「噛む」ことで音楽プレイヤーを操作する技術をWisearが開発

Wisear(ワイシア)は、イヤフォンにいくつかの電極と電子部品を追加することによって、あなたの音楽体験をこれまでよりもずっとハンズフリーにすることを目指している。自分の歯で2回、噛む動きをすることで曲を一時停止したり、3回噛んで次の曲にスキップしたりすることができるようになるのだ。音を立てることなく、手でジェスチャーをしたり、ボタンを押したり、その他外から見える動きを一切しなくても、この技術を使えば音楽プレイヤーやAR / VRヘッドセットを操作することが可能になる。同社の創業者たちは、両手がふさがっている時や、周囲がうるさすぎて通常の音声コマンドが使えない場合などに、この技術が特に役立つと想定している。

この技術を既存のヘッドセットメーカーやヘッドフォンメーカーにライセンス供与することを目指し、同社は米国時間1月20日、総額200万ユーロ(約2億6000万円)の資金を調達したことを明らかにした。この投資ラウンドはParis Business Angels(パリ・ビジネス・エンジェルス)とKima Ventures(キマ・ベンチャーズ)が主導し、BPI France(BPIフランス)が支援した。

Wisearは、そのニューラルインターフェースを筆者に見せてくれた。前述の電極を使って脳と顔の動きを記録し、特許出願中のAI技術によって、これらの信号をユーザーが行動を取るためのコントロールに変換するという仕組みだ。同社は競合他社に対してかなり懐疑的で、他の「思考によるコントロール」をてがけるスタートアップ企業は、人々を欺こうとしているのではないかと思っているという。

「現在、思考コントロールや精神コントロールを手がけているといっている人は、基本的に真実を捻じ曲げているのです」と、Wisearの共同設立者であるYacine Achiakh(ヤシン・アキアク)氏は説明する「もし彼らが本当にそれを実現させているのであれば、全財産を投資しても大丈夫。なぜなら、それはすべてに革命をもたらすからです。これは私たちにとって本当に苛立たしいことでした。精神コントロールを実現させたと言っている人たちは、周囲に騒音がなく、人が動かず、外は晴れていて、温度もちょうどいいという、非常に特殊な環境下で動作するデモを行っているだけだと、私たちは気づきました」。

「研究室では動作する」症候群を克服するため、同社は初めからやり直し、既製の部品を使って新しい技術を作り出した。そして十分に機能する技術のプロトタイプを作って披露し、その技術をヘッドフォンやAR/VRヘッドセットのメーカーにライセンス供与しようと考えている。

「私たちは、脳ベースで何かをしようとするときに最も難しいのは、実際にそれをユーザーに一般化し、どんな環境でも機能するようにすることだと気づきました。そこで私たちは、一歩下がって、まず筋肉と眼球の活動をベースにしたニューラルインターフェースを開発することにしました。私たちの主なコントロールは、顎の動きに基づくものです」と、アキアク氏は語る。「イヤフォンに搭載したセンサーが、顎の筋肉の動きを捉えて、コントロールに変換します。音を出す必要は一切ありません。そして2022年の目標は、顎を2回または3回、噛む動きをすることで、2つのコントロールができるようにすることです。今後3年間で12種類のコントロールに拡大することを目指しています」。

先週、同社の創業者はビデオ通話で同社の技術を披露してくれたのだが、その内容は一言でいうとすばらしいものだった。アキアク氏が筆者と話している間に発生したあらゆる物音や動きなどに、ヘッドフォンは一切混乱することがなかった。同氏が自分の歯を噛みしめる、つまり顎を食いしばるような動きをすると、音楽プレイヤーは一時停止したり、またそこから音楽を再開したりした。

この技術はまだ実用化の段階には至っていないものの、成功率はかなり高いようだ。

「私たちが作っているのは、本当に誰にでも使える初めての技術です。CESの我々のブースでは、約80%の人がうまくデモを動作させることができましたが、さらに向上させるために努力しています」とアキアク氏は語った。「私たちが作っているのは、今の時代にきちんと動作する唯一のニューラルインターフェースです。筋活動は、2022年に構築できる真の新しいインターフェースです」。

Wisearは、携帯電話の音楽プレイヤーをコントロールできるイヤフォンの実験中の試作機を公開している。同社はこの分野における既存のメーカーに、その技術をライセンスすることを望んでいる(画像クレジット:Wisear)

画像クレジット:Wisear

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Ultraleapの空中触覚技術はメタバースのインターフェースになる、テンセントが約93.5億円のシリーズDに参加

UltraleapのCEOであるトム・カーター氏とCFOのChris Olds(クリス・オールズ)氏(画像クレジット:Gareth Iwan Jones

いまはUltraleap(ウルトラリープ)となった会社が、超音波で触覚を再現するその先駆的技術をTechCrunch Disruptで披露したのは、2017年にさかのぼる(当時の名前はUltrahaptics)。印象的な「スター・ウォーズ」のデモンストレーションが観客を魅了した。

そのデモは見ものだった(下の動画参照)。この技術は、その発明者であり現在もCEOを務めるTom Carter(トム・カーター)の大学院での研究に基いている。Ultrahapticsはその後、2300万ドル(約26億2000万円)の資金を調達し、自動車メーカーが興味を持つようになった。その後、大きな注目を集めていたLeap Motionを吸収したがハンドトラッキング空中ハプティクス(空中触覚)の組み合わせはすばらしいものであることがわかった。

今回Ultraleapが、Tencent(テンセント)、British Patient Capitalの「Future Fund:Breakthrough」、CMB Internationalらが主導した8200万ドル(約93億5000万円)のシリーズD調達を行った。また、既存の株主であるMayfair Equity PartnersとIP Group plcも参加した。

UltraleapのCEOであるTom Carter(トム・カーター)氏は、Facebookなどの企業によるVRベースの「メタバース」に関する最近の話題や、パンデミックによってもたらされたタッチレスインターフェースへの移行が今回の資金調達に貢献したとコメントしている。

彼はいう「メタバースという概念は、Ultraleapにとっては新しいものではありません。フィジカルな世界とデジタルな世界の境界を取り除くことは、常に私たちの使命でした。パンデミックの影響で、物理的な世界をデジタル要素で強化することの重要性を理解する人が増え、この言葉がさらに台頭したのです。Ultraleapにとっては、この新しい時代はVRヘッドセットに限定されるものではありません。インターネットのように、家庭、オフィス、車内、公共の場など、生活のあらゆる場面で私たちが接することになる現実なのです。今回のシリーズD調達の目的は、主なインターフェースである手への移行を加速することです。なぜなら、誰もが思い描くメタバースの中には、物理的なコントローラ、ボタン、タッチスクリーンがないからです」。

Ultraleapの第5世代ハンドトラッキングプラットフォームGemini(ジェミニ)は、明らかに多くのデバイスへの適用を意識している。実際、Qualcomm(クアルコム)のSnapdragon(スナップドラゴン)XR2チップセットや、Varjo(バルジョ)VR-3およびXR-3ヘッドセットなど、複数のプラットフォームやカメラシステム、サードパーティのハードウェアにすでに組み込まれている。

Ultraleapの計画では、GeminiをさまざまなOSに対応させ、ツールや研究開発への投資を増やし、開発者が技術をどのように応用するかについて、想像力を膨らませることができるようにすることを目指している。

このタッチレス技術の重要な推進力の1つは、もちろん「グレートパンデミック」だ。もう何かに無防備に触れたいと思うひとなどいなくなったのではないだろうか?

そのため、ペプシコやレゴなどの企業が、すでにUltraleapの技術をパブリックインターフェイスに採用している。

そして2017年にも示唆されたように、自動車メーカーは「車内での体験」を現実のものにしようとしている。Ultraleapは、すでにDS Automobiles(DSオートモビル)やHosiden(ホシデン)と協力して、新たな空中ハプティック体験を提供しようとしている。

カーター氏は電話でこれらの動きについて話ながら、VRベースのメタバースの中で機能するユーザーインターフェースの可能性が、Ultraleapの技術のビジョンであると説明した「確かにメタバースは今とても話題になっていますが、実際にそこで語られているのは、私たちが目指していること、すなわち人間とバーチャルコンテンツの間にある障壁を取り除くことなのです。

今回の資金調達は、私たちがターゲットとするすべての市場において、すべての人が自分の手を使った最適なインターフェースに移行できるようにするためのものなのです。XRに関してはGeminiを発売しましたが、ここ数週間で新世代のハンドトラッキングは大絶賛されています。いまこそ、大きく拡大をするべきタイミングなのです。ペプシコの導入例では、好ましいとしたユーザーが85%に達し、注文を終了するまでの時間ではタッチスクリーンと同等でした」。

そして、自動車だ。彼は「UXは新しい推進力です」という。「私たちは今でも車を運転していますが、車内での体験にもっと焦点を当てようとしています。仕事をしているのか、楽しんでいるのか、あるいはその他のメタバースに似た活動を車内で行っているのか、などです」。

彼によれば、道路から目を離さなければならないタッチスクリーンではなく、空中に置かれたインターフェースを使用することで、安全面で非常に大きなメリットがあることがわかったそうだ「ドライバーが道路から目を離す回数が減ることで、ドライバーの精神的な負担が約20%軽減されるのです。こうしたインターフェースに移行することで、より安全な運転ができるようになります。そして、一旦そのインターフェースを手に入れ、みんながこの方法で対話することに慣れれば、未来の世界への移行が容易になります」。

以下が2017年のデモの様子だ。

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(文: Mike Butcher、翻訳:sako)