iPhoneの将来を勝手に心配した記事がダントツ(2018年10月ランキング)

2018年にアクセス数の多かった記事を月別に紹介していく年末企画。10月は、iPhoneの今後がどうなるかを書いたコラムがダントツのアクセスを集めた。

具体的には、アップルの共同創業者で前CEOの故・スティーブ・ジョブズ氏の命日に合わせて公開した記事だ。あくまでも個人の見解として、iPhoneをはじめとするスマートフォンのイノベーションはそろそろ限界で、新しいプロダクトが必要だという内容。その可能性を秘めるデバイスはAirPodsの進化形かもしれないと紹介している。AirPodsの進化形には、長らくウワサされているアップル製アイウェア「Apple Glass」などがあるとし、今後はARやVRを進化させたデバイスの登場が期待される。それにはARやVRに最適化したOS、UI/UXの開発も急務だとも述べている。

アップルに限って言えば、スマートフォンの次のイノベーションになるかも(なっているかも)しれないスマートスピーカーで、グーグルやアマゾンに大幅に出遅れているという事実もある。Siriは便利な音声アシスタントだが、同機能を搭載したアップル製スマートスピーカーの「HomePod」は一部地域での販売に留まるのみで売上も伸び悩んでいる。スマートフォン市場はあと数年iPhoneが牽引していくと思われるが、そろそろ次のワクワク、ドキドキを体験したいところだ。

2位に入ったカオスマップ記事もTechCrunchでは鉄板。スタートアップ業界を中心に、さまざまな分野に参入している企業の関係性や立ち位置などがよくわかる内容だ。2018年はこの副業系のほかに、RPA、ライブコマース、インバウンド、AIなどのカオスマップを紹介した。

1位 iPhoneはもうすぐ日本で売れなくなる、アップルはどうするのか?
2位 副業系サービスをまとめたカオスマップの2018年度版が公開
3位 任天堂Switchのベストゲームはスーパー マリオパーティだ!
4位 カシオのオールメタルG-SHOCKが設定やアラームをBluetooth化
5位 ポケモンGOにシンオウ地方のモンスターが登場する

iPhoneがランキングを席巻、売れているのはiPhone 8(2018年9月ランキング)

2018年にアクセス数の多かった記事を月別に紹介していく年末企画。9月はiPhone関連記事がトップ5を席巻した。

2018年の新モデルはiPhone XS、XS Max、XRだったが、スマートフォンの売上ランキングで上位を占めたのは2017年に登場したiPhone 8。XSシリーズよりも安価なiPhone XR、1世代前のiPhone Xもランキング上位に入ったがiPhone 8には及ばなかった。XSシリーズはトップ10の下位にときどき顔を出すものの、ファーウェイの低価格機の後塵を拝すなど売上台数はイマイチの模様。とはいえ全体を見ると2018年もiPhone人気は揺るぎなかった。

日本国内でも躍進が続いているファーウェイ。米中の貿易摩擦で中国メーカーである同社の印象が今後どうなるか気になるところだが、アップルと戦えるのは同社しかいないのが現状だ。スマートフォンは機能やデザインの陳腐化が始まっており、そろそろほかのデバイスや分野に主戦場を移さないと各社とも立場が苦しくなるかもしれない。

1位 iPhone SEは後にも先にもアップルの最高傑作だった
2位 iPhone XS、XR、XS Maxを比較
3位 iPhone XRは「買い」
4位 AppleはiPhone XRで3D Touchが失敗であることを認めた
5位 iPhone XS、XS Max、XRの価格

iPhone SEは後にも先にもアップルの最高傑作だった

2018年のiPhoneの発表会で、私が唯一期待していたのは、新しいiPhone SEだった。それを提示しなかったアップルは、密かにSEを引退させてしまったようだ。それに関して、私は永遠にアップルを恨むこととなった。なぜなら、SEはアップルの最高傑作だったからだ。

もしあなたが、2015年にデビューしたSEを見送った多くの人たちの中の一人だったとしても、それは理解できる。iPhone6sは最新で最高性能で、もちろん、アップルがご親切にも6の新デザインのあらゆる場所に盛り込んだ問題の一部を解決した機種だった。しかし私には、SEが最高にピッタリ来ていた。

私は、4からのiPhoneのデザインを大変に気に入っていた。発表前にバーに置き忘れられてGizmodeにリークされてしまった事件で、記憶している人も多いだろう。あれは残念だった。なぜなら、今ではアップルはすべての機種で豪華な発表会を開いているが、あの機種だけが、それに相応しい製品だったからだ。

4は、完全に新しい工業デザインの美を確立していた。一目でそれとわかり、非常に実用的だった。オリジナルのiPhoneのステンレス製の背面と、ジェリビーンのような3Gも3GSにあった滑らかで丸いエッジも消えた(初代iPhoneはおそらくアップルが作った2番目に優れた機種だった)。

柔らかい曲線はカチッとした線と妥協のない形状に置き換わった。周囲を金属のベルトが取り囲み、ほんのわずかな段差でガラスの面と接している。それが、画面とベゼルを覆う黒いガラス面との境界を明確にして、どの角度から見ても光沢のある輪郭が浮かび上がるようになっている。

カメラはフラットになり、ホームボタン(お懐かしい)も、本体に埋め込まれる形で、少しだけ凹んだほぼフラットな形になり、本体の両面は完全に平らになった。それに対して、サイドボタンはしっかりと出っ張っている。音量ボタンは、よく目立つ丸い形となり、ミュートスイッチは、簡単に見つけられるが、誤って切り替えてしまう心配がない。電源ボタンは、人差指で楽に操作できる位置にある。これらの機能は、使い勝手の良さをダイレクトに示している。物事を、より簡単に、よりよく、より扱いやすくしながら、ひとつのオブジェクトとしての魅力的で一貫性のあるデザインに仕上がっている。

iPhone 4と比較すると、サムスンの「iPhoneキラー」と呼ばれる新しいGalaxy Sを含む他のすべてのスマートフォンは、プラスティックを多様した安っぽさが目立ち、デザインに一貫性がなく、よくてウォークマン程度の感じだ。私は、単なるアップルファンとして話しているのではない。その当時、私はiPhoneユーザーではなかったのだ。大好きだったG1を、今でも使っていたかも知れない。それは美女と野獣の物語だ。

5のデザインには、その縦長の画面に違和感を持ちつつも、なんとか使い続けることができたほど強力だった。そしてその世代から、裏面の残念な傾向、つまり割れやすいという問題が軽減された。

しかし、ツートーンのグレーのiPhone 5sには、基本的にもう改良の余地がなかった。その4年後、アップルは、そろそろ変化を加える時期だと感じたのだろう。ところが残念なことに、アップルが行なったのは、あらゆる個性を排除することだった。追加されたのは、画面の面積だけだ。

6は、私にとっては、単に醜い機種だった。当時のAndroidのスマートフォンを思わせる、どうしようもない退屈なものだ。Androidよりは少し高性能というだけで、あとは同じだ。6sも同様に醜かった。そして7から8にかけては、デザインに個性として残っていた部分まで削り落とされてしまった。実用性のためにとカメラの出っ張りがどんどん大きくなるという先祖返りが起こり、ヘッドホンジャックも消えてしまった。Xは、少なくとも、ちょっとだけ個性的だ。

最近の話に戻るならば、それは6sの後の、アップルがSEを発表したときのことだ。SEは「スペシャル・エディション」の意味であり、Macintosh SEへのオマージュでもあった。しかし皮肉なことに、その最初のSEは「システム・エクスパンション」(システム拡張)という意味だったのだが、新しいほうのSEはその逆だ。基本的に、iPhone 6sを5sのボディーに詰め込み、カメラとタッチIDセンサーとプロセッサーを改良したものだ。たぶんこれは、デザインが大きく変更されて、びっくりするほど大きくなった最新機種への乗り換えを躊躇している人たちへの救済措置だ。

初期のアップル製品を買ったことがなく、斬新さよりも使いやすさを求める人たちを改宗させるには時間がかかる。アップルのそうした事情は理解できる。だから、その難しい乗り換えを、少しだけ楽にする方法を与えたというわけだ。

SEは、懐古趣味的な、新しいものが嫌いな人たちだけでなく、小さなスマートフォンが欲しかった人にもアピールした。私の手は、とくに大きくも小さくもないが、このポケットに入れやすいサイズは気に入った。また、新しいものに安定したデザインを取り込んだことでは、多くの点で好感を持った。

傷つかないようにカメラをフラットにしたか? マル。普通に押せるホームボタンか? マル。フラットで左右対称のデザインか? マル。握りやすいエッジがあるか? マル。専用ケースが大量に存在するか? マル。私は長い間、これを使ってこなかったが、SEは最高の機種だ。

その当時、iPhone SEは、アップル製品の中でも大変にコンパクトで見栄えのよいものだった。機能面でも、ほとんど妥協がなかった。ひとつだけ注文をつけるなら、サイズだ。ただ、それは好みの問題だったが(今でもそうだ)。

それは、アップルがデザインした最高の作品だった。それまでに開発されたなかで最高の技術が詰め込まれていた。それまでに作られた中で、最高のスマートフォンだった。

敢えて言うあら、それ以降も含めて、あれは最高のスマートフォンだった。6以来、アップルは、ユーザーの気を引こうと、漂い、さまよっているように私には見える。それは、ずっと昔の2010年に、iPhone 4のデザインとグラフィック性能で人を惹きつけたのと同じ方法だ。アップルは、最先端になるまでデザインに磨きをかけた。しかし、また一歩先にジャンプするだろうというみんなの期待をとは裏腹に、アップルはジャンプせず、爪先立ちになってしまった。金のガチョウを動揺させたくなかったのだろう。

SEは、超えられないデザインの背中に乗って、勝利の最終ラップをアップルに走らせた機種だったと私は思う。認めたくない気持ちはわかる。この長い年月の間、1000ドルもする旗艦機種ではなく、10年近く前に作られた機種を欲しがる人はいなかった。その旗艦に関してと、どうしても言っておきたいのは、外観のデザインに妥協があるだけでなく(できるなら私はノッチ付きのスマートフォンは持ちたくない)、タッチIDや3.5ミリのヘッドホンジャックなど、多くの人が愛用している実用的な機能において時代を逆行している点だ。他の機種でも、この「ユーザー・アンフレンドリー」な対応がなされている。

だから、私はアップルに失望したけれども、意外には思わなかった。結局、私はもう何年も失望し続けているのだ。それでも私は、SEを持ち続けている。使える限り、使っていこうと考えている。なぜなら、これはアップルの最高傑作だからだ。そして、今でも最高のスマートフォンだからだ。

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(翻訳:金井哲夫)

アップルとサムスンの訴訟再び。両社のデザイン哲学や「いくら払うか」に焦点

eng-logo-2015一度は決着を見たはずのアップルとサムスンの特許侵害訴訟がカリフォルニア州サンノゼの地方裁判所に差し戻され、再審理が始まりました。2011年に訴訟が提起されて以来、実に8年目の争いとなります。

すでに「サムスンがアップルの特許を侵害している」という事実そのものは決着済みではあるものの、その後サムスンが支払う賠償額をめぐって訴訟は続いており、今回の審理も「いくら払うのが妥当か」に焦点が絞られています。

両社の訴訟合戦は、2011年にアップルがサムスンのGalaxyシリーズにつき提訴したことが始まり。2012年8月にはサムスンに約10億5千万ドルの支払いを命じる判決が下されたのち、2015年12月にサムスンは5億4800万ドルを支払うことで合意に達しました

しかし、サムスンはそのうち3億9900万ドルについては不当の訴えを提起。2016年12月に米最高裁判所は以前の判決が不公平であったと判断して地裁に差し戻しを命じ、さらに2017年10月に地裁はアップルとサムスンに対して、再審の日程を提案するよう求めていました

議論の焦点となっているのは3件のデザイン特許と、2件の実用特許。前者はiPhoneの丸みを帯びた角など外見に関わるもので、後者はページの最下部までスクロールしたときの跳ね返る演出(ラバーバンド効果)や「タッチしてズーム」する機能を指しています。

冒頭陳述では、同社デザインチームのシニアディレクターであり「ジョナサン・アイブの次に偉い人」であるリチャード・ハワース氏が初代iPhoneを設計するまでに、何百ものプロトタイプをボツにしたことを振り返り。八角形のベゼルや左右の端だけに丸みがあるものや、正面から大きな正方形に見えるものもあったとか。

ハワース氏は、アップルの設計がスケッチや模型から始まり、3Dモデルのプロトタイプに移行する……といった過程とともに「我々は顧客に届くまでに製品を導くから、自分達の考えをそのまま伝えられるのです」と述べています。

アップルの調達担当バイスプレジデントのトニー・ブレビンズ氏も、アップルの設計哲学について陳述。他社が最高の部品を見つけて製品に組み立てる「ビルディングブロック哲学」を用いているのに対して、同社は設計が先にありきで正反対であると語り、自身がiPhoneの振動モーターを縮小するために工場で2週間半を過ごした経験を振り返っています。

さらにブレビンズ氏は、サムスン製品に対するいらだちを感情的な言葉で説明。

「私達の小グループは、何年もこの製品に飽き飽きしていました。家族の時間を犠牲にし、誕生日に間に合わなかったこともある。特許を申請し、正しい手順を踏んで、労働の成果を楽しむことができたんです」

ところがサムスンの携帯電話が届けられると「あらゆる否定的な感情が湧き上がりました」としています。

総じてアップル側が「デザイン特許は製品全体に及ぶ」(だからアップルの損害額=サムスン製品の売上額)に対してサムスン側が「デザインは製品の構成要素の一つにすぎない」(よって賠償額も限定的)とする、これまでの主張が繰り返されたかたち。

アップル側が感情的でエモい表現を持ち出してきたのが興味深いところですが、それもアメリカでの法廷闘争戦術の一つかもしれません。両社の泥仕合はしばらく続く見込みですが、訴訟の中で両社のスマホ哲学が今後も語られるといった見どころはありそうです。

Engadget 日本版からの転載。