Google Playでダウンロードが10億回を超えた会社は2社しかない。そのうちの1社はもちろんGoogle自身だ。今日(米国時間6/9)、FacebookはSMSを代替するビジネスの市場がどれほど巨大かを実証した。Messenger部門の責任者、David Marcusが発表したところによると、MessengerのAndoid版のダウンロード回数が 10億回の大台に乗ったという。10億回超えのアプリはFacebook本体、WhatsApp、Gmail、YouTube、Google検索、Googleマップと極めて数が少ない。Messengerもついにこのエリートクラブに仲間入りしたわけだ。
最新のモバイル・デバイスの共有機能とスピーディーなテキストメッセージのやりとりを結合させるというMessengerの基本戦略は成功した。しかもFacebookはMessengerの機能を野心的に拡大中だ。VOIP通話、ビデオ会議、スタンプ、ボイスメール、ピア・ツー・ピア支払、ロケーション、サードパーティー向けアプリのためのプラットフォーム化等々、Messengerはユーザーのあらゆるコミュニケーションのニーズに一手に応えようとしている。 そしてそのユーザーはすでに6億人に上っている。
シンプルなメッセージ・サービスに特化したWhatsAppを傘下に持つFacebookはメッセージ・アプリの世界の難攻不落の要塞を建設することに成功している。Snapchat とYik Yakもいくらかおこぼれにあずかれるかもしれないが、Facebookはすでにコミュニケーション・ユーティリティーとして次の展開を狙っている。
Facebookは現在、目立たないやり方でMessengerを本体にさらに緊密に組み込もうとしている。
たとえばグラフ検索で「xxの曲を聞いたことがある友達は?」のような検索をすると、そのユーザーのプロファイルではなくMessengerのリンクが表示される。友達の誕生日にFacebookは誕生祝いのメッセージを、ニュースフィードではなく、メッセージで送信するよう促すことがある。
先週、FacebookはMessengerの地図とロケーション機能をリニューアルした。これはGPS機能を利用した新たなロケーション機能導入のための準備だ。これまで、待ち合わせ場所の確認はFacebppl本体アプリのNearby Friendsが受け持っていた。
Facebookがライバルのチャットサービスに対して優位なのは、FacebookはMessengerで金を儲ける必要がないという点だ。広告を溢れさせたり有料のスタンプを売り込んだりする必要がない。Messengerの役割はユーザーをFacebookコミュニティーにしっかりと繋ぎ止めることで十分果たされており、その後はFacebookのモバイル広告が十分すぎるほどの売上をもたらす。
しかしここまでの道のりは必ずしも平坦ではなかった。Facebookはユーザーにメッセージを使うなら本体と別に新たなアプリをダウンロードするよう告げねばならず、少なからぬユーザーが反発した。しかしそれも無事に収まって新アプリが普及するに連れ、チャット・サービスに日が当たるようになり、エンゲージメントは着実に上昇し始めた。Facebook本体という巨艦から独立したことでMessengerは身軽になり、新機能の実装も素早くなった。
PayPalの元プレジデント、David Marcusをトップに、プロダクトのエキスパート、Stan Chudnovskyがナンバー2を務めるMessengerチームがこの半年で実施した主なアップデートは次のようなものだ。
- ロケーションのリニューアル
- 無料のVOIPビデオ通話
- スタンドアロンのメッセージ・ウェブサイト
- サードパティーのためのメッセージ・アプリのプラットフォーム化
- 企業向けカスタマー・サポート・チャットの発表
- ピア・ツー・ピア支払
一方で、メッセージ分野を制することができる資金と技術力をもったライバル、Googleはここ数年、彼らが言うところのムーンショット(野心的)プロジェクトに気を取られて失敗を重ねてきた。Googleハングアウトはビデオチャットで先行したにもかかわらず、それ以上に伸びなかったし、WhatsAppの買収にも失敗した。成功していれば二頭立てレースになったはずだが、現状はFacebookの一人勝ちという結果になっている。
Facebookはメッセージ・アプリが今後モバイルでもっとも長い時間使われるようになると考えている。中国のWeChatはチャットをすべてのモバイル活動のポータルとするという戦略のパイオニアだが、Facebookも必要に応じてあらゆる機能をMessengerに移植できる態勢を整えている。
長年、シリコンバレーでは「何がFacebookキラーになるか?」という議論が続いてきた。結局、Facebookキラーを作り出したのはFacebook自身だったようだ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)