LinkedInがイスラエルのウェブ分析Oribiを92〜104億円で買収、マーケティングテクノロジーの拡充を図る

専門分野に関して人々とつながり、仕事を探したい人のためのソーシャルネットワークで、8億1000万人以上のユーザーがいるMicrosoft(マイクロソフト)傘下のLinkedIn(リンクトイン)は、独自プラットフォーム上で長年、マーケティングや広告のビジネスをしている。同社は米国時間2月28日、インターネットのさらに幅広い範囲にわたる分析やインサイトを提供したいという同社の野望を示していると考えられる買収を発表した。LinkedInが買収したのは、マーケティングのアトリビューションテクノロジーを専門とするテルアビブのスタートアップ、Oribiだ。この買収により、LinkedInはイスラエルに初めてのオフィスを開設することになる。

買収を発表したブログ記事では条件は明らかにされていないが、情報筋によると買収額は8000万〜9000万ドル(約92億1600万〜103億6800万円)とのことで、他のメディアでもこの金額が報じられている。PitchBookのデータによると、OribiはSequoia、TLV Parnters、Ibexなどから2800万ドル(約32億2500万円)近くの資金を調達し、Google(グーグル)のローカルアクセラレーターとしても若干の資金を得ている。

この買収は2つの点で興味深い。1つめとして、これはLinkedInが同社の中で急速に成長している分野であるマーケティングと広告のサービスへの投資を続けていることの現れだ。最高プロダクト責任者のTomer Cohen(トマー・コーヘン)氏は米国時間2月28日のブログ記事で、マーケティングサービスの売上は対前年比で43%成長したと記している。しかしLinkedIn上では5700万社ほどの企業が「ブランドのページを作成」し、毎週2万4000件以上のバーチャルイベントが作成されていることを考えると、利用している企業にさらに機能とツールを提供すればさらなる成長の余地が大いにあることは明らかだ。ここ数年で、LinkedInはこの分野を拡大するための買収を1件しかしていない。その1件は、2019年Drawbridgeの買収だ。

そしてもう1つ、Oribiの買収はLinkedInのマーケティングに関する大きな変化をはっきりと示している。以前にTechCrunchでお伝えしたように、Oribiのミッションはウェブ分析を民主化することだ。つまり同社は、小規模な企業が簡単に独自の分析を構築、実行してマーケティング戦略の影響を測定できるようにすることを目指している。大企業ならそのためのチームがいるだろうが、小さい組織はリソース不足のためたいてい諦めざるを得ない。

Oribiの創業者でCEOのIris Shoor(アイリス・ショーアー)氏は以前にTechCrunchに対し「アナリティクス企業の多くは、ハイエンドを狙っています。もっぱら技術的なリソースや他とのインテグレーションに基づいたソリューションを提供しています。Mixpanels風、Heap Analytics風、Adobe Marketing Cloud風といったものです」と述べていた。

注目すべき点として、OribiはGoogle Analyticsなどと競合している。つまりLinkedIn(そしてこれに関連してMicrosoft)が、Googleの圧倒的なデジタル広告・マーケティングマシンに立ち向かっていくことにもなる。

米国時間2月28日にコーヘン氏は次のように記している。「Oribiのテクノロジーを我々のマーケティングソリューションプラットフォームに統合することで、お客様はさらに充実したキャンペーンのアトリビューションを利用して広告戦略のROIを最適化できるようになります。お客様は自動のタグとコードフリーのテクロノジーを活用して、ウェブサイトのコンバージョンを簡単に測定し効果的なオーディエンスを構築できます。しかもすべてプライバシーを最優先に設計されています」。

LinkedInはOribiの従業員が何人ジョインするかを明らかにしていない。ただし「創業者で経験豊かな起業家であるアイリス・ショーアー氏を含むOribiのチームの数人」がLinkedInにジョインして、LinkedInの新しいテルアビブオフィスで働くと記されている。

画像クレジット:LinkedIn China via Weibo

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

AWS、4つのクラウドベースのアナリティクスサービスがサーバーレス化

re:Inventカンファレンスにおいて、AWSは米国時間11月30日、同社の4つのクラウドベースのアナリティクスサービス「Amazon Redshift」「Amazon EMR」「Amazon MSK」「Amazon Kinesis」をサーバーレスとオンデマンドサービスで利用できると発表した。AWSのCEO、Adam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏のキーノートによれば、それはAWSの顧客の要望だったという。これらの新サービスは本日から、公開プレビューで利用できる。

セリプスキー氏の主張によると、AWSと競合する企業の一部は、1つのデータベースで何でもできると主張するが、正しくはワークロードの性質によって正しいデータベースを選ぶべきである。そして、アナリティクスのサービスについても、同じことがいえる。ただし顧客はまたこれらのサービスの利用にともなう、インフラストラクチャの(構成などの)違いに煩わされたくない。クラスターの管理を自分でやらなくてもよくなったように、ユーザーは自分が使うリソースだけにお金を払いたい。たとえばRedshiftでは、データウェアハウスを使っているときだけ払いたい、アイドル状態に対して払う必要はないだろう。

「Amazon Redshift Serverlessは、開始するのに適したコンピュートリソースを自動的にプロビジョニングします。より多くの同時接続ユーザーや新しいワークロードによって需要が進化すると、データウェアハウスはシームレスかつ自動的にスケールして変化に対応します。オプションでデータウェアハウスの基本サイズを指定することで、コストやアプリケーション固有のSLAをさらにコントロールすることができます」とAWSのDanilo Poccia(ダニロ・ポッチャ)氏は、本日の発表で述べている。

同様に、データのストリーミングを扱うAWSのサービスであるKinesisは、今では完全な管理をともなうオンデマンドモードを提供している。これの新しいキャパシティモードでは、データのトラフィックに応じて自動的にスケールする。

本日の発表は、AWSが市場の声に応えていることの明らかな証拠だ。サーバーレスのアナリティクスは、すでに多くの競合他者や資金力のあるスタートアップが提供している。

画像クレジット:Ron Miller

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)