トヨタ自動車本体がリードしたラウンドで10億円超を調達したオプティマインドとは?

名古屋を拠点とするオプティマインドは10月24日、トヨタ自動車をリードインベスターとして、MTG Ventures、KDDIが設立しグローバル・ブレインが運営するKDDI Open Innovation Fund 3号、ほか1社を引き受け先とする第三者割当増資により、総額約10億1300万円の資金を調達した。

オプティマインドは、ラストワンマイルの物流ルート最適化を目指す古屋大学発のスタートアップ。昨年、オープンソースの自動運転OS「Autoware」を開発した加藤真平氏が取締役会長兼CTOを務めるティアフォーや、倉庫事業を中心にアートのサブスクリプションや物流網のオープン化などの事業を手がける寺田倉庫から数億円規模を資金調達していた。

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オプティマインドが開発する配送ルート最適化サービスの「Loogia」(ルージア)は、ラストワンマイルの配送ルートをAIを活用して短時間で計算するクラウドサービス。「どの車両が、どの訪問先を、どの順に回るか」という配送計画を、複雑な条件や現場の制約を考慮しながらAIが数分で作成し、ドライバーに効率的なルートを提供する。

具体的には、ベテランドライバーが走行したデータを取り込んで教師データとし、より精度の高いルートの算出やベテランドライバーのノウハウを共有。配送ルートの作成については、マンションなどの入り口の位置や道路幅などを考慮して最適な道順を算出するという。

同社が昨年、郵便局と共同で実施した実証実験では、ベテランドライバーと新人ドライバーでは、ルート作成に要する時間がそれぞれ平均14分、44分と30分の差が生まれたほか、移動時間についても平均34分、57分と20分以上の開きがあった。これをAIによって最適化することで、新人であってもAIによるルート作成が6分、移動時間が45分に軽減できたという。平均65分の配達先滞在時間を含めた総配達時間は、ベテランドライバーが113分、新人ドライバー+AIの組み合わせでは116分と、差が3分に縮まったという結果が得られた。

オプティマインドは今回の資金調達により、引受先と個別に取引強化を進める。具体的には、トヨタがが構築するモビリティサービス向けのさまざまな機能の提供を目指したオープンプラットフォームであるMSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)に、オプティマインドのルート最適化技術を導入して共同開発を進めていく。MTG Venturesからは経営や事業推進に関する知見、人的ネットワークを用いた支援を受け、オプティマインドの企業価値向上と経営体制の強化を図る。KDDIとは、IoT/AIを活用した「需要予測×ルート最適化」による配送ソリューションの共同開発を進めるという。そのほか、プロダクト開発体制の強化、人材の獲得・育成、マーケティング施策の拡充などにも当てられる。

 

AIでラストワンマイルの配送ルートを最適化、名古屋大発のオプティマインドが数億円を調達

名古屋大学発の物流AIスタートアップであるオプティマインドは6月1日、自動運転ソフトウェアを開発するティアフォー寺田倉庫を引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は公開されていないが、関係者によると数億円規模になるという。なお調達を行ったのは5月とのこと。

オプティマインドが取り組むのは、物流業界におけるラストワンマイルの配送最適化だ。具体的には組み合わせ最適化や機械学習、統計の技術を用いて「どの車両が、どの訪問先を、どの順に回るべきか」を効率化するクラウドサービス「Loogia」を開発中。7月のリリースを予定している。

近年、物流業界ではドライバーの高齢化や人材不足が課題となっている一方で、AmazonなどECの拡大によって物流量の増加や配送の複雑化、小口化が進行。今後この流れがさらに加速する可能性も踏まえると、限られたリソースを最大限に生かすためのシステムは不可欠だ。

オプティマインドで開発を進めるLoogiaでは、2段階のプロセスを経て最適な配送計画を割り出す。

まず機械学習や統計の技術を用いて、取得したデータから物流に特化した地図を構築するのが第1段階。たとえば「マンションの出口はどちらにあるか、車幅はどれくらいか、走行速度はどのくらいになるのか」といった規則や傾向が溜まった地図のようなものだ。そして第2段階でその地図データと核となるアルゴリズムを用いて、個別の条件下における最適な配送ルートを提示する。

同社代表取締役社長の松下健氏によると、これによって「配送ルートを作る時間の削減と(人力で作成していた時よりも効率的なルートが作れることで)実際の配送にかかる時間の削減が見込める」という。

オプティマインドは2017年秋から2018年にかけて日本郵便とサムライインキュベートが実施したインキュベーションプログラムに採択され、Demo Dayでは最優秀賞を受賞。その際に郵便局で実証実験を実施したしたところ、特にノウハウや経験が少ない新人配達員の業務時間が大きく削減されたのだという。

日本郵便との実証実験の結果。資料はオプティマインドより提供

「配達員はまず配送ルートを作成した上で、それが最適なのか不安を抱えながらも配送しているというのが現状。Loogiaではルート作成という属人的な業務を人工知能を使って効率化するとともに、(組み合わせ最適化技術により)人間では考慮できないレベルでの最適化を実現することで、配送業者をサポートする」(松下氏)

もちろん配送効率化を支援するシステム自体は以前からあるが、松下氏によると買い切り型で導入コストが高く、かつアップデートがされない仕様のものも多かったそう。

Loogiaのターゲットは宅配に限らず、弁当や食材、メンテナンスや引っ越しなど、ラストワンマイルの配送を手がける幅広い業者。小口の配送業者でも継続して使いやすいように、SaaSモデルで車両台数に応じて課金する仕組みを用いる。

名古屋大学の研究をプロダクトに落とし込んで展開

オプティマインドのシステムは名古屋大学の組み合せ最適化技術を活かしたもの。特に配送最適化の分野では高レベルの研究実績とアルゴリズムを持っているそうで、社員の中には松下氏を含め同大学院の博士課程に在籍するメンバーも多い。また技術顧問という形で情報学研究科の柳浦睦憲教授も参画している。

同社はもともと2015年に合同会社としてスタート。当初は物流に限らず、最適化技術を活かしたコンサルティング事業をやろうとしていたそう。松下氏いわく「その時に1番属人的で、変えるのが難しそうだったのが物流業界だった。だからこそ業界が抱える課題を自分たちが解決していきたいと思った」ことと、自身が研究していた領域が配送計画問題だったこともあり、物流領域に絞った。

今までは個別の企業ごとにコンサルという形で配送ルートの効率化サポートをしていたそうだが、より多くの企業の課題を解決するため、これからはクラウドサービスとして広く提供する。また「新しいサービスを展開したい人に対して配送計画というノウハウを提供する会社(プラットフォーム)」を目指し、SaaSに限らず計算エンジンのAPI連携やR&D事業も進めていく方針だ。

「今は最適システムの基盤作りの段階。その上に実配送データを収集・解析してGoogleなどがもっていないような『物流に特化した生データの地図』を構築していく。将来的にはライドシェアや自動運転が普及した時に、どのように回ればいいのかという部分においては、プラットフォーマーとしての立ち位置を確立したい」(松下氏)

今回の調達元である寺田倉庫では物流APIを企業やスタートアップに提供。エアークローゼットサマリーなどにも資本参加をした実績もある。同社にとっても配送ルートの最適化は重要で、オプティマインドとは事業シナジーもあるだろう。また松下氏の話す自動運転が普及した後の展望も踏まえると、このタイミングで自動運転ソフトウェアを開発するティアフォーから出資を受けている点も興味深い。

「今はぐっとアクセルを踏むタイミング」(松下氏)ということで、まずは調達した資金と元に組織体制も強化し、Loogiaの開発と導入企業の拡大に取り組むという。