)」と呼ばれる新製品を発表した。これは、小さな丸い石のような旅行向けのリラクゼーション機器だ。
同社が「リラクゼーション・ペブル」と表現するMorphée Zenは、まさに小石のように見える超ポータブルなデバイスで、心を落ち着かせる音や音楽、音声によるセラピーなど、メンタルウェルネスのトレーニングや睡眠のために特化したリラクゼーションセッションを受ける(聴く)ことができる。ダイナミックリラクゼーション、ディープリラクゼーションなど、6つのテーマに基づく72の音声セッションの中には、自然音やリラックスできる音楽の他、心拍数をより管理しやすい状態にするための2分間の「インスタント・リリーフ」セッションも用意されている。
もちろん、ここでの本当の問題は、Morphéeがブランドをほんの少しだけ拡大し過ぎているのではないかということだ。確かに「My Little Morphée(マイ・リトル・モーフィー)」を与えて子どもたちからスマートフォンを遠ざけることには意味があるかもしれないし、オリジナルのMorphéeは、瞑想装置であると同時に芸術品でもある。
しかし、年間69.99ドル(約8090円)で「Calm(カーム)」のような瞑想アプリを利用でき、Spotify(スポティファイ)やYouTube(ユーチューブ)など、想像できる限りのあらゆる場所で瞑想や睡眠導入音、集中力を高めるための音楽などが、ほぼ無限に提供されているこの世界では、Morphée Zenはあまり意味をなさないのではないかと私には思える。純粋なソフトウェアソリューションで基本的には同じことができるのに、遅かれ早かれどこかの埋め立て地に行き着くであろう製品を、我々は本当に必要としているだろうか?
この製品は2022年第3四半期に発売予定で、価格は79.99ドル(約9250円)となっている。
[原文へ]
(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)