Yahooに致命傷を与えた、プラットフォームの交代

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2000年、Yahooの価値は1250億ドルだった。2008年、Microsoftが提案した440億ドルでのバイアウトを拒否した。そして、本日Verizonに48億3000万ドルでの身売りに至った。ここでの学びは、前回のコンピューター・プラットフォームで勝利を収めても次のプラットフォームが到来する時、それに対応できないのなら会社は売り払った方が良いかもしれないということだ。

悪役にピアノが落ちてくるアニメのように、Yahooの予期していなかった「モバイル」が同社に降りかかった。Yahooはウェブポータルだった。ユーザーは数多ある多様なウェブサイトを検索したり、ブラウズしたりすることができた。しかし、2007年にiPhoneがローンチしたのと同時にモバイル時代がやってきて、ユーザーの行動が変わった。1つのオムニサイトから検索やブラウズをしてインターネットを巡るのではなく、用途ごとに専用のアプリをダウンロードして使うようになった。

それに加え、コンテンツ消費のパターンも変わった。デスクトップのコンピューターで拡張的なコンテンツやニュースサイトを長時間見るのではなく、生活の中のちょっとしたダウンタイムを埋めるために、ユーザーは細切れで楽しめるモバイルエンターテイメントを求めるようになった。

Yahooはそれらに対応できるよう作られたものではなかった。そして、順応することにも戸惑っていた。Yahoo SpotrsやYahoo Financeといったいくつかのプロダクトで食いしのげたのだ。しかし、中核となる資産は別の環境で生き抜くために進化してしまった。モバイル版のデザインはあったが、機能は乏しかった。人々の利用率はこぼれ落ち、Yahooの広告在庫は減少しただけでなく、ソーシャルネットワークによる広告ターゲットのための情報を得る機会も失った。

そして、Yahooは石のように海底へと沈んでいった。

Yahoo home page in 2008

この船を助けるためには、例えば積極的にモバイル会社を買収するなど、もっと早い段階から決定的な行動を取るべきだった。同社は危険な状況にあり、Yahooは社運を賭けた決断をしなければならなかった。しかし、その代わり価格は高いが、ウェブ・ファーストの小さなスタートアップであるFlickrやTumblrを買収した。それらの会社の基盤を正しい方向へと向かわせることに力を割いた。けれども、それらはあまりに小さく、あまりに間違っていて、あまりに遅かった。

より良い判断はなんだったのかを見るために、例えばFacebookを見てみよう。彼らの中核プロダクトはニュースフィードであり、ユーザーが投稿する短いステータスのアップデートや写真で構成される。彼らの初期のモバイルアプリは良いものではなく、ウォール街も不安を持っていたが、Facebookはモバイルに適応することに意欲的だった。

Facebook's app circa 2009 when it misunderstood mobile

まだモバイルを正しく理解していない2009年頃のFacebookアプリ

「ウェブサイトのように同時に色んなことをやる」という考えで作った一覧デザインを捨て、デフォルト画面をフィードにして、素早く使えるアプリに変更した時、ユーザーの利用が爆発的に増えた。彼らはInstagramやWhatsAppの買収に多額の資金を使ったが、それらの企業はモバイルで利用率が増えている機能を中心に置くモバイル・ファーストのプロダクトを手がけていた。

Yahooの終焉はMarissa Mayerの責任ではないだろう。Yahooが栄光を取り戻すには、先見の明、スキルも運も必要だが、最も必要だったのは、モバイルへの方向性をもっと早い段階から進めるためのタイムマシーンだ。もしかするとVerizonは、YahooのアドテクとAOLを組み合わせ、残骸から利益を絞り出す方法を見つけることができるかもしれない(情報開示:VerizonはTechCrunchも所有している)。

ただ重要なポイントは、テックチームはプラットフォームの交代に対して準備することに危機感を持たなければならないということだ。会社を殺すのは、競合他社であることは少ない。変化を目前に固まってしまうことが会社の終焉を招く。そして今、水平線には拡張現実、仮想現実、音声、人口知能といったものが夜明けを待っている。

気鋭のCEOは準備を整えている。GoogleはDeepMindのAIを買収し、社内のプロダクトに行き渡らせている。FacebookはOculusを買収し、VRとARに参入を目指す。Uberは自動運転車のラボを構えた。そしてAmazonはEchoの音声コントロールにリソースを投下している。もしこれらの戦略が結実すれば、会社がディスラプトされることを避けることができるだろう。

地殻変動が起きる中で会社が断層線の上を走り続けるなら、近いうちに揺れに耐えられなくなって地面に叩きつけられるだろう。

何十年も生き抜く巨大テクノロジー企業は、地面に飲み込まれるのを待っていたりはしない。彼らは、全面的なプロダクト変更、大胆な買収、落ち着かない状況でも必要なことを実行する意志を持ち、未来のある方向にビジネスの配置替えを行っている。復活することより、ピボットする方が簡単なのだから。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

ウェブサイト構築プラットフォームBrandcastが1390万ドルを調達

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マーケッターやデザイナーが、コードを書くことなくモバイル対応ウェブサイトを構築できるようにするスタートアップBrandcastは、シリーズBで1390万ドルを調達したことを本日発表した

このラウンドを主導したのは、Shasta Venturesであり、SalesforceのCEOであるMarc Benioff氏と、Correlation Venturesも参加した(Brandcastの共同設立者/CEOのHayes Metzger氏はかつてSalesforceに努めていた経緯があり、Benioff氏はBrandcraftにすでに180万ドルを投資している)。

このようなプラットフォームは、多数のウェブサイトをローンチし、維持するニーズを抱えたブランドにとって特に重宝するものとなる(Forresterによれば、企業は平均で268個を超える顧客向けウェブサイトを保有している)。 Brandcraftを利用している組織としては、Lowe’s、Colliers、New York Fashion Weekなどの名が挙げられている。

これにより、Brandcastの合計調達額は1940万ドルとなった。

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(翻訳:Nakabayashi)

取引先開拓から入金管理まで、農家向けワンストップ・サービス「SEASONS!」がローンチ

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農家向けITサービスと聞くと、農作物を効率化に生産するために土壌の栄養や水分量を検知するIoT端末などを思い浮かべてしまう。けれども生産農家と言えども、ビジネスを行っているのであり、ビジネスには交渉や事務処理がつきものだ。プラネット・テーブルが今回新たにローンチしたサービス「SEASONS!(シーズンズ!)」は農家のそういった手間の効率化を図る。また、生産農家と購入者が直接出会えるプラットフォームという側面を併せ持ち、顧客開拓から交渉、受発注、入金確認まで行えるワンストップサービスを目指している。今回、プラネット・テーブルの代表取締役菊池紳氏に「SEASONS!」のコンセプトについて聞いた。

「SEASONS!」はプラネット・テーブルにとって3つ目のプロダクトとなる。2015年6月に食に関するQ&Aサービス「FoodQ」をリリースし、2015年8月からは生産農家が都内の飲食店や食品企業と直接取引できるプラットフォーム「SEND(センド)」を展開している。SENDではオペレーションと配送を担い、生産農家のこだわりの作物や市場にあまり出回らない食材を都内の飲食店に届けている。東京都心部でサービスを展開し、現在およそ580軒のレストランがSENDを利用しているという。2016年1月にはプラネット・テーブルは1億円の資金調達を実施し、サービス拡大を行うと発表していた。

SENDを展開する中で生産農家の抱える課題が分かってきたことが「SEASONS!」を開発するきっかけになったと菊池氏は話す。生産農家の仕事は農作物を育てるだけではない。生産農家は作付け前から取引先との交渉や受注のために動いていて、出荷時期になったら各取引先へと納品し、請求書を発行して、入金を確認する作業をこなさなくてはならない。そして、生産農家は大抵30件から50件ほど取引先を抱えているという。事務作業が多く発生し、それが生産農家の負担になっていると菊池氏は言う。

また、こういった事務処理は煩雑になりがちと菊池氏は言う。例えば、連絡には電話、ファックス、メールを使ったり、出荷スケジュールを管理するにはホワイドボード、手書きメモ、エクセルを使っていたりする。最近ではクラウドサービスが発達し、Facebook Messengerで連絡したり、決済にはそれに特化したクラウドサービスを利用している生産農家も多くなっていると菊池氏は言う。しかし、それでも各サービス間のデータ連携が簡単にできなかったり、作業が複雑で他の人に仕事を引き継いだりするのが難しいという問題があった。

プラネット・テーブルはそういった課題を解決するため、事務作業を効率化するプラットフォーム「SEASONS!」を開発した。エクセルとMessengerが使えるITリテラシーがあれば、「SEASONS!」も使うことができると菊池氏は話す。ただ、農家の後継ぎや脱サラして農業をしている人などは事務経験がある人も多く、ITリテラシーはそんなに問題にならないそうだ。feature

「SEASONS!」の特徴は、作業の効率化だけでなく「生産者と購入者の出会いの場」になることだ。生産者は、自分のプロフィールに何の食材をいつの時期に生産しているかといった情報を掲載する。それを見て購入者は発注や商談を申し込むことができる。事前に出荷スケジュールを提示していることで、作付け前から商談を行うことが可能となる。これは生産者と購入者の双方にとって利便性があると菊池氏は説明する。生産者は、作付け前から生産と出荷の計画が立てやすくなり、買い手が見つからないという心配を減らすことができる。購入者側にとっても、生産農家の出荷スケジュールをもとに複数の生産農家と取引することで、安定した仕入れが可能となる。例えば、1年を通じて安定してほうれん草を仕入れるためには、春に出荷する農家、夏に出荷する農家といった具合に時期別に生産農家と取引する必要がある。「SEASONS!」では各農家の出荷スケジュールを可視化し、生産者と購入者のマッチングを促進したい考えだ。

また、これまで生産農家にはどういった食材が市場で求められているかといった情報が入ってこなかったと菊池氏は言う。生産農家と購入者が直接つながることで、需要をヒアリングできるようになる。また、「SEASONS!」の掲示版機能では、購入者がこういった食材が欲しいというリクエストを出すことができ、生産者はそれを見て購入者に提案することもできる。このように需要が見えることで、生産農家はより需要に見合う食材を生産し、売上を伸ばすことにつなげることができるだろうと菊池氏は言う。

生産者と購入はどちらも無料で「SEASONS!」に登録でき、「SEASONS!」は取引毎に手数料を得るモデルで運営するという。本日ローンチした「SEASONS!」のα版は招待制で、関係者向けのリリースだ。7月1日から一般向けにベータ公開する予定だという。