【コラム】アジャイルなスタートアップモデルに倫理観を導入する時代がきた

アイデアを得て、チームを作り、「実用最小限の製品(MVP)」を完成させてユーザーに届ける。これは誰もが知っているスタートアップの事業の進め方である。

しかし、人工知能(AI)や機械学習(ML)がハイテク製品のいたるところに導入されるようになり、意思決定プロセスにおいてAIが人間を補強、または代替することの倫理的意味を市場がますます意識するようになった現在、スタートアップはMVPモデルの再考を迫られている。

MVPモデルとは、ターゲット市場から重要なフィードバックを収集し、製品の発売に向けて必要な最小限の開発に反映させるというもので、今日の顧客主導型ビジネスを推進する強力なフィードバックループを生み出している。過去20年間で大きな成功をもたらした、スマートでアジャイルなこのモデルは、何千社ものスタートアップを成功に導き、その中には10億ドル規模に成長した企業もある。

しかし、大多数のために機能する高性能な製品やソリューションを構築するだけでは、もはや十分ではない。有色人種に偏見を持つ顔認識技術から、女性を差別する信用貸付アルゴリズムまで、ここ数年間でAIやMLを搭載した複数の製品が、その開発とマーケティングに何百万ドル(何億円)も注ぎ込まれた後に倫理的ジレンマが原因で消滅している。アイデアを市場に出すチャンスが一度しかない世界でこのリスクはあまりにも大きく、安定した企業であっても致命的なものになりかねない。

かといってリーンなビジネスモデルを捨て、よりリスク回避的な代替案を選ばなければならない訳ではない。リーンモデルの俊敏性を犠牲にすることなく、スタートアップのメンタリティに倫理性を導入できる中間領域があるのだが、そのためにはスタートアップの最初のゴールとも言える初期段階の概念実証から始めると良い。

そして企業はMVPを開発する代わりに、AI / MLシステムの開発、展開、使用時に、倫理的、道徳的、法的、文化的、持続可能、社会経済的に考慮するアプローチであるRAI(責任ある人工知能)に基づいた倫理的実行可能製品(EVP)を開発して展開すべきなのである。

これはスタートアップにとってだけでなく、AI / ML製品を構築している大手テクノロジー企業にとっても優れた常套手段である。

ここでは、特に製品に多くのAI/ML技術を取り入れているスタートアップがEVPを展開する際に利用できる、3つのステップをご紹介したい。

率先して行動する倫理担当者を見つける

スタートアップには、最高戦略責任者、最高投資責任者、さらには最高ファン責任者などが存在するが、最高倫理責任者はそれと同じくらい、またはそれ以上に重要な存在だ。さまざまなステークホルダーと連携し、自社、市場、一般の人々が設定している道徳的基準に適合する製品を開発しているかどうかを確認するのがこの人物である。

創業者、経営幹部、投資家、取締役会と開発チームとの間の連絡役として、全員が思慮深く、リスクを回避しながら、正しく倫理的な質問をするよう、とりはからうのもまたこの人物の仕事である。

機械は過去のデータに基づいて学習する。現在のビジネスプロセスにシステム的な偏りが存在する場合(人種や性別による不平等な融資など)、AIはそれを拾い上げ、今後も同じように行動するだろう。後に製品が市場の倫理基準を満たさないことが判明した場合、データを削除して新しいデータを見つけるだけでは解決しない。

これらのアルゴリズムはすでに訓練されているのである。40歳の男性が、両親や兄妹から受けてきた影響を元に戻せないのと同様に、AIが受けた影響も消すことはできない。良くも悪くも結果から逃れることはできないのだ。最高倫理責任者はAI搭載製品にそのバイアスが染み込む前に、組織全体に内在するそのバイアスを嗅ぎ分ける必要がある。

開発プロセス全体へ倫理観を統合する

責任あるAIは一度きりのものではなく、組織のAIとの関わり合いにおけるリスクとコントロールに焦点を当てた、エンド・ツー・エンドのガバナンスフレームワークである。つまり倫理とは、戦略や計画から始まり、開発、展開、運用に至るまで、開発プロセス全体を通じて統合されるべきものなのだ。

スコーピングの際、開発チームは最高倫理責任者と協力して、文化的、地理的に正当な行動原則を表す倫理的なAI原則を常に意識するべきである。特定の利用分野において道徳的な決定やジレンマに直面したとき、これらの原則はAIソリューションがどのように振る舞うべきかを示唆し、アイデアを与えてくれるだろう。

何より、リスクと被害に対する評価を実施し、身体的、精神的、経済的に誰も被害に遭っていないことを確かめる必要がある。持続可能性にも目を向け、AIソリューションが環境に与える可能性のある害を評価するべきだ。

開発段階では、AIの利用が企業の価値観と一致しているか、モデルが異なる人々を公平に扱っているか、人々のプライバシーの権利を尊重しているかなどを常に問い続ける必要がある。また、自社のAI技術が安全、安心、堅牢であるかどうか、そして説明責任と品質を確保するための運用モデルがどれだけ効果的であるかも検討する必要がある。

機械学習モデルの要素として重要なのが、モデルの学習に使用するデータである。MVPや初期にモデルがどう証明されるかだけでなく、モデルの最終的な文脈や地理的な到達範囲についても配慮しなければならない。こうすることで、将来的なデータの偏りを避け、適切なデータセットを選択することができるようになる。

継続的なAIガバナンスと規制遵守を忘れずに

社会的影響を考えると、EUや米国などの立法機関がAI/MLの利用を規制する消費者保護法を成立させるのは時間の問題だろう。一度法律が成立すれば、世界中の他の地域や市場にも広がる可能性は高い。

これには前例がある。EUで一般データ保護規則(GDPR)が成立したことをきっかけに、個人情報収集の同意を証明することを企業に求める消費者保護政策が世界各地で相次いだ。そして今、政界、財界を問わずAIに関する倫理的なガイドラインを求める声が上がっており、またここでも2021年にAIの法的枠組みに関する提案をEUが発表し、先陣を切っている。

AI/MLを搭載した製品やサービスを展開するスタートアップは、継続的なガバナンスと規制の遵守を実証する準備を整える必要がある。後から規制が課される前に、今からこれらのプロセスを構築しておくよう注意したい。製品を構築する前に、提案されている法律、ガイダンス文書、その他の関連ガイドラインを確認しておくというのは、EVPには欠かせないステップである。

さらに、ローンチ前に規制や政策の状況を再確認しておくと良いだろう。現在世界的に行われている活発な審議に精通している人物に取締役会や諮問委員会に参加してもらうことができれば、今後何が起こりそうかを把握するのに役立つだろう。規制はいつか必ず執行されるため、準備しておくに越したことはない。

AI/MLが人類に莫大な利益をもたらすというのは間違いない事実である。手作業を自動化し、ビジネスプロセスを合理化し、顧客体験を向上させる能力はあまりにも大きく、これを見過ごすわけにはいかない。しかしスタートアップは、AI/MLが顧客、市場、社会全体に与える影響を強く認識しておく必要がある。

スタートアップには通常、成功するためのチャンスが一度しかないため、市場に出てから倫理的な懸念が発覚したために、せっかくの高性能な製品が台無しになってしまうようではあまりにももったいない。スタートアップは初期段階から倫理を開発プロセスに組み込み、RAIに基づくEVPを展開し、発売後もAIガバナンスを確保し続ける必要がある。

ビジネスの未来とも言えるAIだが、イノベーションには思いやりや人間的要素が必要不可欠であるということを、我々は決して忘れてはならないのである。

編集部注:執筆者のAnand Rao(アナンド・ラオ)氏はPwCのAIグローバル責任者。

画像クレジット:I Like That One / Getty Images

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(文:Anand Rao、翻訳:Dragonfly)

ハードウェア開発をアジャイルの時代へと導くDuro

ソフトウェア開発者にとって、ハードウェア製品の開発プロセスは、1980年代のものとまったく同じであるように見えるかもしれない。最もハイテクなワークフローであっても、表計算ソフトなどのミスが起こりやすくコストのかかる手作業、混乱、そしてハードウェア開発現場のかび臭いハンダ付けされた床板から漂う生きる気力のなさがある。そんな中、Duroは400万ドル(約4億6100万円)の資金を調達し、アジャイル手法を導入して、手間がかかりすぎている世界に正気を取り戻そうとしている。

Duroの資金調達ラウンドは、B2B SaaSの投資機関であるBonfire Ventures(ボンファイア・ベンチャーズ)がリードし、ハードテクノロジーの投資機関Riot Ventures(ライオット・ベンチャーズ)が追加資金を提供した。今回の資金調達は、営業・マーケティングチームの拡大と、Duroの製品ライフサイクル管理(PLM)ソリューションのさらなる展開のために使用される。

DuroのCEOであるMichael Corr(マイケル・コー)はこのように説明する。「私は元エレクトリカルエンジニアです。20年間、IoT、ドローン、通信機器、ウェアラブル、クリーンテックなど、あらゆる製品を設計・製造してきました。私はCADファイル、部品表、サプライチェーンデータなどのハードウェア開発の最も基本的な要素の管理にどれだけの時間が費やされているかに不満を感じていました。PLM(製品ライフサイクル管理)と呼ばれる製品カテゴリーがありますが、これは、これらの情報を一元管理するための受け皿となるものです。リビジョン管理も含まれており、自社のチームで使用するだけでなく、製造委託先と共有することもできます。しかし、私が使ったどのツールも、実際に時間を節約したり、最終的に価値を提供してくれるものではありませんでした。すべての作業が手作業で、プロセス志向であるため、スプレッドシートを使ったほうが楽な場合が多かったのです。今でもこの方法が主流です。なぜなら既存のツールは非常に複雑でエラーが発生しやすく、実際には価値がないからです」。

このような現状に個人的に疑問を感じた共同創業者のマイケル・コーとKellan O’Connor(ケラン・オコナー)は、すべての製品データを一元化し、異なるチームやツールを接続する際の摩擦をなくすためのクラウドプラットフォーム「Duro」を開発した。目標は透明性であり、製品チーム、エンジニアチーム、サプライヤーや製造チームの誰もが、常に最も正確で最新のデータにアクセスできるようにすることだ。

コーはDuroが進出している市場の状況を説明した。「少し単純化していうと、ハードウェア業界は二極化の文化に支配されています。80年代、90年代に入社して現在のツールセットを確立した上の世代がいます。その一方でギャップがあり、若いエンジニアは、ウェブやモバイル、アプリの開発が流行っていたため、それらの学習に興味を持っていました。若いエンジニアが続けてハードウェア分野に参入することはなかったのです。しかし、今は彼らが戻ってきています。ハードウェアは魅力的な製品であることが証明されたのです。IoTが実現して、ハードウェアの開発コストが劇的に下がりました。現在、若い世代のエンジニアが続々と社会に出てきています。Duroが狙っているのは、彼らです。彼らはソフトウェア開発の文化に慣れていますし、使用するソフトウェアに対する基準も違います」。

言い換えれば、SaaS、GitHub、DevOpsのプロセスがソフトウェアの継続的な提供方法を完全に変えたのと同じような仕組みで、Duroはハードウェアに関わる人々をミレニアムの時代に招待しようとしている。

「GitHubは、それが可能であることを証明するすばらしい仕事をしてくれました。GitHubはクラウド上の単一のソースでソースコード管理を行い、それを中心にツールや人々、タスクといったエコシステムを構築することができるのです。そして、誰もがGitHubに注目しています。従来のハードウェア業界はこれとは異なっていました。電気工学、機械工学、調達、製造など、複数のチームがそれぞれの役割を担っていました。一元化するという概念がなかったため、全員がそれぞれのデータを持っているのです。例えば、全員が別々の部品表を持っていると、問題が発生します。すべてのコミュニケーションチャネルを管理し、全員が確実に最新のデータのコピーを持っているようにするための諸経費が必要になります」とコーは説明した。

ボンファイア・ベンチャーズのJim Andelman(ジム・アンデルマン)は「古い企業が支配する大きな市場に新鮮なソリューションを提供するDuroと提携できたことを非常にうれしく思っています。Duroのようなスタートアップ企業がまったく新しいユーザーにとっての参入障壁を下げることで、新たな市場の大部分を獲得することができます。Duroのプラットフォームに対する顧客の親和性は非常に高く、エンジニアリング志向の企業にとってPLMソリューションとして選ばれていることは明らかです」と述べている。

Duroは製品だけでなく、SaaSを参考にしたビジネスモデルの革新にも取り組んでいる。

「これまでのハードウェアのためのソフトウェア販売には、多くの摩擦がありました。ユーザーライセンスのビジネスモデルによる非常に高価なアプリケーションで、試用版が用意されていることはほとんどなく、使いたければお金を払って、手に入れたものをただ受け入れるしかありません。そこでDuroは、そこにもちょっとした工夫を凝らしています。Duroには3つのサブスクリプションパッケージを用意しています。スターターパッケージは、スプレッドシートを使わずに、適切に管理されたデータ、集中管理された環境を求めている企業向けです。Pro版は、他の製品で必要とされる複雑な構成や設定をすることなく、入手後すぐに使えます。Pro版は、最初の生産を行う段階で、サプライヤーとの間で適切なリビジョン管理を行いたいと考えているチーム向けに設計されています。大企業向けパッケージは、これらの下位2つの層を超えて成長したチームや、より確立していて既存のワークフローを持っているチームのためのより拡張的なパッケージです」とコーは説明する。

スターターパッケージは月額450ドル(約5万1000円)、年額5,400ドル(約62万円)。Proパッケージは、月額750ドル(約8万6000円)、年間約9,000ドル(約103万円)となっている。大企業向けパッケージは、顧客のニーズに応じた柔軟な価格設定となっている。Duroのチームは、ソフトウェアの構成に応じて、2万5,000ドル(約288万円)から10万ドル(約1153万円)の契約を結んでいると話した。

Riot Venturesの共同設立者であり、ゼネラルパートナーであるWill Coffield(ウィル・コフィールド)は「フルスタックビジネスへの投資を行ってきた経験から、データの継続性に関する問題は、ハードウェアの製造においても同じであり、業界に大きな影響を与えることがわかっています。ハードウェアの設計・開発を現代化するために、手動のプロセスを自動化し、チームと情報を結びつけて知的で効率的なコラボレーションを実現するDuroのアプローチは大変好ましいと思います」と述べている。

画像クレジット:Duro

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

ユーザー10万人のアジャイルミーティングソフトウェアParabolが約8.7億円を調達

先にアジャイル開発チームに振り返りミーティングソフトウェアを提供するベンチャー企業Parabolは、800万ドル(約8億7400万円)でシリーズAを完了したことを発表した。取引はMicrosoft(マイクロソフト)のベンチャーキャピタル部門であるM12が主導した。この投資には、Techstars、CRV、Haystackも参加している。

TechCrunchは、ParabolのCEOであるJordan Husney(ジョーダン・ハスニー)氏にインタビューし、今回のラウンドと同氏の会社について話を聞いた。私たちは、Parabolが提供している市場がどれほど大きなものなのか、そして同社がサービスを過剰にニッチ化しているのではないかと思っていた。Parabolはまだ若い会社だが、私たちの考えは誤りだったようだ。聞くところによると、ソフトウェア市場は考えていたよりも大きな市場であるという印象を受けた。

Parabolはどのようにして誕生し、どのようにしてターゲット市場を選んだのだろうか。あるいはより正確には、ターゲットとなる市場はなぜParabolを選んだのだろうか。

水平に構築し、垂直に焦点を合わせる

コンサルティングの世界に身を置いていたハスニー氏は、分散したチームが抱えるコミュニケーションの問題を十二分に認識していた。大企業では複数のオフィスを持つことが当たり前になっており、リモートワーカー同士のコミュニケーションは、メールのやりとりか、ミーティングかのどちらかになっていたとTechCrunchのインタビューで答えた。自称「回復期のエンジニア」であるハスニー氏は、ビジネス市場に「構造化されたコミュニケーション」、つまりコードライティングの世界で人気のある、非同期ミーティングの需要があるのではないかと考えた。

ハスニー氏は、プロセスや書面化よりも強力や進化を優先するソフトウェア開発手法であるアジャイル開発の精神を受け継ぎ、開発者ではないビジネスチームにアジャイルワーキングやコミュニケーションの手法を導入するためにParabolを構築した。アジャイルの原則が、ステータスミーティングを通じた開発者の成果の促進に適しているのなら、同じプロセスが他の仕事の場でも通用するのではないだろうかと考えたのだ。

しかし、市場には別の考えがあった。ビジネス界で大成功を収めるには、ハスニー氏がいう「行動の変化」が必要なことから摩擦が避けられず、それは新しいサービスや製品の迅速な導入には致命的だ。Parabolはビジネス界全体でヒットしたのではなく、なんとアジャイル開発チーム自身がParabolのテクノロジーを使い始めたのだ。

Parabolは、その需要を追いかけた。そしてその需要は非常に大きいことが分かったのだ。ハスニー氏は、世界には約2000万人のアジャイル開発者がいると推定しており、そのビジネスによってAtlassianのような企業が巨大な成功を収めている。ベンチャー企業にとっては、長い間泳ぎ続けるのに十分な大きさのプールなのだ。

先ほどのソフトウェア市場の大きさの話に戻ると、Parabolは良い参考になる。Parabolはソフトウェア制作の世界特有の会議スタイルの一部をサポートすることで、本物の会社となりつつあるようにも見えるが、ソフトウェアの市場はとにかく巨大なのだ。

成長

アジャイルソフトウェアチームのサポートを決定した後、Parabolにはすぐに成長が訪れた。2018年と2019年には毎月20%から40%の成長が見られたと同社のCEOは語る。自社を「ロケット」と呼ぶハスニー氏は、ParabolのフリーミアムのGTMモデルを一部評価している。これは、従来の販売プロセスを敬遠する開発者に販売する際の一般的なアプローチだ。

Parabolは、既存の顧客に販売することで、プロダクト・マーケット・フィットを実現した。ハスニー氏自身は、アジャイルソフトウェア開発者の作業サポートツールの需要を過小評価していた。それは開発者らは自分たちのニーズをすでに把握しているだろうと思っていたからだとTechCrunchに語った。

しかし、Parabolが作ったのは単純なツールではない。まず振り返りミーティングやインシデントの事後検証を行うためのソフトウェアで、作業者から「やるべきこと」「やらない方がいいこと」「維持すべきこと」などのメモを収集する。そして、それらのメモはトピックごとに自動的に集約され、その後、ユーザーが投票して変更点や取るべき行動を決定するというサービスなのだ。その結果、開発チームは非同期に同期された状態を保つことができる。

Parabolは2019年11月にシードラウンドを完了し、ちょうど新型コロナウイルス感染症流行に備えた資金を用意するのに間に合った。在宅勤務への急激な切り替わりにより、Parabolのユーザー数は2020年1月には週600人だったのが、同年3月には週5000人にまで増加した。データを自分の目で確認したい場合は、ここに同社による公開データがあるので参照して欲しい。

400万ドル(約4億3700万円)の資金を調達したハスニー氏は、周囲から「今がチャンスだ」と言われ、さらなる資金調達を決意。そして、いくつかの会社の中から選ぶことになり、最終的にはマイクロソフトの資金を受け取ることになった。

そこにはストーリーがある。ハスニー氏によれば、マイクロソフトのM12は、ベンチャーキャピタルのリストの上位にはなかったという。純粋なベンチャーキャピタルではなく、戦略的資本を利用することは1つの選択肢に過ぎず、すべてのベンチャー企業にとって最適なものではないからである。しかし、ハスニー氏たちがマイクロソフトのパートナーと知り合いになり、お互いに調査を行った結果、その適合性が明らかになった。CEOによると、M12の投資チームは、AzureやGitHubなど、さまざまなマイクロソフトのグループに電話をしてParabolに対する意見を聞いたそうだ。彼らは絶賛した。そしてマイクロソフトはこの取引に関して強い内部シグナルを発し、Parabolは自社の投資元となる可能性のある企業が自社製品のヘビーユーザーであることを知ったのだ。

取引は成功した。

なぜ800万ドルで、それ以上ではないのか?ハスニー氏によると、このベンチャー企業の成長計画は資本集約的ではなく、むしろ市場が成長を引っ張っているとのことだ。また、チームは希薄化を意識していると説明する。創業チームが会社を結成したのは2015年で、シードラウンドを完了したのは2019年になってのことだった。当時はひもじい時代だったと同氏はいう。そこまでして得た所有権にはこだわりがあるのだろう。

Parabolは意図的に無駄のない経営を行っている。ハスニー氏は、自身のチームはReid Hoffman(リード・ホフマン)氏のような電撃的な規模拡大の理念には従わず、個人の成長を考えた採用を重視しているという。コラボレーション製品を作るためにすぐに規模拡大する必要はないと、CEOは考えている。

この800万ドルの資金調達により、Parabolは無限の可能性を秘めているとCEOは語ったが、同社はこれを約24カ月間分の資金調達とした。24カ月後には、社員が現在の10人から30人程度に増えていることを期待する。

Parabolは、2021年の収益を4倍にし、2022年にはそれを3倍にしたいと考えている。また、現在10万人のユーザーを2021年中に50万人に拡大し、来年末には100万人にしたい計画だ。目標に対する同社のパフォーマンスから目を離すことができなさそうだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Parabol資金調達アジャイル開発

画像クレジット:Chainarong Prasertthai / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Dragonfly)

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を提供

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を4月から提供AIを用いたソフトウェアテスト自動化プラットフォーム「Autify」(オーティファイ)を提供するオーティファイは、検証端末がなくてもネイティブアプリのE2E(End to End)テストが自動で行える「Autify for Mobile」(β版)を4月から提供開始すると発表した。従来のAutify同様、プログラミングの知識がなくても、誰にでも簡単にテストシナリオを作成・実行できる「ノーコード」による自動化が可能。

また同社は、Autify for Mobile(β版)のオンライン事前申し込みを開始した。事前登録を行なっている場合、優先的に案内する。「βテスト申し込み」から行える。

オーティファイは、2019年にTechCrunch Japanが主催した「TechCrunch Tokyo 2019」の「スタートアップバトル」のファイナリスト。2020年4月にはローンチ半年で導入企業累計100社を突破したことを発表しており、現在ではECサイトやBtoB SaaS、エンタメコンテンツの配信プラットフォームなど、ウェブサービスを提供している300社以上の企業が導入済みという。

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を4月から提供

代表取締役の近澤良氏がまず強調したのは、ソフトウェアテスト自動化は、企業におけるIT予算の1/3を占める超巨大マーケットであり、グローバルな市場規模が130兆円にもなるという点だ。

しかし、75%の企業が人手にソフトウェアテストを行っているのが現状だという。近澤氏は、その一方で、市場の変化に対応するというビジネス上の要請から7割以上のアジャイル開発チームが週1回以上のリリースを希望しており、リリースのたびにテスト量が増加していることから人手による検証は限界を迎えていると指摘。企業はリリースサイクルを遅くするか、障害発生のリスクを許容するか選択を迫られているとした。

そのため、ソフトウェアテストの自動化が必要とされているものの、「自動化を行う人手の不足」、「高いメンテナンスコスト」という課題があるという。近澤氏によると、自動化のためのコードを書くエンジニアがそもそも不足している上に、毎週など頻繁なリリースに追随できる自動テストのメンテナンスに関する負荷が高く、諦めてしまう企業が多いそうだ。

そこでAutifyでは、「ノーコード」「AIによるメンテナンス」というソリューションでこれら課題を解決するとした。

検証用のモバイル端末を用意する必要ナシ

Autifyは、開発したソフトウェアが期待通りに動くかどうかの検証作業をウェブブラウザー上で自動で行えるSaaS。プログラムコードを書く必要がなく、誰でも自動化のための設定や実行、運用までを行える。従来、手動で行ってきたE2Eテストの自動化により「大幅な時間短縮とメンテナンスコストの削減が実現できた」と評価されているそうだ。

今回同社が発表したAutify for Mobile(β版)は、Autifyのモバイルネイティブアプリ対応版。検証用のモバイル端末を用意する必要はなく、パソコン(Windows/Mac)のブラウザー上で、複数端末での動作検証が自動で行える。「モバイルネイティブアプリ対応版がほしい」という要望がかねてより寄せられていたことから、開発を進めている。β版の段階では、シミュレーターでの実行をサポートするものの、将来的にはOSバージョンなどを指定した上での実行も可能としたいという。

リモートワークがスタンダードになる中、「検証端末をいくつも用意するのが困難」「メンバー間で端末を郵送し合うなど手間がかかる」「検証端末の管理コストが高い」といった課題も解決するとした。

プログラミングの知識がなくても、ノーコードで自動化できる

従来、テスト自動化のためにはプログラミングの知識や自動化のスキルが必要だったが、Autifyではプログラミングの知識がなくても、誰にでも簡単にテストシナリオを作成・実行可能。QA(Quality Assurance)担当者が、テスト自動化の設定やメンテナンスを行えることで、より高い品質を保てるようになる。また、エンジニアは開発に集中できるため、リリースサイクルの高速化も期待できる。

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を4月から提供

またエンジニア向けに、作成した自動化設定の一部をJavaScriptでカスタム化する機能も用意しているという。

任意のタイミングで定期テストを自動実行

Autifyにアップロードしたアプリ(ビルドファイル)を起動・操作し、記録した内容を保存するだけでテストシナリオが完成。「毎週土曜日の23時に実行」など任意のタイミングを設定すると定期テストが自動実行される。

ノーコードのE2Eテスト自動化プラットフォーム「Autify」がモバイルアプリ対応版を4月から提供

また、保存したテストシナリオを複製、一部を変更するだけで他のウェブサービスのテストにも活用可能。複数サービスを展開している企業からは「他部署の開発チームでも活用できて助かった」などの声もあるという。

アップデートによる差異をAIが検出し自動修復

従来は、アプリのUI変更や新機能の追加があった際は、テストのシナリオを手動で修正するのが一般的だったが、Autifyならその必要はない。

AutifyではAIがソースコードやUIの変化を検出し、シナリオの修正も自動で行う。シナリオを書き直したり、壊れたテストスクリプトを直す作業が発生しないため、メンテナンスの負担を軽減できる。

「テストの辛みを一気に解決したい」

近澤氏によると、エンジニアであれば「テストが辛い」「テストの市場が大きい」という点は肌感覚で分かる一方で、開発に関する知識がない方には限定的な市場しかない、ポテンシャルが限られていると見られがちだという。しかし、実はグローバルで同じ課題を抱えており、ビジネス上のポテンシャルも無限大だと指摘。

ソフトウェア企業やSaaSの数は増え続けており、アジャイル開発かつ週次レベルで改善し続けないと顧客が離れてしまう可能性は十分ある。ウォーターフォールで、1ヵ月後や半年後に新機能をリリースというスタイルではビジネスの継続は難しいと捉えている企業は多く、テスト自動化の需要はますます増えていくと考えているという。

近澤氏は、「Autify、Autify for Mobileでテストの辛みを一気に解決したい」としていた。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:アジャイル開発(用語)オーティファイ(企業)Autify for Mobileテスト自動化ノーコード(用語)日本(国・地域)