インディーズ映画制作者にAIを活用したVFXを提供するWonder Dynamicsが2.7億円を調達

最近の映画作品には必ずと言っていいほど視覚効果が必要とされているが、インディペンデントクリエイターには、最高のCGを手に入れるための資金やノウハウが不足していることが多い。VFXエンジニアのNikola Todorovic(ニコラ・トドロヴィッチ)氏と俳優のTye Sheridan(タイ・シェリダン)氏が設立したWonder Dynamics(ワンダー・ダイナミクス)は、AIを活用することで、予算の少ない映画制作者でもそうしたプロセスを利用できるようにすることを目指している。このたび同社が、その実現のために250万ドル(約2億7000万円)を調達した。

同社の設立は、2017年にシェリダン氏とトドロヴィッチ氏がRodrigo Garcia(ロドリゴ・ガルシア)監督の映画「Last Days in the Desert」の撮影現場で出会ったことがきっかけとなった。彼らは、大規模なスタジオ映画で利用されていたツールを、誰でも使えるようにすることにチャンスがあると考えたようだ。

Wonder Dynamicsは、そのツールが正確には何をするものなのかについては、とても口が堅い。Deadline(デッドライン)ニュースでMike Fleming Jr(マイク・フレミング・ジュニア)氏は、その限定的なデモを見た上で「ほどほどの予算で世界を創造する分野の、どのような部分で価値を発揮できるかがわかります。対象のプロセスを、すばやくしかも従来のコスト構造の何分の1かで、行うことができるようになるでしょう」と語った。だがそのコメントを読んでも何かが詳しくわかったよう気はあまりしない。

シェリダン氏とトドロヴィッチ氏はWallace Pro(ウォーレス・プロ)という名のこのシステムについて、仕上げや特定の効果ではなく、ある種のVFXの煩雑な作業を代行してくれるものだと説明した(彼らは私が送った質問に2人で答えてくれた)。

「私たちは、CGキャラクターやデジタルワールドを含むコンテンツのプロダクションとポストプロダクションの両方のプロセスを、大幅に高速化するAIプラットフォームを構築しています。プラットフォームの目的は、プロセスの『客観的』な部分を自動化して、アーティストに創造的な『主観的』作業を任せることで、こうしたプロダクションに関連するコストを削減することです」と彼らは語っている。「こうすることで、予算を上回るビジョンを持つ映像制作者に、より多くの機会を与え、力を与えることができればと考えています。多くは説明しませんが、このシステムはアーティストの具体的なニーズに応じて、映画制作の3つのステージ(プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダクション)すべてに適用することができます」。

こうしたことから、彼らのシステムはワークフローを改善するものだと思われる。それを使うことで広く使われているエフェクトを実現するための時間が短縮され、そのために必要な費用が削減されるのだ。はっきりさせておきたいのは、これはWonder Dynamicsが別途開発中の、映画プロダクションの過程でバーチャル・インタラクティブ・キャラクターを作成するための、特定目的の製品(間違いなく同社の初期アプリケーションではあるが)とは違うものだということだ。

この技術は小規模なテストが行われているが、2021年の後半にはプロダクションに投入できる機能を備える予定だ。「この技術を一般に公開する前に、この技術を使用する最初の映画制作者を厳選して、高いレベルの映画が制作できるかどうかを確認したいのです」と彼らはいう。第一印象は大切だからだ。

今回の250万ドル(約2億7000万円)のシードラウンドにはFounders Fund、Cyan Banister、Realize Tech Fund、Capital Factory、MaC Venture Capital、Robert Schwab(ロバート・シュワブ)氏が参加した。シェリダン氏とトドロヴィッチ氏は「テクノロジーと映画の交差点にいる私たちは、この2つの産業が将来的にどれだけお互いに依存するかを理解している投資パートナーを得たいと思っていました」と語る。「Founders Fundと並んで、MaC Venture CapitalやRealize Tech Fundにも協力してもらえたことは幸運でした。両ファンドのおかげで、シリコンバレーとハリウッドのベテランを組み合わせたユニークなファンドを得ることができました」。

ご想像のとおり、Wonder Dynamicsはこの資金を、エンジニアリングとVFXチームの規模を拡大し、製品のさらなる開発と拡張を行う……それがどういう製品であるにせよ。

まあ彼らのアドバイザリーボードがきちんと機能していれば、間違いを犯すことは難しいだろう。彼らは「私たちは、非常に幸運なことに、AIと映画の両方の分野から最も優秀な人材を迎えることができました」と彼らは語っているが、それは決して誇張ではない。現在のアドバイザリーボードに含まれているのは、Steven Spielberg(スティーブン・スピルバーグ)氏とJoe Russo (ジョー・ルッソ)氏(映画制作とイノベーションに関する明らかな天才)、UCバークレー校ならびにGoogleのAngjoo Kanazawa(アンジュ・カナザワ)氏とMITのAntonio Torralba(アントニオ・トラルバ)氏(ロボットと自律性に関する長年のAI研究者)、そして「会社をどのように前進させるかを考えているときに、豊富な知識を提供してくれる」映画界や金融界の数多くの人たちだ。

AIは多くのハイテク企業や企業の内部に深く組み込まれて、その業界ではしっかりとした収益源となっているが、クリエイター主導の映画やテレビの世界では、まだ縁遠い概念のままだ。それでも、「The Mandalorian(マンダロリアン)」の撮影に使用されたILMのStageCraft(ステージクラフト)のようなハイブリッド制作技術は、従来の3Dモデリングやゲーム制作に使用されていた技術が、映画制作にも十分適用できることを示している、それどころか場合によってはライブ配信さえも可能なのだ。NVIDIA(エヌビディア)やAdobe(アドビ)といった先駆者たちが示しているように、AIはますます世界の一部になってきていて、それが映画に取り込まれるのは必然のように思える。たとえそれが正確にはどのような形になるかを今いうのは難しいとしても。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:映画VFX動画撮影 / 動画編集Wonder Dynamics資金調達エンターテインメント

画像クレジット:Wonder Dynamics

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

ネットフリックスとソニー・ピクチャーズが映画の公開後独占配信契約を発表、2022年以降作品対象

ネットフリックスとソニー・ピクチャーズが映画の公開後独占配信契約を発表、2022年以降作品対象

NurPhoto via Getty Images

Netflixがソニー・ピクチャーズの劇場公開後作品に関する独占配信権を獲得したことを明らかにしました。これにより、Netflixは2022年以降の作品について公開終了後18か月間は独占で配信できることになります。この権利は複数の配信サービスが争っていましたが4年間で10億ドル(約1093億円)のオファーをしたNetflixの手に渡ったとのこと。

まだまだ長引くパンデミックの影響を考えると、ソニーの映画が公開終了後どれぐらいの期間をおいてNetflixで観られるようになるのかはまだはっきりとはしていません。それでも年間数十のメジャーな作品が公開後ソフト発売された後とはいえ、単一のストリーミングサービスでのみ配信されるとなれば、Netflixにとって潜在的顧客にさらなる加入の動機を与える可能性はありそうです。Netflixはマーベル作品やピクサー作品がDisney+に引き戻され『フレンズ』や『The Office』など人気ドラマもHBOやPeacockに奪われてコンテンツ力の弱体化が株主に懸念されていました。

この契約では、ソニーが劇場をスルーしてダイレクトに配信に回すことを決めた作品についても独占権が与えられます。知られた例としては、トム・ハンクスの主演・監督作『グレイハウンド』がApple TV+で独占配信された例があります。現在は上映を再開する劇場も増えたこともあり、作品が行き場をなくす可能性は減っているかもしれないものの、それでも6月にNetflixで配信される『Fatherhood』のように劇場をスルーし配信で初公開になる事例は、今後も出てくるでしょう。

また、独自のストリーミングサービスを持たないソニーにとっても、この契約は公開終了後の作品の次の収益源としてNetflixの集金能力を活用する良い契約と言えそうです。

ちなみにUniversalやFoxもまた、現在のHBOなどとの独占契約終了時期が近づいており、劇場公開終了作品の行先となるストリーミングサービスを検討しているとされています。

(Source:Sony PicturesEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:映画(用語)エンターテインメント(用語)Sony Pictures Entertainment(企業)Netflix / ネットフリックス(企業・サービス)

ネットフリックスが東宝スタジオの2棟を複数年貸借、国内実写作品の制作能力を強化

ネットフリックスが東宝スタジオの2棟を複数年貸借、国内実写作品の制作能力を強化

Netflix / TOHO

Netflixは日本を代表する撮影所のひとつ『東宝スタジオ』と、ステージ2棟および関連施設を2021年より複数年にわたって貸借する契約を結んだことを明らかにしました。

世田谷の東宝スタジオは1932年の竣工から今日に至るまで、『ゴジラ』シリーズをはじめ多数の映画が撮影された日本最大級のスタジオ。約2万4000坪の敷地に撮影ステージ10棟を含む関連施設を備えます。

うちネトフリが利用するのは、

・No.7ステージ(957㎡)
国内最大級のキャットウォークまでの高さ約11メートルを誇り、広さは約300坪と東宝スタジオの中で最も体積が大きいステージ。
・No.10ステージ(658㎡)
有効面積200坪の「使いやすさ」を追求した最新鋭の撮影用ステージ。
・アクターズセンター 2室
・プロダクションセンター 1室

ネットフリックスが東宝スタジオの2棟を複数年貸借、国内実写作品の制作能力を強化

TOHO

TOHOスタジオ株式会社 代表取締役社長 島田充 氏コメント

「東宝スタジオは1932年の開業から今日まで、世界に開かれたスタジオとして、映画・配信コンテンツ・CMなどのあらゆる才能を応援して参りました。今回このような連携を通して、Netflix様に東宝スタジオの仲間に加わって頂けることを心より歓迎します。これからも私たちは、世界中のお客様に心揺さぶるエンタテインメントをお届けします。」

Netflix プロダクション・マネジメント部門 小沢禎二 氏コメント

「東宝スタジオ様の世界水準のステージを舞台に生み出される作品を、世界中のメンバーにお届けできることを大変嬉しく思います。今回の取り組みは、数年前、Netflixがグローバルスタジオとしての機能を強化しはじめた頃には想像し難かった夢の実現であり、国内での作品づくりを大きく前進させるものだと感じています。昨年から先の見えづらい状況が続いておりますが、今回の取り組みが弊社作品の関係者及び広く映像業界にさらなる活気をもたらすものと期待します。」

ネトフリは世界2億人を超える有料会員数を背景に、国内アニメスタジオとのパートナーシップ締結など、世界各国で映像制作の環境を大きく変えてきました。日本発の実写ネトフリ作品はすでに多数が作られていますが、ネトフリが日本国内でみずから制作スタジオを貸借し長期的な拠点を設けるのは今回が初めてです。

About Netflix – Netflix、東宝スタジオを舞台に、国内発の実写作品の更なる拡充に前進

(Source:Netflix東宝Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:映画(用語)エンターテインメント(用語)東宝(企業)Netflix / ネットフリックス(企業・サービス)日本(国・地域)

テレビ、映画、CM制作会社の給与支払いのDXを進める「Wrapbook」がシリーズAで29.4億円調達

Wrapbook(ラップブック)はテレビ、映画、CM制作会社の給与支払いを簡単にするスタートアップだ。このほどシリーズAで2700万ドル(約29億4000万円)調達した。ラウンドにはテック、エンターテインメント双方の世界から著名人が参加した。

リードしたのはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)でEqual VenturesとUncork Capitalも参加した他、エンターテインメント業界からDreamWorksとQuibiのファウンダー / 共同ファウンダーであるJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)氏率いる投資・持ち株会社WndrCoとCAAの共同ファウンダーであるMichael Ovitz(マイケル・オーヴィッツ)氏も出資した。

「今こそ制作会社の会計業務を21世紀にするときです」とカッツェンバーグ氏が声明で語った。「制作会社のますます複雑化する研修、給与、キャスト・クルー確保などの業務が新型コロナでさらに悪化する中、改善するためにはITソリューションが必要です。私はWrapbookが解決してくれると信じています」。

Wrapbookの共同ファウンダーでCEOのAli Javid(アリ・ジャビッド)氏は、エンターテインメントの給与支払いはほとんどが紙ベースで旧態依然としていて、1年に最大30回もプロジェクト間を移動するキャストやクルーを追跡するのは特に大変だと説明した。Wrapbookはそのプロセスをデジタル化によって簡略化する。必要な書類や署名は制作開始時に電子的に集め、給与処理自体を代行して支払い状況を追跡するダッシュボードを作り、必要な保険を簡単にかけられるようにする。

Wrapbookの共同ファウンダーであるキャメロン・ウッドワード氏、アリ・ジャビッド氏、Hesham El-Nahhas(ヘシャム・エル・ナハス)氏、Naysawn Naji(ネイソーン・ナジ)氏

スタートアップは2018年に設立されたが、ジャビッド氏によるとパンデミック中に制作が再開すると需要が劇的に増え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は業界のカルチャーを「根底から」覆し、制作会社に「おい、これを自宅でできる早くて簡単な方法はないのか、やってみようじゃないか」と言わしめた。

ジャビッド氏はWrapbookプラットフォームについて「業界で急速に成長しているバーティカルフィンテックソリューションで、我々は非常によく理解しているが考えてみたことのある人は多くない分野」だと説明した。実際、会社の売上は2020年に7倍に増えた。

また、Wrapbookの直接顧客は制作会社だが、共同ファウンダーでCMOのCameron Woodward(キャメロン・ウッドワード)氏(以前は映画製作保険とコマーシャル制作の仕事をしていた)は、同社プラットフォーム経由で給与を受け取っているキャストやスタッフのために良い経験を作り出すことにも力をいれていると語った。Wrapbookプロフィールを使って複数のプロダクションから支払いを受けている人も増えている(現在12%)。

画像クレジット:Wrapbook

スタートアップは以前シード資金360万ドル(約3億9000万円)を調達している。将来についてジャビッド氏とウッドワード氏は、Wrapbookのソリューションはいずれプロジェクト・ベースの他業界にも採用されるだろう、と語った。しかし現在は、エンターテインメント業界だけで十分成長を続ける余地があると見ている。現在この業界で年間2000億ドル(約21兆7500億円)の支払いが行われている、と彼らは推測している。

「まずエンターテインメント業界で顧客から依頼されたことを中心とした業務とものづくりに注力していくつもりです」とジャビッド氏は語った。「そのために、次の1年間で100人を新規雇用する計画です」。

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カテゴリー:その他
タグ:Wrapbook資金調達エンターテインメントDX

画像クレジット:Wrapbook

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpotifyとChernin Entertainmentがポッドキャストのテレビ番組化・映画化に向け優先交渉権契約を締結

まもなくより多くのSpotify(スポティファイ)ポッドキャストがテレビ番組化・映画化されることになるだろう。米国時間9月24日、Spotifyは、ストリーミング音楽のプロバイダーであり、映画やテレビ番組の制作会社でもあるChernin Entertainment(チャーニンエンターテイメント)と複数年契約を結んだことを発表した。この契約により、合計数千時間のコンテンツに相当する250を超すオリジナルポッドキャストシリーズを収めたライブラリから、Chernin Entertainmentが映画化・テレビ番組化に相応しいコンテンツを特定できるようになる。

両社はすでに、Spotifyが所有するGimlet Media(ギムレットメディア)を通し、連続殺人犯Edward Wayne Edwards(エドワード・ウェイン・エドワーズ)に関するポッドキャストシリーズ「The Clearing」の映像化に向けた取り組みをPineapple Street Media(パイナップルストリートメディア)と共に共同で進めていた。これらの取り組みは今後も引き続き行われるが、今回の契約によりChernin Entertainmentは、世界中から寄せられた数多くのポッドキャストを収めたSpotifyのライブラリにアクセスできるようになる。

Image Credits: Spotify screenshot via TechCrunch

Chernin Entertainmentは現在、「フォードvsフェラーリ」 、「The Planet of the Apes/猿の惑星」トリロジー、「グレイテスト・ショーマン」、「ドリーム」などの映画のほか、「New Girl ~ ダサかわ女子と三銃士」やApple TV+の 「See」、「真相 ~Truth Be Told~」といったテレビ番組の制作でも知られている。同社は、20th Century Fox(20世紀フォックス)との優先交渉権契約を締結することを望んでいたものの、Disney(ディズニー)がFoxの長編映画部門を買収したためこれをなし得なかったが、今春、Netflix(ネットフリックス)との優先交渉権契約を締結した

こうした契約や業界での他の変化により、Chernin Entertainmentは映画、テレビ、その他のデジタルビデオ化が可能な新たなIP(知的財産)を求め、歩み出すこととなった。

一方、ポッドキャストの成長により、オーディオプログラミングは映画やテレビといった他のメディアへの置き換えが可能なオリジナルコンテンツの有望なソースとなっている。このポッドキャスト市場は、SpotifyがGimletThe Ringer(ザ・リンガー)といったポッドキャスト制作会社や、より多くの人がクリエイターになることを可能にするAnchor(アンカー)といったポッドキャスト作成ツールの買収を通し、多額の投資を行ってきた市場である。

「オーディオは、エンターテイメントビジネスにおいて最も急成長中のメディアです。Spotifyは今日、数千時間にもおよぶ250以上のオリジナルコンテンツを収めた、世界最大の手つかずのIPライブラリの1つを所有しています。そして、このライブラリには日々作品が追加され続けているのです」とChernin Entertainment会長兼CEOのPeter Chernin(ピーター・チャーニン)氏は語る。「このコンテンツの宝庫に加え、さらに新たなストーリーが加速度的に追加されており、これにより、魅力的なストーリーや知的財産をスクリーンコンテンツへと置き換える巨大な機会がもたらされます」

SpotifyがTechCrunchに語ったところによると、この契約には、いくつのポッドキャストを映像化するかについての明確な数の取り決めは含まれていないが、Spotifyではかなりの数になると見込んでいる。収益配分の詳細など、契約の具体的条件も公開されていないが、この契約では、Chernin Entertainmentが映像化を見送ったプログラムについては、Spotifyが他の制作会社と映像化を進めることを禁止する条件は含まれていない。またマーケティングやプロモーションへの取り組みについても具体的な取り決めはなされておらず、Spotifyによると、これらについては、プロジェクトごとに処理することになるという。

Spotifyの250にのぼるオリジナル番組を収めたライブラリ、そして数週間後、数カ月後に継続的にリリースされるコンテンツそのものが、依然としてこの契約の中心である。しかし、Spotifyによると、両社がそのグループの枠を超え、映像化に共に取り組むシナリオもあるとのことである。

その目的は、どういった種類のプログラムが映画やテレビ番組へうまく置き換えられるかを発見することである。Spotifyはこの点について、Spotifyの多彩なコンテンツ、データ分析能力、クリエイターからのアクセスが同社に有利に働くと考えていると語った。

Spotifyのオリジナルポッドキャストライブラリには現在、さまざまなジャンルの人気番組が収められおり、これがこの契約の一番の資産である。さらにSpotifyは、先に開発した分析専用ツールにより、その番組の視聴状況を確認するデータを活用することができるようになる。

例えば、Spotifyは現在Spotify for Podcasters(スポティファイ・フォー・ポッドキャスターズ)を通して、ポッドキャスターが自らの番組の視聴状況を確認したり、他の匿名化された視聴者データを追跡できるようにしている。今後、同社はこのデータを使用して、映像化が成功しそうなものを特定できるようになる。Spotifyは複数の制作会社を所有しているため、より大規模な映像化に適したビジョンを持つクリエイターを特定する作業を支援することも可能だ。

Spotifyのポッドキャストコンテンツが映画化またはテレビ番組化されるのはこれが初めてではない。同社は現在Amazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)向けの「ホームカミング」の映像化や、HBO Max(HBOマックス)向けの「The Two Princes」、Prime Video向けの「The Horror of Dolores Roach」といった今後のプロジェクトを含め、様々な制作段階のプロジェクトを12件抱えている。

SpotifyとChernin Entertainmentは、本日発表された契約を契機として進められることになる最初のプロジェクトについて何ら発表を行ってはいないが、通常の企画と制作のタイムラインを踏まえると、そうしたコンテンツがお目見えするのは、最も早くて2021年になるだろう。

「Spotifyでは、オーディオの驚異的な成長が世界で最も才能に溢れたクリエイターたちを今後も魅了し、ポッドキャストがオリジナルIPの最高の到達点になることを確信しています。当社が引き続きコンテンツに対する志を拡大させて行く中、チャーニン氏や彼の優秀なチームと手を組むこととになったことに期待を膨らませています。当社がこれらのストーリーをさまざまなメディアを通し世界中の視聴者に配信して行くにあたり、Chernin Entertainmentは完璧なパートナーと言えます。私たちは、ソース素材としてのポッドキャスト新時代の到来を共に告げようとしています」とSpotifyのコンテンツおよび広告事業責任者のDawn Ostroff(ドーン・オストロフ)氏は語った。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Spotify エンターテインメント ポッドキャスト

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(翻訳:Dragonfly)