サンフランシスコ名物フードトラックフェス「Off the Grid」、山火事、パンデミックを乗り越えて地元の食文化維持にも貢献

サンフランシスコでグルメといえば「Off the Grid(オフ・ザ・グリッド)」だ。2010年にMatt Cohen(マット・コーエン)氏が設立した同名のイベント会社は、起業を夢見るベンダーのフードトラックを中心に、身近で楽しめるポップアップフェスティバルを計画。食と食を楽しむ人々について独創的なアイデアを持つ、野心的で多様な未来のシェフに道を開くためのこのイベントは、フードトラックムーブメントの先駆けとなった。

サンフランシスコのフォートメイソンで開催される「Off the Grid」のフードフェスティバル(画像クレジット:Off the Grid)

フェスティバルは年々人気が高まり(筆者も何度か立ち寄ったが、長蛇の列ができていた)、Off the Grid自体もイベント向けのケータリングサービスをますます拡大してきた。コーエン氏は「食べ物はどんな時でも心の支えになるという信念に基づいてキャリアを築いてきた」と話す。

古き良き時代の話だろうか?

同社に変化の兆しが見え始めたのは、ソノマやナパで発生したような山火事がカリフォルニアを襲った2017年のことだった。第一線で活躍する消防士たちは、時には署から離れたところでの消火活動も余儀なくされ、MRE(米軍が採用している配給品)のようなものしか口にできないことも多かった。

コーエン氏とチームは、ここにチャンスを見出した。「長年にわたり、緊急時の配給品は、カロリーを採るためだけのものと考えられ、必ずしも地元の食品事業者にとって利益の出るものではありませんでした」とコーエン氏。配給品は総じて当たり障りのない味で、通常は大量に州外に注文される。点と点をつなげるように、Off the Gridが物流を提供して、地元のレストラン経営者が作った料理を最前線に届けることはできないだろうか?

Off the Gridは2017年の山火事をきっかけに、消防隊や被災者の支援に乗り出す。同年、Off the Gridはレストラン経営者と協力して推定2万人に食事を提供した。「緊急対応における市場の状況を知ることができた」とコーエン氏は話す。

2020年に新型コロナウイルス感染症によるパンデミックがカリフォルニアをはじめとする世界各地で発生したことにより、Off the Gridの試みは劇的に加速する。突如として、レストランと地域社会をつなげる手段がデリバリーだけになり、もはや火災が発生している山麓だけではなく、常にあらゆる場所が最前線となったのだ。

2020年のパンデミックや山火事のピーク時に、パートナーのレストランと協力して、最前線の労働者や被災者に食事を届ける事業を拡大したOff the Grid(画像クレジット:Off the Grid)

Off the Gridは、悲惨な状況にある人々に心の安らぎを提供する機会を得て、事業を方向転換する。コーエン氏は次のように話す。「食べられるものさえあればラッキーであり、非常時の食事は美味しくないと考えられているかもしれません」「でも、つらい状況であればあるほど、美味しい食事が心の支えになるのです」。パンデミックの期間中、Off the Gridは、一時収容施設に滞在する人から自宅待機の免疫力の低い人まで、130万食の食事を提供し「常に喜んでもらえるように、選択肢を増やす」ことにも成功した。

このモデルは、美味しい食事を提供するだけでなく、Off the Gridが長年のプログラムで育ててきた地元の食文化の維持にも貢献している。コーエン氏は、カリフォルニアのみならず世界各地で気候変動が深刻化する中、こうした地域とのつながりは、レジリエンス(回復力)の高いコミュニティを構築するための重要なツールであると考えている。

2020年の急激な成長により、同社は迅速な事業拡大を余儀なくされた。食品の安全性や健康に関する規制は郡によって異なるので、Off the Gridはベイエリアをはじめとするカリフォルニア州全域に食事を届けるにあたり、事務や物流を処理するためのスケーラブルなプロセスを開発する必要があった。この技術は、設立から11年目を迎えたOff the Gridの次のビジネスの基盤となっている。

「フードビジネスにはフードビジネスだけのユニークな側面がたくさんあります。ライセンスや許可、保険といったあまりおもしろくないものも、運営には必要です」とコーエン氏は話す。同社のロジスティックスはますます体系化され、2021年は同社にとってさらに成長できる年になるだろう。

Off the GridのCEOかつ設立者マット・コーエン氏(画像クレジット:Off the Grid)

コーエン氏は次のように話す。「州と赤十字社と協力してカリフォルニア州の中でも比較的火災の危険性が高い39の郡を特定し、200店のレストランをリスト化しました。火災が発生した場合にはこれらのレストランにアクセスして活動を開始します」。現在、同社の約半分はこの緊急対応プログラムに特化している。

とはいえ、フードフェスティバルがなくなるわけではない。ノースビーチのコイトタワーの近くにあるLevi’s Plaza(リーバイス・プラザ)など、小規模な会場ではすでに再開され、十分に安全になれば大規模なフェスティバルも再開するという。しかし、緊急事態への対応は、ミッションを重視するこの会社にとって、新たな、かつ永続的な使命である。「ニーズがある限り、確実に継続していきます」。

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

iPhoneやApple Watchでベイエリアの公共交通機関支払いが可能に

ベイエリアの人々に朗報だ。Apple PayがClipperカードに対応した。

つまり、iPhoneやApple Watchを使ってサンフランシスコ・ベイエリア高速鉄道やMuni、Caltrainやフェリーの料金を支払えるようになる。あるいは(ほとんどの)他の交通関連の支払いにも、プラスチック製のClipperカードを使うことができる。

ClipperのページにはApple Payの設定方法が説明されている。

ただし、簡単だが重要な注意点がいくつかある。

  • 既存のClipperカードをApple Walletに追加すると、そのカードから料金が支払われる。Clipperによると、カードを追加した時点で「プラスチック製カードは無効化される」ため、物理的なバックアップカードとしては機能しないようだ。
  • しかし、プラスチックカードを使い続けたいと思う人もいるだろう。Clipperによると、ベイエリアの自転車シェアリングの利用者やRTC割引カードを利用している人は、無効化された後もプラスチックカードを保管しておく必要がある。
  • Clipperは以前、Google Pay(Android)のサポートを「2021年春」に開始することを認めたが、米国時間4月15日からはApple Payのみに対応するようだ。

2021年2月にこの機能の実装が確認されたときに述べたように、ClipperはAppleの「Express Transit」機能に対応している。つまりスマートフォンのPINを入力したり、Face IDを使用せずに、デジタルのClipperカードをタップして支払うことができる。一部の新しいiPhoneでは、バッテリーが切れても数時間はClipperカードを使い続けることができる。いざというときにはとても便利だが、定期的に頼りたいものではないだろう。

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タグ:AppleApple PayClipperサンフランシスコ

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(文:Greg Kumparak、翻訳:塚本直樹 / Twitter

新しいコンセプトのロボティクスに挑むRapid Roboticsが13.2億円調達

サンフランシスコのロボティクスのスタートアップであるRapid RoboticsはこのほどシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億2000万円)の資金を調達したことを発表した。ロボティクスにおける同社の新しいコンセプトは2020年からTechCrunchでも報じてきたが、今回のラウンドはNEAがリードし、これまえの資金調達総額は1750万ドル(約19億2000万円)となった。2020年11月に発表されたシードラウンドは最近完了したばかりだ。Greycroft、Bee Partners、468 Capitalなどの既存投資家が今回のシリーズAにも参加している。

我々は繰り返し新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックがロボティクス分野に大きな影響を与えていることを指摘してきた。パンデミックにより「社会生活の維持に必須の要員」に認定されなかった多数の労働者の出社が不可能になったことで、さまざまな産業でオートメーションへの関心が強く掻き立てられたことは間違いない。製造業では多くの職がリモートワークに適さない。

Rapidによれば、そのテクノロジーは過去1年間に極めて広範囲な製造業で5000万点の部品生産を行ってきたという。トランプ大統領同様、バイデン大統領も製造業の雇用を米国に取り戻すための戦略を発表し始めている。どのような野心的な計画も結局の人間の職の創出とオートメーションの間で適切なバランスを取る必要があることは間違いない。

同社もロボットと人間のオペレーターの関係という長年の課題についてCEOのJordan Kretchmer(ジョーダン・クレッチマー)氏はプレスリリースに「簡単に要約すれば、この問題を解決しなければ米国の製造業はグローバル市場で競争力を持ち得ない」と書いている。

Rapidの最大の付加価値は「使いやすさ」だ。この会社はその社名のとおり、購入後だれでも即座に動かせるようなシステムを提供している。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Rapid Roboticsサンフランシスコ資金調達製造業

画像クレジット:Rapid Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:滑川海彦@Facebook