「サポートチームのためのOS」提供を目指すAssembledが3.2億万円調達

顧客管理などに使われるCRM(Customer Relationship Management)ソフトウェアは、企業のIT支出全体の4分の1を占めている。しかし皮肉なことに、外部からの問い合わせや外向けのマーケティング活動の管理に対して、SalesforceやSAPのようなプラットフォームに多くの費用が支払われている一方で、そうしたソフトウェアを利用するチームがよりよい仕事をするためには、どうすればよいかという点に多くの注意が払われては来なかった。

通話のピーク時間はいつなのか?最も一般的な質問は何なのか?どのスタッフがどのような質問に最も精通しているのか?そして、ある時点で実際に働いているのは誰か?こうしたことは課題の一部に過ぎないが、多くの場合、こうした課題の支援に使われるツールはほとんど存在していない。各組織はこうした場合、単にGoogleスプレッドシートやカレンダーアプリのようなプラットフォームを無理やり使うか、何もしないままになりがちだ。

米国時間3月11日、Assembledという名のスタートアップがこうしたギャップを埋めるためにステルスモードから姿を表した。その提供するプラットフォームは、カスタマーサポートチームが遭遇し(そして良い回答を行えた)質問や課題に特にアプローチするように構築され、チームがよりよく働けるようにするものだ。

Assembledはまず、設立チームがこれまで勤務していたStripeが主導するシードファンディングから310万ドル(約3億2000万円)の資金を得たことを公表した。この調達にはほかに、Basis Set Ventures、Signalfire、および複数のエンジェル投資家(主にStripeの元従業員たち)も参加している。Assembledの長期的な目標は、共同創業者のRyan Wang(ライアン・ワング)氏が「カスタマーサポートのためのロジスティクス」と表現するツールを構築することだ。

「サポートチームのためのオペレーティングシステムになりたいのです」と彼は言う。同社の直近の焦点は、カスターサポート担当者のパフォーマンスに当てられることになる。「チームは、トップパフォーマーとその時間の使い方について学び、その意思決定力を強化するためのデータを共有したいと考えているのです」と続ける。

現在350億ドル(約3兆6000億円)と評価されている、支払いならびに関連サービスプロバイダーのStripeは、その関心領域に隣接するスタートアップやその他の小規模ビジネスとの間に関係を築く中で、スタートアップに資金提供を行う大規模な事業を展開してきてきた。その意味で、StripeはAssembledにとっての戦略的投資家の1つと考えることができる。Grammarly、Gofundme、Hopper、そしてHarry’sと並んで、StripeはAssembledの有力顧客の1つなのだ。

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兄弟であるJohn Wang(ジョン・ワング)氏と、AssembledのCEOになったBrian Sze(ブライアン・ジー)氏(どちらも元Stripe)らと、共同創業を行った元Stripeのエンジニアであるライアン・ワング氏は、とあるインタビューの中で、今回のスタートアップのアイデアは、Stripeの初期メンバーであった彼らの経験から直接得られたものだと語っている。

Stripeの初期段階でのアプローチは、極めて草の根的なものだった。従業員たちはオフィスの外で集まり、サポートチケットのレビューを行って、傾向を見定め、何を修正すればよいかを見出し、将来的に課題をどのように扱って行けばよいかなどを話し合っていた。

このやりかたはおそらく、顧客が必要としているものをチームが理解するために最適な方法だったのだ。だが、最終的にはこのアプローチには問題があった。こうしたやりかたをどのようにスケーリングすれば良いのだろうか?技術者にとっては、目指す解決方法は明らかだ。それを行うために役立つプラットフォームを開発するということである。

「CRMという世界の中で、カスタマーサポートをサポートするというビジネスに、技術が実際は適用されていなかったことに気が付きました」とワング氏は言う。「それが私たちがStripeを去った理由です。私たちはそれが、適用範囲の広い問題であることを理解していたのです」。

カスタマーサポートチームの従業員管理を改善するためのツールを作成することは、既に独自の自家製ソリューションを通じてこれらの問題に対処しようとしている企業にとっては、難しいことではない。ワング氏は、現在の顧客の1つがそうしたデータの膨大なマップをGoogleスプレッドシート上に構築して、カスタマーサポート従業員の管理にアプローチしようとしていたと明かす。しかし結局「彼らはそのGoogleスプレッドシートを壊してしまったんですよ。とにかく大きすぎたんです」と語った。

実際、Stripeの運営責任者であるBob van Winden(ボブ・バン・ウィンデン)氏は次のように述べている。「数え切れない数のビジネスが、常時Stripeに依存しています。それらをサポートするために、無料の24時間年中無休の電話およびチャットサポートを含む、高速で信頼性の高いカスタマーサービスを提供するための、細部にこだわっています。このことが私たちをAssembledへと向かわせました。これを使うことによって、私たちのグローバルサポートチームは、Stripeユーザーの成長を支援するための体制を整え、集中することができているのです」。

企業がこうした問題を一度も意識したことがなかったり、またはそれらを知ってはいるものの、解決は難しすぎると思っているために努力をしていなかったりする場合は、ユースケースはそれほど明白ではない。(ここでの古典的な問題は、Assembledが「あまりにも賢すぎる」、あるいは「時代よりも先行しすぎている」ことだ)。それは、Assembledにとっては、オープンな市場であると同時に、未踏領域への挑戦でもあるのだ。

顧客に対するアプローチの1つは、より確立されたCRMパッケージと統合することだ。現在Assembledは、Salesforce、Kustomer、Zendeskと統合されていて、これらのデータを吸い出し、より多くの洞察をユーザーに提供することができる。

また別のアプローチは、企業運営を改善するために使うことのできる、分析およびデータベースからの知見の、幅広い傾向を知ることができる一連のツールを提供することだ。実際、インバウンドリクエストの狭い範囲に焦点を合わせていたCRMの常識を、Kustomerが覆したように、カスタマーサポート担当者が何をいつ行うべきかを把握するためのデータを解析する方法を、Assembledは再検討している。

スタートアップのプラットフォームは、インバウンドサポートの問い合わせ量を予測し、それをチャット、メール、電話、ソーシャルメディアなどの複数のチャネルでカバーする人員配置計画にマッピングする手段を提供する。その人員配置計画はまた、グループや個々人のカレンダーを設定するために用いられる。

一方、チームのアクティビティは、チーム全体が確認し作業をより良く調整するために使用できる一連の計測指標によって追跡される。

この先、Assembledが複数の異なる方向に展開していくことが想像できるだろう。1つは、カスタマーサポートに限ることなく、より多くのチームに従業員管理手段を提供することかもしれない、だがインバウンドリクエストを管理し、より効率的な作業計画に変換する方法も生み出していかなければならない。また別の方向は、「顧客」が実際に誰であるかに応じて、顧客サポートが異なることを意味する現実に対応するために、顧客サポートチームの機能を補完するツールの種類を拡大し続けることだ。

「私たちは『カスタマーサポート』という用語が進化していると考えています」とワング氏は語る。「大きな悩みは、その代わりとなる包括的用語がどうあるべきかということです。一般的に言うなら、私たちの望みは、カスタマーサポートの意味を変え、より向上させたいというものです。それはコールセンターだけに限られたことではなく、カスタマーエクスペリエンスを向上させるための、製品に関するあらゆる要素を含むものです」。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:sako)

MessageBirdからカスタマーサービス市場を一変させるInbox.aiが登場

アムステルダムに本社を置くクラウド型のコミュニケーション・プラットフォームを運営するMessageBird(メッセージバード)は米国時間3月10日、またしても新製品を発表した。今度は、3500億ドル(約37兆円)規模のカスタマーサービス市場に狙いを定めている。なお同社は、米国のAccel(アクセル)、欧州のAtomico(アトミコ)の支援を受けている

Inbox.ai(インボックス・エーアイ)と名付けられた新製品は、Slackの社外コミュニケーション版ともいえるプロダクトだ。大半の機能が無料で使え、顧客が選んだほぼすべてのメッセージアプリで企業と連絡が取り合える。対応するアプリは、WhatsApp、SMS、Voice、Messenger、Instagram、WeChat、Apple Business Chat、RCS、Line、Telegramとなっている。顧客が普段から「最初に使う」デジタルメッセージで対応できるというのがウリだ。メッセージの内容については、ローンチの時点ですでに、テキスト、画像、動画、位置情報など数多くのコンテンツに対応している。

そして恐らく最も重要と思われるのが、顧客が使ったメッセージアプリとは関係なく、受信したメッセージと客との会話がひとつのスレッドに表示されるため、チケット管理やカスタマーサポート担当者たちとの連携が簡単にできる点だ。インテリジェントな機能も搭載されている。AIがキーワードを分析し、客のニーズの予測して適切な返答のリストを示すなどだ。サポート担当者は、言葉をドラッグ&ドロップして自動応答用のメッセージを組み立てられるほか、顧客満足度調査やメッセージのルーティングルールを決めたりもできる。

もともと開発者を主なターゲットとしていた企業だけに、Inbox.aiはウェブフックを利用してさまざまなサードパーティー製ツールと統合できる。また、Shopify、Slack、Salesforce、Jiraなど数多くのアプリへの対応も最初から組み込まれている。これには、Inbox.aiで作られたコンテンツを、企業がさまざまな通信、セールス、その他の業務に使用しているソフトウェアと同期させる能力も含まれている。多少時間が掛かったとしても、Inbox.aiが万能のツールとなる企業もあるだろう。

MessageBirdの創設者でCEOのRobert Vis(ロバート・ビス)氏は、私とのビデオ通話でInbox.aiのデモを個人的に見せてくれた。その中で、新たに導入した企業の従業員だけでなく、客の側もいかに早く使い方を習得できるかがわかった。彼は私に、ある会社のサポート電話の番号をWhatsAppで送るよう指示した。すると即座にソフトウェアの画面に私のメッセージが表示されるのが見えた。私は自分の訴えを補う写真を送ることができ、その返答としてリッチメディアが送られてきた。

この新製品の推進力になったのは、ビス氏自身が募らせた一般企業の顧客サポートに対する「現在では、何時間も電話を保留にして待たされたり、電子メールの返事が来るのに24時間もかかるなんてことは、もはや受け入れられない」という不満だ。

彼は、その場でさっと計算してこう指摘した。35歳の時点で彼はすでに電話を保留したまま人生のうちの2週間を過ごしたことになるという。彼はまた、Inbox.aiでは、一貫性のないサポートの問題も解決したいと話していた。別のサポート担当者や他の部門に電話を回されたときに、もう一度同じ説明を繰り返さなければならないといった、よくある問題だ。

「MessageBirdの観点から、私たちはこうしたAPIを開発し、人々はすでにそうしたエクスペリエンスを構築できる手段を得ました。それなのに、こんな世界で暮らしている必要がありますか?」とビス氏は、つい最近携帯電話会社で経験した嫌な思いを振り返り大げさに訴えた。「メッセージを送れば問題が簡単に解決される世界に私は暮らしたい。電子メールで連絡してきて、その上でこちらから電話を掛けなければならないなんて、ごめんです」と続ける。

そうしたわけで、開発者にフックを提供して、インフラを構築するという重労働よりも、MessageBirdは、一般ユーザーに向き合う初めての製品に賭けることにしたのだ。取締役会の中には眉をひそめる者もいたと彼は話していた。

それを実現するために、MessageBirdの担当チームは12カ月でInbox.aiを完成させ、続けて、顧客、サポート担当者、管理者を対象に幅広い調査を実施した。ローンチまでには、このソフトウェアはテストを終えており、すでに欧州のHelloFreshとDeliveroo、アジアのZilingo、中南米のJoin BuggyとTix Telecom in Latin Americaで使われている。

「信頼できる唯一の情報源」を作ろうという試みは数多くあったにも関わらず、なぜ今まで誰もこの問題に取り組まなかったのかを尋ねると、ビス氏は「みんながその話をしていたが、誰もやらなかった」と答えた。その理由は、関連し合う3つの難しい問題を理解しなければならないからだ。

第一は、多種多様なあらゆるコミュニケーションチャンネルからデータを取り込まなければならないことだ。これは、MessageBirdの以前のソフトウェアが解決している。第二は「エクスペリエンス世代」。画像、動画、位置情報、トラッキングコード、割り引きといった充実した内容のエクスペリエンスを、サポート担当者が簡単に提供できるようにすることだ。ほとんどの企業は、これを可能にする開発資源を持ち合わせていないとビス氏は指摘する。そして第三がUIだ。サポート担当者がすべてのチャンネルにわたって境目なく、最初にどのチャンネルから送られてきたかを意識せずに、コミュニケーションをとり、チケット管理を行えるようにしなければならない。

「これは新しいカテゴリーだと思います。これは、物事が収斂する場所だと思います」とMessageBirdのCEOは話す。「たくさんのツールと競合しますが、私たちはそのどれでもありません。私たちは、5年後にすべてのツールがどうなっているかを考えた結果なのです」と語る。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

LINE@の1:1トークを自動化、カスタマーサポートを加速させる「CScloud」が公開

近年、日々のやりとりにメールではなくLINEやSNSを活用する人が増えてきた。それに伴って、企業とユーザーのコミュニケーション手段にも変化が生まれてきている。

たとえばTwitterやFacebookで公式アカウントを開設してファンと積極的に交流をしたり、Web接客ツールを用いてプロダクトサイトを訪れたユーザーと対話をしたり。問い合わせ窓口やカスタマーサポートにおいては、LINE@を活用する企業も増えてきた。

ユーザーからするとLINEやSNSはなじみがある上、メールや電話よりも気軽に使いやすい。ただその一方で企業側としては従来に比べてはるかに多い問い合わせがきてしまい、対応が追いつかなくなるケースもあるようだ。

LINE@の使いやすさを維持しつつも、問い合わせ対応をより効率化することはできないか。本日スタークスが正式版を公開した「CScloud(シーエスクラウド)」は、そのような課題意識のもとに作られたLINE@の1:1トークを自動化・効率化するサービスだ。

自動シナリオとチームによる効果的な有人応対の組み合わせ

CScloudではLINEのMessaging APIを利用し、LINE@における個別のカスタマーサポート(CS)を自動シナリオと人による応対を組み合わせて効率化する。

主な特徴は「1対1のトークをチームで共有・管理できること」「自動シナリオでよくある質問への回答を自動化できること」「顧客情報や問い合わせ内容に応じてセグメント配信できること」の3点。問い合わせ窓口やCS部門が導入することで、問い合わせからの成約率向上や応対コストの削減が見込める。

スタークス取締役の大塚真吾氏は「今はすべての対応を人がやっている状況だが、そのうち7割くらいは人じゃなくても回答できると考えている。自動化できれば(担当者の)手間が削減されるだけでなく、即時対応できるようになるのでユーザーにもメリットがある」という。

たとえばECサイトにおいて顧客が注文した商品のキャンセルをしたい場合、どのような問い合わせか、どの商品のキャンセルかといった具合に一連のシナリオを設計。顧客が問い合わせをしてきた際に担当者が不在でも、シナリオに沿って進めればよくある質問への回答が自動で完結するという仕組みだ。もちろん全ての質問がシナリオで完結するわけではないので、途中から有人応対に切り替えることもできる。

重要度高まるCSをシステム面でサポート

これまでLINE@においては、各問い合わせをチームで共有し、担当者を設定したりステータスを見える化したりすることが難しかった。そのためCScloudでは当初LINE@のコミュニケーションをチームで対応できることを目的として、2017年12月にベータ版を開発。トライアルで美容品ECやブランド買い取りサービスなど数百社に利用してもらう中で、自動化の必要性を感じたのだという。

オペレーター画面のイメージ

「サブスクリプション型のビジネスが増えてきていることもあり、CSの重要度も高まってきている。LINE@はユーザーからすれば(メールなどよりも)圧倒的にコンタクトをしやすいが、人手不足などで対応が間に合わず導入できない企業や、大変でやめてしまった企業もある。そのような企業でもLINE@を活用したCSを実現できるように、システム面からサポートしていきたい」(大塚氏)

今後は顧客管理システム(CRM)との連携やチャットボットとの連携などを予定。LINE@での顧客応対を自動化してくための機能を順次リリースしていく。またスタークスではCScloudのリリースに合わせて、CS業界に特化したWebメディア「CSJournal」も公開。業界人へのインタビューなどを通じてナレッジの共有も進めていく方針だ。

コールセンターのフィードバック・プラットフォーム「Cogito」がシリーズBで1500万ドルを調達

People working at conference table in office

現地時間11月18日、カスタマーサービス向けにリアルタイムなフィードバック・プラットフォームを提供するCogitoは、シリーズBで1500万ドルを調達したことを発表した。本ラウンドを含めると、同社のこれまでの調達金額は合計で2250万ドルとなる。

MIT Media Labのスピンオフ企業である同社は、行動科学の原理をコールセンターに適用することでカスタマーエクスペリエンスの向上を目指している。過去の成功例と現在進行中の会話との間で、会話の各特徴を比較しているのだ。Cogitoでは、声の大きさや、会話が途切れた時間、会話のスピードなどの特徴を模範例と比較し、それに基づいてコールセンターの従業員にリアルタイムなフィードバックを提供している。同プロダクトはこれまでに、HumanaやCareFirst BlueCross BlueShieldなどのFortune 500企業に採用されており、Cogitoはこれらの企業に対する顧客満足度を20%向上することに成功したと主張している。

行動科学のビジネスへの応用はまだ始まったばかりだ。大量のデータを利用する機械学習によって行動科学の研究が進歩するなか、今後さまざまな業界でユニークな応用例が誕生していくだろう。

本ラウンドでリード投資家を務めたのはOpenView Venture Partnersだ。設立から10年のOpenViewは、ボストンにあるCogitoの本社から歩いて通える位置にある。OpenViewのパートナーであり、Cogitoの取締役に新しく就任したScott Maxwellにとっては非常に便利だろう。Maxwellが取締役会に加わることにより、彼のエンタープライズ向けクラウドサービスに関する知識がCogitoにもたらされることになる。また、彼はかなり実践的な人物としても知られている。既存投資家であるRomulus CapitalSalesforce Venturesも今回のラウンドに参加している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter