BBVAがオンラインバンキングSimpleの閉鎖をユーザーに通達、チャレンジャーバンキングアプリの統合が進行中

チャレンジャーバンキングアプリの世界では、いくつかの統合が進行中だ。ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)は米国時間1月7日、2014年に1億1700万ドル(約122億円)で買収した(未訳記事)モバイルおよびオンライン決済アプリの先駆者であるSimple(シンプル)のユーザーに、サービスの停止と口座をBBVAの米国事業に移行することを計画していると伝えた。

この動きは、スタートアップ企業への積極的な投資や買収を行ってきたBBVAが、PNCとの合併に向けて事業を合理化するための継続的な取り組みの一環だ。PNCは2020年11月、BBVAの米国事業を116億ドル(約1兆2000億円)で買収すると発表した

Simpleは、米国時間1月7日の早い時間にユーザーに送信した通知の中で、BBVA USAがSimpleのアカウントを引き継ぎ、サービスを提供することになると述べている。この通知は多くのユーザーによってTwitter(ツイッター)で共有されており、次のように書かれている。

「BBVA USAはSimpleを閉鎖するという戦略的な決定を下しました。Simpleのお客様の口座に当面の影響はなく、現時点では何もする必要はありません。お客様の預金はすでにBBVA USAに保管されているため、適用される限度額を上限としてFDIC保険付きの口座として維持されます。将来的にはBBVA USAがお客様のSimpleアカウントに独占的にサービスを提供するようになりますが、それまではSimpleアプリまたはSimple.comのオンラインからアカウントと資金にアクセスすることができます」。

ユーザーには今後、BBVAへの移行に関するさらなる詳細が伝えられると、通知には続いている。Simpleの顧客の反応には、予想どおりの落胆が見られる。

Simpleのユーザーは、より迅速で現代的なサービスが受けられると思って他のプロバイダからSimpleに移行した。ネットバンキングのプロバイダを変更するのは面倒であり、多くの顧客は長年Simpleのサービスを使い続けているユーザーでもある。

Simpleは最終的には既存銀行の1つであるBBVAに買収された。スペインに本社を置くBBVAは世界最大級の銀行だ。BBVAの顧客よりも若い層のユーザーを引きつけるための、より現代的なサービスを提供する試みの一環として、Simpleは主にそのオーナーから独立(未訳記事)して運営が行われていた。

我々は、さらなるコメントをBBVAとSimpleの両方に求めた。シャットダウンを認めるBBVAの声明は、この記事の下部に掲載している。

今のところ、メールによる通知が直接顧客に変更を報せる唯一の告知であるようだ。Simpleのモバイルアプリ内でのアラートや、ウェブサイト上の告知掲載はない。

Simpleに現在どれだけのユーザーがいるかは不明だ。2014年に買収された時にはすでに約10万人のユーザーがいたため、時代に先駆けたスタートアップだったということもできるだろう。

Simpleの創業から現在までの数年間で、Nubank(ニューバンク)、Chime(チャイム)、Current(カレント)、N26、Revolut(レボリュート)、Monzo(モンゾ)などの、いわゆるネオバンクやチャレンジャーバンクの数と人気が世界中で爆発的に増加。かつては急進的なコンセプトのように見えたものが、今では当たり前のものになっている。

複数のサービスを組み合わせるために一連のAPIを活用し、既存の銀行のインフラを超えることができるネオバンクは、より機動的でより現代的なインターフェイスを、(モバイルアプリのような)より現代的なプラットフォームで提供する。

実店舗に足を運んだり、窓口で担当者相手に取引を行ったりといった銀行の伝統的な習慣をいくつもパスできる新しい銀行は、それらをアルゴリズムに置き換え、たとえば月々の支出を分析してお金を節約したり、資産運用のより良い方法を提案したりすることで、人々の財政管理を支援する。

Simpleを取り巻く出来事の変化は、より新しい「チャレンジャー」バンクのサービスを使うことの不安定さを表現しているともいえる。小規模なサービスには常にリスクがあり、既存のサービスのように堅実に存続できない可能性がある。少なくとも、そのように考えられている。近年の大規模な銀行危機は、このような考え方を明確に覆してきた。

Simpleは常に完璧だったというわけではなかった。同社は特定の機能、たとえばBill Pay(ビルペイ)(未訳記事)、銀行口座の種類(未訳記事)を予告なしに廃止することもあり、ユーザーはそれに代わるものを求めて奔走しなければならなかった。

問題は、ユーザーがBBVAに固執することに決めるか、それとも別のチャレンジャー(バンク)を探すか、あるいはその間にも現代化を進めている、名前の通った大手銀行のどこかに移行するか、ということになるだろう。今となっては、結局のところ、考えられる選択肢は山ほどあるのだ。

【更新】BBVAの声明は以下のとおりだ。

BBVA USA は、外部組織との既存および潜在的なパートナーシップを含め、戦略的優先順位とリソースの評価を常に続けています。差し迫ったPNCとの合併を機に、我々はBBVA USAの目標を再評価し、単独の会社としても、PNCと合併する場合についても、会社の将来にとって最も意味のあることに集中しているところです。

その結果、本日、いくつかの変更を加速し、Simpleの閉鎖を含めいくつかの業務を停止することにしました。これらの見直しは当社の通常のプロセスの一部であり、過去1年ほどの間にCovault(2020年)やDenizen(2019年)など、他のベンチャーを業績や経済状況に基づいて閉鎖してきました。

Simpleのお客様は、すでにBBVA USAとSimpleとで二重の関係をお持ちです。私たちはそれらのお客様を、受賞歴のあるBBVA USAモバイルアプリに移行させる予定です。これらのお客様は慣習的な取引条件に従い、買収が完了した時点でPNCの顧客となります。BBVA USAの一員として、Simpleのお客様は、BBVA Financial Toolsを含むBBVA USAの受賞歴のあるモバイルアプリとともに、より幅広い商品やサービスを利用することが可能になります。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:BBVASimple銀行チャレンジャーバンク

画像クレジット:Simple

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(翻訳:TechCrunch Japan)

ナイジェリア拠点のフィンテック企業InterswitchのCEOが語る、アフリカ大陸の金融サービスの現状

アフリカ全土に展開するフィンテック企業のInterswitch(インタースイッチ)は、そのベンチャー投資部門を再開することを計画している。CEOであるMitchell Elegbe(ミッチェル・エレグベ)氏自身から、米国時間9月16日に行われたTechCrunch Disruptの壇上で語られた。

このナイジェリア出身の起業家は、同国の首都ラゴスに拠点を置くInterswitchが予定しているIPOについてはあまり新しい情報を語らなかったが、同社がアフリカのスタートアップへの投資を復活させることを明らかにした。

2002年にエレグベ氏によって設立されたInterswitchは、当時は主に現金ベースで行われていたナイジェリアを、デジタル化するインフラストラクチャを開拓した。同社は現在、アフリカ最大の経済と人口2億人を擁するナイジェリアのオンラインバンキングシステムに、多くのインフラストラクチャを提供している。同社は、アフリカの23の国で、個人向けおよびビジネス向けの決済商品を提供するまでに拡大した。

このフィンテック企業は、2019年に行われたVisaによる2億ドル(約209億6000万円)の株式投資によって、評価額が10億ドル(約1048億円)となりユニコーンの仲間入りをした(未訳記事)。

ベンチャー投資の復活

スタートアップの段階を十分に超えたInterswitchは、2015年に1000万ドル(約10億5000万円)のベンチャー部門(未訳記事)を立ち上げたが、ナイジェリアのフィンテックセキュリティ会社であるVansoを買収(techcabal記事)した2016年以降、そのベンチャー部門を休止していた。

しかしエレグベ氏によれば、Interswitchはまもなくスタートアップへの投資と買収を行うビジネスを再開するという。「私たちはチームを認定したばかりですが、そうした投資を再び開始する予定です」。

彼は新しいファンドの焦点を簡単に紹介した。「今回は、金融投資を行い、Interswitchが持つネットワークを投資企業が自由に活用できるようにしたいと考えています」と同氏はTechCrunchに語った。

「私たちは投資先の企業を厳選していきます。それらは、Interswitch自身が、明確に価値を与えることができる企業でなければなりません。私たちの行動と、私たちが既にお付き合いのあるお客様たちの力で、成長の加速をお手伝いできるような企業でなければならないのです」とのこと。

アフリカのテクノロジー業界における最近のベンチャーの動きが、Interswitchが投資分野に戻るように迫った可能性がある。エコシステムとして、アフリカ大陸のVCは過去5年間でほぼ4倍に増加し、2019年には約20億ドル(約2092億8000万円)に達した(未訳記事)。しかし、そのほとんどは単一企業による投資ファンドからのもので、ベンチャーファンド企業による投資とテクノロジーM&Aは、まだ軽微なものに留まっている。それは過去数カ月にわたって変化し、全体的な上昇がInterswitchの競合他社と見なされる可能性のある法人を中心としたアフリカのフィンテック周辺で発生してきた。

7月には、ドバイのNetwork International(ネットワーク・インターナショナル)が、ケニアに拠点を置くモバイル決済処理会社のDPOを2億8800万ドル(約301億4000万円)で買収(The Africa Report記事)した。買収後まもなく、DPOのCEOであるEran Feinstein(エラン・ファインスタイン)氏は、Network Internationa社はアフリカでの買収をさらに推進する予定だと語った。6月には、別のモバイルマネー決済処理会社であるMFS Africaがデジタル金融会社のBeyonic(ビヨニク)を買収(Venture Burn記事)した。そして8月には、保有資産と融資高でアフリカ最大の銀行である南アフリカのStandard Bank(スタンダード・バンク)が、フィンテックセキュリティ企業TradeSafeの株式を取得(AppsAfrica記事)した。

Safaricomによる主要なM-Pesaモバイルマネー製品(未訳記事)がケニアで台頭して以来、アフリカのフィンテックは成長を続け、競争が激化している。このセクターには数百のスタートアップがあり、現在アフリカ大陸でのすべてのVC投資のほぼ50%を受け取っている。

投資家と創業者が狙っているチャンスは、アフリカに多数いる銀行口座を持たない人々と銀行口座は持つものの活用できていない消費者(Investopedia記事)、そして中小企業たちをオンラインにしようとするものだ。世界銀行のデータによると、サハラ砂漠以南の10億人(世界銀行データ)のおよそ66%が銀行口座を持っていない。モバイルベースの金融プラットフォームは、そうした地域全体をシフトさせるための最良のユースケースを提示してきた。

Interswitchは、アフリカのデジタルファイナンスレースのリーダーとしての地位を確立している。しかし、革新的で若いフィンテックスタートアップに、投資や買収を行う積極的なベンチャー部門がなければ、現在の役割をどのように維持または拡張できるのかを想像することは困難だ。

IPOについての具体的な話は出なかった

エレグベ氏は、長い間期待されてきたInterswitchのIPOに対してはあまり語らなかった。会社はまだ上場するつもりなのかと尋ねたところ、彼はそれについては回答を控えたいとした。「現時点では、ビジネスの成長と顧客のための価値の創造に注力していて、それが私たちの主な焦点なのです」とのこと。

IPOの可能性がまだあるのかどうかについて「はい」または「いいえ」の回答を求めたところ、エレグベ氏はそれは「はい」だと答えた。「私たちはプライベートエクイティの投資家を抱えていますが、この先ビジネスのある時点でのエグジットを彼らは望んでいます」という。「イグジットのタイミングを迎えるときには、テーブルにはさまざまなオプションが置かれることになりますが、IPOもそのオプションの1つです」。

InterswitchのIPOについては長年話題されてきた。エレグベ氏は2016年に、TechCrunchに対して、ラゴスとロンドン証券取引所の二重上場が可能だと語っていた。その後、他のInterswitchチャネルを通じて、2017年のナイジェリアの景気後退と通貨のボラティリティのために公開が遅れたという噂が流れた。2019年11月には、状況を知る情報筋が、TechCrunchに対してその背景を語っていた「IPOの可能性はいまでも非常に高いままです。おそらく2020年の前半のいつかでしょう」。その後、新型コロナウイルス危機とそれに伴う世界経済の低迷が起こり、それがInterswitchのIPO計画を再び遅らせた可能性がある。

同社が上場すれば、それはナイジェリアとアフリカのフィンテックにとって大きな出来事となるう。アフリカ大陸には、VCが支援し世界的に上場しているフィンテック企業は存在していない。Interswitchの投資家のイグジットは、アフリカ大陸のスタートアップに対する投資機会の様子をうかがっている主要なファンドから、より多くのVCをナイジェリアやアフリカ全土へと引き寄せることになるだろう。

アフリカへ再注力

グローバルな製品展開に関してエレグベ氏は、今のところアフリカへの注力を継続する予定だと説明した。「アフリカ大陸の中で、Interswitchには十分な機会があります。私たちはできるだけ多くのアフリカ諸国に広がることを望んでいます。そしてInterswitchをアフリカ大陸への(金融)ゲートウェイとして位置付けたいと考えています」と彼はいう。

エレグベ氏は、主要な金融サービス企業との提携を通じて、アフリカの顧客基盤にグローバルな金融アクセスを提供し続けると説明した。2019年8月にInterswitchは、Verveカード所有者がDiscoverのグローバルネットワークを使って支払いを行えるようにするパートナーシップを開始した。

同氏は、ナイジェリアでのビジネスを行う際の欠点と可能性のバランスをとる見方を示しながら、今回のDisruptにおけるセッションを終えた。近年ナイジェリアは、アフリカにおける大規模な技術拡大、VC投資、そしてスタートアップ形成のための非公式なハブ化が進んでいる。しかし、ナイジェリアはインフラストラクチャーに関しては厳しい運営環境が続いている、それはしばしば政治的腐敗とボコ・ハラムのテロ行為による北東部地域の不安定に関連していることが多い。

「ナイジェリアは非常に大きな人口と非常に大きな市場を抱えています。私たちには解決する必要のある課題がたくさんありますが、ナイジェリアにはチャンスがあるので、多くのお金がそこへ向かっていることは理解できます」と彼はいう。

ナイジェリアの検討をしているテック投資家へのエレグベ氏のアドバイスは以下のものだ「短期的な見方をしないでください。そこには素晴らしい仕事をしている素晴らしい人びとがいます。インパクトを与えたいと思う正直な人たちです。そうした人たちを探し出す必要があります」。

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(翻訳:sako)

銀行は、エンタープライズAIやフィンテックの起業家が思うほどバカじゃない

著者紹介:Simon Moss(サイモン・モス)氏:Symphony AyasdiAI(シンフォニー・アヤスディエーアイ)のCEO。同社では、金融サービス向けのエンタープライズAIを開発。

Selina Finance(セリーナ・ファイナンス)の株価が5300万ドル(約56億円)上昇し、またその次の日には別のスタートアップ銀行の株価が6470万ドル(約68億円)上昇したことが立て続けに報道されたことで、エンタープライズAIやフィンテックの熱心な支持者が「銀行は何もわかってない。銀行には手助けか競合が必要だ」とまた豪語し始めている。

彼らの主張はこうである。銀行は、フィンテックの素晴らしいアイデアをいつになっても導入しない、どうやら業界の方向性を分かっていない。技術者のなかには、銀行向けの商品マーケティングにうんざりし、思い切って自分のチャレンジャーバンクを立ち上げた人もいる、と言うのである。

だが、従来の金融業者が黙ってはいない。フィンテックには「購入するか自分で構築するか」という選択が付きものだが、金融業者のほとんどはその質問自体が間違いだと知っている。ソフトウェアを購入するか、社内で構築するか。ほとんどの場合、問題はそこではない。銀行の多くは、もっと難関で、されど賢い道を突き進んでいる。アクセラレーションである。

銀行のほうが賢いといえる2つの理由

とはいえ、銀行が悲惨な間違いをしたことがないかと言えば、そうではない。批評家は、銀行がソフトウェア企業になるために何十億ドルも浪費して、コストや製品寿命の点で膨大な無駄が発生する巨大なIT事業を生み出し、無意味なイノベーションや「社内ベンチャー」に投資してきた、と批判している。しかし全体としては、銀行にインパクトを与えようとする起業家市場よりも、銀行のほうがビジネスについてよく理解していると言える。

まず、ほとんどの技術者には欠けているが銀行は持っているものがある。それは、銀行の専門領域に関する知識だ。技術者は、そのような専門領域に関する知識を過小評価しがちだが、それは間違いである。深い協議、緊密なプロダクト管理の調整、簡潔で明確なビジネス有用性をともなわない抽象的なテクノロジーが多過ぎると、意図する実体的価値を生み出すために使えるテクノロジーが見過ごされてしまう。

2つ目に、銀行が購入に慎重なのは、人工知能やその他のフィンテックの価値を見損なっているからではない。価値を非常に高く評価しているからこそ、慎重になっているのである。エンタープライズAIに競争力を高める力があることを知っているため、競合他社と同じプラットフォームを導入し、同じデータレイクからデータを引き出すのはもったいないと思っているのだ。

近い将来、競争力や差別化、アルファ値、リスクの透明性、業務の生産性といった要素は、どれほど生産的かつ高パフォーマンスの認知ツールを大規模に導入できるかで決まるようになっていく。NLP、ML, AI、そしてクラウドを組み合わせることで、ツールの規模が大きい順に、競争力のあるアイデアをより迅速に具現化できるようになる。問題は、競争上の主な強みをどのように獲得できるかだ。簡単に答えられる企業は多くないだろう。

正しい答えに導けるなら、銀行は自社のドメインの専門知識が持つ真の価値を手に入れ、差別化された強みを生み出すことができる。誰かのプラットフォームで、他のすべての銀行と肩を並べなくて済むのだ。自らの業界の方向性を定め、価値を守ることができる。AIは、ビジネスの知識や創造力を増強させるものだ。ビジネスの知識が欠けていれば、資金の無駄になってしまう。これは、起業家についても同じことが言える。自社のポートフォリオをビジネスと完全に連動させられなければ、製品イノベーターの衣をまとったコンサル業者になってしまうというわけだ。

本当に強いのはどちらか

実際、銀行はよく言えば慎重、悪く言えば臆病なのだろうか。次なるトレンドに大きな投資をして失敗に終わらせたくない、フィンテック業界の本物と偽物を見分けられない。そうした主張も理解はできる。実際、銀行はAIに大金を費やしてきた。だが、本当にそうだろうか。

一見すると、銀行はAIと呼ばれるものに大金を費やしてきたように見える。過去には、必要とされるレベルの容量や並行処理機能までスケールできる見込みがまったくない社内プロジェクトを行ってきた。また、本当は実現できないと誰もが分かっているような高い目標を掲げ、大規模なコンサルプロジェクトのなかで身動きが取れなくなってしまったケースもある。

この不安感は銀行業にとってはプラスとは言えないが、間違いなくチャレンジャーバンクという新たな業界を発展させるカギとなった。

チャレンジャーバンクの登場は、一般的に、従来の銀行が過去にとらわれすぎて新たなアイデアを導入できないために生じたことだと考えられている。だが、投資家はいとも簡単に同意する。ここ数週間、米国のチャレンジャーバンクであるChime(チャイム)がクレジットカードの展開を発表したほか、Point(ポイント)が米国を拠点に設立され、さらにはフィンテック企業のSolarisbank(ソラリスバンク)の支援のもと、チャレンジャーバンクVivid(ビビッド)がドイツで設立された。

舞台裏で起こっていること

従来の銀行は、データ科学者の雇用にリソースを割いており、その頭数はチャレンジャーバンクを大幅に上回ることもある。従来の銀行家は、外部のフィンテックベンダーに質問して問題を解決してもらうより、社内のデータ科学者に質問し、問題について意見を聞きたいと考えているのだ。

賢いのはこちらのやり方だろう。従来の銀行家は、社内で100%所有できないフィンテックサービスに資金を投じる必要はあるのか、それより、権利の一部を購入し、競争力となる部分を社内で保持できないか、ということを考えている。競争力となる強みを、どこかのデータレイクに野放しにしておきたくないのである。

銀行の視点で考えると、社内で「フィンテック」ができなければ、競争上の強みは生まれない。投資対効果は常に厳しく検討されている。問題は、銀行はデザインの創造力をかき立てるような場所ではないという点だ。大成功を収めたプロジェクトは、JPMC(JPモルガン・チェース)のCOINプロジェクトくらいである。ただ、これはクリエイティブなフィンテックと銀行が密に連携した例であり、結果としてビジネス上の明確な問題が浮き彫りにされた。製品要求仕様書の条件が不十分だという問題である。社内開発のほとんどはオープンソースを相手にしており、投資利益率に関して予算を吟味していくにつれ、魔法のきらめきも消えていくものだ。

今後数年の間、銀行がこうしたサービスを展開して新企業を買収していくにつれ、新たな基準の設定について議論が盛んになっていくだろう。銀行業のオプションが急増していくなか、最終的にはフィンテック企業と銀行が融合すると言える。

技術面での負債を抑える

もちろん、自社での構築方法を探るのに時間をかけすぎる結果、業界の進歩に後れを取るというリスクはある。

技術者は、マネジメントを素人が行えば着実なステップから外れてしまうと忠告するだろう。開発段階のニーズが二転三転することで、技術面での負債が溜まるというわけだ。データ科学者やエンジニアにプレッシャーをかけすぎるのも、技術面での負債の増加を早めることになる。バグや非効率がなおざりにされ、新機能もその場しのぎになってしまう。

これが、社内構築のソフトウェアにスケーラビリティがないと言われる所以である。コンサルタントが開発したソフトウェアでも、同じ現象が見られている。システム内の古い問題が新しい問題の陰に隠れ、結果として、低品質のコードを基盤に構築した新しいアプリケーションでエラーが生じるようになる。

では、どうやって修正できるだろうか。適切なモデルは何なのか。

ありきたりな質問ではあるが、基本に立ち返ってこそ成功があるというものだ。理解すべきなのは、大きな問題はクリエイティブなチームによって解決できるという点だ。個々がそれぞれの意見を理解し、対等に扱い、何を解決すべきか、またどのような成功を見据えているのかを完全にクリアにした状態でマネージメントを行わなければならない。

スターリン時代のプロジェクトマネジメントを実践すれば、成功確率は規模の大きい順に上昇する。つまり、将来的に成功するには、銀行はパートナーとなるフィンテック企業の数を絞り、銀行が生み出す知的財産の価値をともに高く評価する、格段に信頼できるフィンテック企業と連携する必要がある。両者とも、連携なくして成功はないと認めなければならない。道を模索するのは簡単ではないが、互いの協力がなければ、銀行も、そして銀行との協働を図る起業家も、いばらの道を突き進むことになる。

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(翻訳:Dragonfly)