Googleがソーシャルメディアで失敗を繰り返してきたことはよく知られている。今回は同社がSnapchatの買収を試みていたことが報じられた。2016年にGoogleはSnapが最後の最後のベンチャー資金を調達する前(もちろん今年の株式上場以前だ)に同社と話し合いを行い、300億ドルという買収金額が示唆されたという。Business Insiderの Alex Heathのスクープによれば、この買収申し出はSnap社内では「公然の秘密」だったという。
しかし独立心が強いことで悪名高いSnapのCEO、Evan SpiegelはGoogleであろうと誰であろうと売却にまったく興味を示さなかったようだ。Snapは上場当初の5月に時価総額300億ドルとなったものの、その後株価は下落を続けて、現在は150億ドル程度に下がっている。
しかしGoogleがSnapに興味を抱いていたというニュースはSnapの株価を2.3%アップさせた。SnapchatクローンのInstagram Storiesの成功に加え、Snap関係者の株売却を禁じたロックアップ期間が 7月で満了し大口の売りが出る可能性が警戒されたことなどからSnapの株価はこのところ下落を続けていた。
Business Insiderの記事に対してGoogleはコメントを避けた。SnapはTechCrunchの取材に対して「噂は真実ではない」と答えた。GoogleのSnap買収の試みがごく予備的な段階であり、Snapのトップにまで達していなかったという可能性はある。
2016年の買収交渉が実を結ばなかった後でGoogleはグロース・ステージ投資組織、CapitalGから200億ドルの会社評価額でSnapに投資を行った。GoogleのEric SchmidtはSnapのSpiegelと以前から親しく、Snapのアドバイサーを務めていた。一方SnapはGoogleのクラウドツールを利用する他、Snapchatが向こう5年間に20億ドルをGoogle Cloudの使用料金として支払う契約を結んでいる。
2016年5月の段階ではSnapにはInstagram Storiesという強敵は現れていなかった。しかし昨年8月2日にStoriesがリリースされ、あっという間に普及し始め、これ以後Snapに対する市場の見方は完全に変化した。
GoogleがSnapを買収できれば、Google+、Buzz、Waveの失敗の後できわめて大きなメリットを得ただろう。Snapの膨大なユーザーの行動データを得て有効なソーシャルグラフを構築する役に立ったはずだ。またSnapも資金力豊富な親会社の下にあれば世界のソーシャルメディアの買収や巨額の投資を必要するARテクノロジーの開発にも有利だったはずだ。人工知能視覚やGoogle検索はSnapのビジネスを改善するために重要な役割を果たしただろう。
両者が力を合わせれば、ハードウェアではGoogle GlassとSnap Spectaclesを統合し、強力かつ魅力的なARデバイスを普及させることができたかもしれない。またGoogleの広告システムはSnapの収益化にとって有益だったはずだ。しかし逆に両者の全く異なる企業文化が破壊的な衝突を起こした可能性もある。
いずれにせよ買収が現実となることはなかった。結局Spiegelがつまづきの石だった。Spiegelと共同ファウンダーのBobby MurphyはSnapの議決権を完全にコントロールできるように会社を組織しており、他の株主の発言権は一切認めていない。つまり当時他の大株主がこぞって300億ドルを受け取ってGoogleグループに加わるべきだと望んでいたとしてもそれをSpiegelたちに強いる方法はなかった。Spiegelはそもそもマーク・ザッカーバーグの買収提案を蹴ったことで有名だ。
われわれがSnapの上場前に書いた記事のとおり、Snapに賭けることは良かれ悪しかれSpiegelに賭けることを意味する。Spiegelは外部の意見を聞かず、自らの第六感に従って行動することで知られている。この第六感は「消えるチャット」という驚くべきプロダクトを生み出した。また買収にも冴えをみせ、Snap BitmojiやAR顔フィルターを実現させている。しかしFacebookという巨人の攻勢にあってSnapが溺れそうな現在でもSpiegelは浮輪につかまることを拒んでいるようだ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)