米国時間6月20日はSlackにとって歴史的な日となった。ビジネスコミュニケーションに革命を起したスタートアップはWORKのティッカーシンボルでNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場を果たしたが、初日の取引で株価は大きくアップし38.50ドルの終値を記録した。これは売出価格の26ドルを48.5%も上回る価格だ。
2009年にTiny SpeckとしてスタートしたSlackの取引は上場初日からホットなものとなり、場内取引で一時42ドルが付いた。Slackの時価総額は200億ドル(約2兆1470億円)を楽に超えるものとなっている。最近の資金調達ラウンドの会社評価額が70億ドル(約7510億円)だったから3倍に跳ね上がったことになる。
Slackの木曜日の上場はベンチャーキャピタルが支援するテクノロジー・スタートアップの大型直接上場として2件目の例だ。これまでの上場では投資銀行が新株を一括して引受け、証券取引所で売りさばくのが普通だった。これに対して新株を発行せず、投資銀行も介さず、発行済み株式を証券取引所で売買できるようするのが直接上場だ。これによって上場企業は投資銀行が株価差益や高額の手数料を得ることを避けられる。またロードショーと呼ばれる投資家向け説明会を各地で開催する必要もない。売り出された株式はこれまでベンチャーキャピタル、ファウンダー、社員などの関係者が保有していたものだ。
Slackの共同ファウンダーでCEOのスチュワート・バタフィールド氏はビリオネアの仲間入りを果たした。バタフィールド氏はSlackの8.6%を所有しており、これは売出価格で計算しても16億ドル(約1717億円)だった。最大の株主はベンチャーキャピタルのAccel Partnersで所有する株式の価値は46億ドルだという。以下大、Andreessen Horowitz が26億ドル、Social Capitalが20億ドル、 ソフトバンクが14億ドル、Slackの共同ファウンダーであるカル・ヘンダーソン氏が6.46億ドルとなっている。
Slackの上場成功は予期されたものだった。今年の上場では企業向けSaaS(Zoom、PagerDuty,など)のパフォーマンスが最良だった。SharesPostによれば、エンタープライズSaaSの上場では売出し価格から平均して100%以上の値上がりがあったという。
直接上場は新しい手法であるためリスクも大きいが、Slackの場合は世界的な知名度に加えてウォールストリートでは誰もがSlackに一口乗りたがっていたことが追い風となった。
Spotifyも直接上場を選んだが、それなりの好結果を残している。ただし売出し参考価格132ドルに対して初日の終値は10%ダウンだった。
Slackはこれまでに12億ドルを調達しており、投資家にはAccel、Andreessen Horowitz、Social Capital、ソフトバンク、Google Ventures、Kleiner Perkinsといったメンバーが含まれている。4億ドルを調達した2018年後半のラウンドの会社評価額は71億ドルだった。
上場企業となった以上、今後は当然ながらSlackの財務状態に注目が集まる。直接上場の数週間前にSlackはSEC(証券取引委員会)に提出したS-1申請書を修正し、損失率が半減しているなど収益化への展望を説明した。
Slacの発表によれば、4月30日を末日とする四半期の収入は1億348万ドル、赤字は318万ドルだった。 このSlackの収入は対前年比で67%アップしている(809万ドルの収入に対して赤字248万ドル)
今年の1月31日を終期とする会計年度では、収入は4億60万ドルの収入に対して赤字は1億3890万ドル(35%)だった。その前年度には2億2050万ドルの収入に対して赤字は1億4010万ドル(64%)が計上されていた。
画像: Drew Angerer / Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)