動画を利用する本人確認サービスのVeriffがシリーズCラウンドで約115億円を調達

本人確認サービスを提供するVeriff(ベリフ)は、Tiger Global(タイガー・グローバル)とAlkeon(アルケオン)が共同主導する1億ドル(約115億円)のシリーズCラウンドを実施した。既存投資家のIVPとAccel(アクセル)もこれに参加し、Veriffがこれまでに調達した資金総額は2億ドル(約230億円)に達した。今回の資金調達により、同社の企業評価額は15億ドル(約1724億円)となっている。この新たな資金は、従業員の増強、研究開発、販売およびマーケティングに使われる予定だ。

エストニアを拠点とするこのスタートアップ企業の「特別なソース」は、AIによる動画を使って本人確認を行うことだ。これまで、この分野にはOnFido( オンフィド)やJumio(ジュミオ)などの大手スタートアップがサービスを提供してきたが、これらの企業は動画ではなく依然として静止画に依存している。

Veriffは、この動画を用いるアプローチによって、オンライン本人確認を、物理的な対面認証よりも「より正確」にし、より多くの詐欺を防ぐことができると主張している。

同社によると、2021年の確認実績は8倍以上、米国では20倍、金融サービス事業は10倍に成長し、顧客数は150%増加したという。

VeriffのCEO兼創業者であるKaarel Kotkas(カーレル・コトカス)氏は、次のように述べている。「組織や消費者は、2021年にはこれまで以上にオンラインでの本人確認を必要としていました。リモートによる従業員の研修や、メタバースのゲームで安全な空間を構築するため、そして完全にオンラインで行う事業運営においても、デジタルにおける信頼性と透明性の確立は、非常に重要になっています」。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・カーティウス)氏は次のように述べている。「現代のデジタルビジネスと消費者のための信頼性の高い本人確認ソリューションは、過去2年の間に事業運営におけるすべての業務がオンラインに移行したことで、深刻化しています。Veriffは、オンラインで信頼と安全を確保するために、業界をリードする製品を開発してきました。我々の調査と顧客から声によると、Veriffの製品性能は他社を大きく引き離しており、世の中の企業にもっと広く利用されるべきです」。

筆者はコトカス氏にインタビューし、Veriffのプラットフォームの精度を高めるためには、他にどのようなことが行われているのかを訊いてみた。「ユーザーの行動を要素として計算に入れています。3枚の写真だけで本人確認の判断をするのではなく、当社では1000以上の異なるデータポイントを分析しています。これによって、自動化の利点が得られると同時に、本人確認に対する非常に正確な判断ができるようになります」と、同氏は答えた。

また、本人確認の将来性については、金融サービス企業だけでなく、今やオンライン上のほぼすべてのサービスに本人確認が必須となっていることが後押しすると考えていると、同氏は語る。例えば、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、今では大学の遠隔試験で本人確認が必要になることもある。

「現在、50億人の人々がオンラインで生活していますが、その全員が本人確認を始めると、年間で500億件の確認作業が発生することになります。私たちは、オンラインにおける信頼性と拡張性を高める必要がある世界に向けて動いているのです」と、コトカス氏は語った。

画像クレジット:Ian Waldie / Staff / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

気泡緩衝材をウールに置き換えることを目指すWoolaが3.2億円のシード資金を調達

毎年約550億個の小包が気泡緩衝材(いわゆる「プチプチ」「エアキャップ」etc.)とともに出荷されている。プラスチック製の気泡緩衝材は化石燃料に依存しており、プラスチック製のパッケージの98%は使い捨てにされる。こうしたプラスチックが環境へ与える悪影響は想像できるだろう。

Woola(ウーラ)の創業者は、オンラインのeコマースストアを運営していたときに、このパッケージングの問題を直接目にした。持続可能でスケーラブルな保護パッケージに選択肢がなかったことは、やがてウール(羊毛)の再発見へとつながった。これは、弾力性に富み温度と湿度を調整してくれる手つかずの資源だったのだ。

その結果、気泡緩衝材の代わりに、余った羊毛を使用する彼らのスタートアップが誕生した。彼らのウールベースのパッケージは、エンドユーザーによる再利用、転用、返送が可能だ。最終的な目的はソリューションを「閉ループ」にして廃棄されるものがないようにすることである。

Woolaはエストニアに生産施設を開設し、2020年12月に最初の製品を発売した。ウール製の封筒が、市場に出た最初の製品だった。現在製品は、英国、フランス、ドイツへ拡大している。2022年1月に発売される次の製品は、飲料会社を対象としている。

彼らはこのたび、Future Venturesが主導する250万ユーロ(約3億2000万円)のシードラウンドを行った。ラウンドにはさらに、Veriff(ベリフ)のCEOのKaarel Kotkas(カーレル・コトカス)氏、Veriffの共同創業者のJaner Gorohhov(ジェイナー・ゴロコフ)氏、VeriffのVPのKristinaLilleõis(クリスティーナ・リリワー)氏、Near Future Summit(ニア・フューチャー・サミット)の創業者のZem Joaquin(ゼム・ホアキン)氏、ブルーボトルコーヒー会長のBryan Meehan(ブライアン・ミーハン)氏が投資家として参加している。Woolaのこれまでの投資家には、Pipedrive(パイプドライブ)、Bolt(ボルト)、エンジェルファンドのLemonade Stand(レモネードスタンド)の共同創設者たちが含まれている。

WoolsのCEOで共同創業者のAnna-Liisa Palatu(アンナ=リサ・パラトゥ)氏は「気泡緩衝材は、何年もの間包装業界を支配してきましたが、その減少は避けられません」という。「この気泡緩衝材業界が駄目な理由は2つあります。1つは化石燃料への依存、そしてもう1つは使い捨てという発想です。パッケージングをより持続可能なものにするために、この両者を取り除く必要があるのです」。Jevgeni Sirai(ジェフゲニー・シライ)氏とKatrin Kabun(カトリン・カブーン)氏が共同創業者として加わっている。

Future VenturesのSteve Jurvetson(スティーブ・ジャーベンソン)氏は、次のようにコメントしている「eコマースが隆盛を誇る中で、使い捨てのプラスチックパッケージは手に負えないものになっています。Woolaは、それをすべて、これまでは燃やしたり埋めたりされていたスクラップウールを使った美しい封筒へと置き換えることができるのです。世界は、より健康的な未来のために、石油化学経済に代わる持続可能な手段を必要としているのです」。

羊毛は手つかずの資源だ。ヨーロッパでは現在年間20万トン以上の羊毛が廃棄されている。Woolaによると、これは世界の気泡緩衝材需要の120%を満たすのに十分な量だという。

スタートアップの競合相手は、Ranpak(ランパック)やS-Packaging(Sパッケージング)が提供するリサイクルペーパー製の気泡緩衝材などだ。

画像クレジット:Woola team

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(文: Mike Butcher、翻訳:sako)

需要に対する工場の対応力向上のため金属加工の製造サプライチェーン見直すFractory

新型コロナウイルスのパンデミックで甚大な被害を受けた製造業界。しかし最近、その活気を取り戻す兆しがいくつか見えてきた。その1つは、変動する経済やウイルスの感染拡大など不安定な要素によって需要が上下するなか、需要に対する工場の対応力を高めるべく、新たに取り組みが進められている点だ。柔軟なカスタム製造で新たに頭角を現しつつあるスタートアップ企業のFractory(フラクトリー)は、2021年9月初旬、シリーズAで900万ドル(約9億8900万円)の資金調達をしたことを発表し、その傾向を改めて際立たせる結果となった。

この資金調達は、初期成長やポストプロダクション、ハイテクのスタートアップなどに注力する欧州の投資会社、OTB Ventures(OTBベンチャーズ)主導で進められた他、既存の投資会社であるTrind Ventures(トリンド・ベンチャーズ)Superhero Capital(スーパーヒーロー・キャピタル)United Angels VC(ユナイテッド・エンジェルズVC)Startup Wise Guys(スタートアップ・ワイズ・ガイズ)、そしてVerve Ventures(ヴェルヴェ・ベンチャーズ)もこの調達に参加した。

Fractoryはエストニアで設立され、現在は英国・マンチェスターを拠点とする会社だ。従来、国内の製造業向けの強力なハブとして存在し、顧客と緊密な協力体制を築いてきた。そのFractoryが、カスタムの金属加工品を必要とする顧客がより簡単にアップロードや発注ができるよう、そして工場側もそれらのリクエストに応じて新規の顧客や仕事を獲得できるように、プラットフォームを構築したのだ。

FractoryのシリーズAは、当社のテクノロジーを引き続き展開し、さらに多くのパートナーをエコシステムに取り込む目的で用いられる。

現在までに、Fractoryは2万4000人もの顧客を獲得し、何百もの製造業者や金属関連会社と連携してきた。合計すると、250万個以上もの金属部品の製造を支援してきたことになる。

ここで整理しておくと、Fractory自体は製造業者ではなく、同社にはそのプロセスに参入する計画もない。業種はエンタープライズ向けソフトウェアであり、製造(現在は金属加工)を担当できる会社向けにマーケットプレイスを提供し、金属加工品を必要とする会社とやり取りしている。インテリジェントなツールを活用して必要な加工品を特定し、該当の加工品を製造できる専門の製造業者にその潜在的な仕事を紹介するというわけだ。

Fractoryが解決しようとしている課題は、多くの業界のそれと同じである。さまざまな供給や需要が発生し、変動が多く、一般的に仕事の調達方法が非効率なケースだ。

Fractoryの創設者兼CEOのMartin Vares(マーティン・ヴァレス)氏は、筆者に対し、金属部品を必要とする企業は1つの工場を得意客にする傾向があるようだと話す。だが、これはつまり、その工場が仕事に対応できない場合は企業が自力で他の工場を探さないといけないということだ。時間がかかるうえ、費用も重なるプロセスとなる。

「製造業は非常に断片化した市場で、製品の製造方法も幅広くあるため、その2つの要素が複雑に絡まり合っているんです」ヴァレス氏は続ける。「昔は、何かをアウトソーシングするには何通ものメールを複数の工場に送る必要がありました。とはいえ、30社ものサプライヤーに個別に送ることは到底できません。そこで、ワンストップのショップを立ち上げたのです」。

一方で、工場はダウンタイムを最小化するため、仕事の工程を改善できないか常に模索している。工場としては、仕事がない時間帯に作業員を雇ったり、稼働していない機械のコストを払ったりする事態を避けたいのだ。

「アップタイムの平均キャパシティは50%ですね」とヴァレス氏は、Fractoryのプラットフォームにおける金属加工施設(さらには業界全般の施設)についてこのように述べている。「使用中の機械よりも、待機中の機械の方がずっと多いんです。そこで、余剰キャパシティの問題を何としても解決し、市場の機能性を高めて無駄を削減したいと考えています。工場の効率性を高めること、これが持続可能性にもつながるのです」。

Fractoryのアプローチは、顧客をプロセスに取り込むスタイルだ。現在、これらの顧客は一般的に建築業界をはじめ、造船、航空宇宙、自動車といった重機産業に多く存在し、これらの顧客に、必要な製品を規定したCADファイルをアップロードしてもらっている。これらのファイルは製造業者が集まるネットワークに送信され、そこで仕事の入札と引き受けが行われる。フリーランス向けマーケットプレイスの製造業版といったようなものだ。その後、これらの仕事のうちおよそ30%は完全に自動で進められ、残りの70%については、仕事の見積書や製造過程、配達などのアプローチに関してFractoryが関与する形で顧客にアドバイスを行っている。ヴァレス氏によると、今後はさらにテクノロジーを搭載し、自動化できる割合を増やしていくとのことだ。RPAへの投資を拡大するだけでなく、顧客の希望や最適な実行方法をより良く把握するためのコンピュータビジョンについても投資を拡大する。

現在、Fractoryのプラットフォームは、CNC加工などの仕事を含め、レーザー切断サービスや金属の曲げ加工のサービスについて発注の支援を行っている。次の目標は、産業向けの3D印刷に対応することだ。石細工やチップ製造など、他の素材についても検討を進める。

「製造業は、ある意味では最新化がいつまでたっても進まない業界ですが、それも驚くことではありません。設備が重く、コストも高いため「壊れるまで修理はするな(触らぬ神に祟りなし)」というモットーは通常この業界では通用しないからです。そのため、せめて従来からある設備をより効率的に運用しようと、よりインテリジェントなソフトウェアを構築している企業が、ある程度基盤を固めることができているのです。米国で生まれた大手企業のXometry(ゾメトリー)は、同じくカスタム部品を必要とする企業と製造業者の架け橋を築いた企業ですが、そのXometryは2021年初めに株式を公開し、今では時価総額が30億ドル(約3,292億円)以上にのぼっています。他にも、Hubs(ハブズ)(現在はProtolabsによって買収)やQimtek(キムテック)などが競合として存在します」。

Fractoryが売り込んでいるセールスポイントは、一般的に顧客の地域に根差した製造業者を重視することで、仕事における流通の側面を低減させ、炭素排出量を抑えられるよう取り組んでいる点だ。ただし、会社の成長に応じて当社がこのコミットメントに遵守しつづけるのかどうか、そうであればどのようにそれを実現するのかは今後に注目だ。

現在のところ、投資会社はFractoryのアプローチとその急速な成長を証拠に、これからも業界に影響を及ぼすだろうと見込んでいる。

「Fractoryは、他の製造環境では見られないエンタープライズ向けのソフトウェアプラットフォームを生み出しました。急速に顧客を獲得している事実から、Fractoryが製造サプライチェーンにもたらす価値は明らかに実証されています。これは、イノベーション対応できるエコシステムを自動化し、デジタル化するテクノロジーです」Marcin Hejka(マルチン・ヘイカ)氏は声明でこのように述べている。「私たちはすばらしい製品と才能あふれるソフトウェアエンジニアのみなさんに投資しました。彼らは、製品開発に全力を注ぎ、圧倒的なスピードで国際的に成長しつづけています」。

画像クレジット:Fractory

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)