Facebookが過去最大1000億円でKustomerを買収、カスタマーサービス事業の強化を目指す

米国時間12月7日、Facebook(フェイスブック)は、ビジネス向けサービス構築のためとして過去最大の買収を行った。新たにフェイスブックの傘下に入ったKustomer(Facebookリリース)は、カスタマーサービスに根本的な変化をもたらすことを目指すスタートアップだ。同社は顧客のソーシャルメディアその他のチャネルでの活動及び顧客とユーザー企業との間の関係を総合し、顧客の全体像を得て企業に優れたデータを提供するアプローチを採用している。

詳細は明らかにされていないが、事情に通じた情報源はTechCrunchの取材に対して、買収価格が10億ドル(約1040億円)程度だったことを確認した。この取引の記事(と10億ドルという価格)は12月7日のWSJに掲載されている。

Kustomerの共同ファウンダーはCEOのBrad Birnbaum(ブラッド・バーンバウム)とJeremy Suriel(ジェレミー・スリエル)の2人で、これまでにAirtime、AOLなどで一緒に仕事をしてきた。Kustomer以前のスタートアップはSalesforceへの売却に成功している。Kustomerへの投資家はCoatue、Tiger Global Management、Battery Ventures、Redpoint Ventures、Cisco Investments、Canaan Partners、Boldstart Ventures、Social Leverageの各社で総額1億7400万ドル(約181億円)を調達している(未訳記事)。PitchBookのデータによれば、最新の会社評価額は7億1000万ドル(739億円)だった。

フェイスブックの買収の動機はわかりやすいが、同時に、戦略的な方向性を示す非常に重要なサインでもある。

フェイスブックは、プラットフォーム上の企業にカスタマーサービスを提供するビジネスを着実に構築してきた。Kustomerの買収はこのサービスの一層の強化を目指していることを示すものだが、将来はこれを有料化して収入の柱の1つとなるサービスとしていきたいのだろう。

現在、フェイスブックのビジネス利用者は約1億7500万人だ。これには独自のホームページやアプリではなくフェイスブックを主要なオンラインのアイデンティティ(身元)としている企業へのアクセスとフェイスブックグループのアプリ(Instagram、Messenger、WhatsAppなど)を顧客との会話のチャンネルの1つ(唯一という場合もある)としている企業へのアクセスの双方を含む数字だ。

20億人以上というフェイスブックの全ユーザー数と比べれば、1億7500万人はさほど大きな数字に感じられないかもしれない。

しかしSnapchat、TikTok、その他のサービスとの競争が次第に激しさを増すにつれて、優れたビジネス向けプロダクトを持つことは企業とそこにアクセスするユーザーをフェイスブックのエコシステムに囲い込んでおくために重要となる。また同社では現在も広告収入が他を大きく引き離して同社の収入のメインだが、企業向けサービスは広告を補完する新しい収入分野となる道を開くだろう。

実際、カスタマーサービスはフェイスブックにとって非常に興味深い方向だ。これまでもメッセージングアプリ上に企業向けの機能を追加(未訳記事)するために多大の投資をしてきた。たとえば最近では、企業がWhatsAppアプリ内に簡単にショッピングその他の機能を追加できるようにしている。カスタマーサービスは、これまでのフェイスブックの閉鎖的なエコシステムの外に広がる広大な分野だ。

実際、Kustomerを始めCRM(顧客関係管理)企業が最近何をしているかを説明するために多用されている用語は「オムニチャンネル」だ。つまりアプリ、ソーシャルメディア、ウェブサイト、チャットボット、電子メールなど顧客との会話が発生するさまざまなチャンネルを総合し、ユーザー企業が顧客の全体像を把握できるようにする。これによりカスタマーサービス要員の仕事が効率化され、ある顧客はどのチャネルから企業に連絡する可能性が高いかなどが的確に示せるはずだという論理だ。コンテキストに基づいた顧客の全体像が把握できれば、企業のカスタマーサポートにとって極めて有益だ。

フェイスブックの場合、これまでCRMプロファイルは、サービスの登録ユーザーに関するものに限られていた。しかしカスタマーサポートの強化はプラットフォームを超えて広く顧客関係を把握し、コントロールすることを目的としている。

偶然だが、ライバルのSnapがカスタマーサポートのための音声チャットのボットを作るVoca.aiの買収(未訳記事)を発表したのが2020年12月初めだった。

SnapがVocca.aiのテクノロジーをどのように利用するのかはまだわからない(Spectaclesに、音声コマンドなど音声ベースのテクノロジーを導入するのかもしれないという推測も出ている)が、我々はこの買収は理に適っていると評価した。私自身「Snapchatをセールスツールに利用している企業にさらに多くのサービスを提供し、プロダクトのポートフォリオを拡大することは適切な方針だ」と書いている。

今回のフェイスブックのKustomer買収は、いろいろな意味で極めてタイムリーな動きだと感じる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Salesforceがカスタマーサービスのリモート化を助けるクラウドツールを発表

パンデミックが猛威を振るう中、世界の多数の企業がCSA(カスタマーサービスを行う社員や契約社員)の分散リモート化を図った。しかしこれが労働力管理の悪夢を生み出している。 CSAが少数の箇所に集約されている場合でさえ多数のリクエストをルーティングし、適切に管理することは簡単な作業ではなかった。ところが大勢の要員がリモートワーク化すると困難は何倍にもなる。

Salesforceはこの問題を解決するためにService Cloud Workforce Engagementと呼ばれる新しいサービスを開発した。SalesforceのエグゼクティブバイスプレジデントでCRMアプリケーション担当ゼネラルマネージャーのBill Patterson(ビル・パターソン)氏は「新型コロナウイルス流行によりCSA要員がリモート勤務となり、さらに顧客側もオンライン化しているため、大量の顧客に対処することは会社にとって大問題となっていると指摘した。パターソン氏はこう書いている。

我々のService Cloud Workforce Engagementは、カスタマーサポートセンターに適切なリモート処理のためのソリューションを与える。全体が単一のプラットフォームであり、たとえ明日なにが起きようとSalesforceのユーザーは柔軟かつ高い耐久性をもって事態に対応することができる。

他のSalesforceのサービス同様、このソリューションもいくつかのコンポーネントで構成されている。まずService Forecast for Customer 360というサービス需要の予測ツールがある。これはAIを利用して(未訳記事)カスタマーサービス要求数を推測し、必要な社員数を計算する。これはクリスマスやブラックフライデー、サイバーマンデーなどあらかじめサービスリクエストの増加が予測される場合だけでなく、予期しないタイミングで急上昇が発生した場合も迅速に対応計画の策定することができる。

次のコンポーネントはOmnichannel Capacity Planningだ。これは予測された全体の需要に基づいてチャット、メールなど多数のチャンネルに要員を最適に配置することを助ける。

最後にカスタマーサービス要員が特定の要求に対して正しい回答ができるよう教育するためのコンポーネントがある。 同社の説明によればこうだ。

社員のパフォーマンスを向上させるために企業は要員の勤務中に直接簡単な学習ガイドを配信することができる。これによりカスタマーサービス迅速に人員を集め、さらにオンラインで継続的にトレーニングを実施することができるようになる。

このService Cloud Workforce Engagementツールは2021年上半期に一般ユーザーにリリースされるという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

従業員全体をいつでも完全に可視化、カスタマーサポートを一元管理するWix Answers

ウェブサイト構築プラットフォームのWixが米国時間8月18日、新会社のWix Answersを公表した。Wix Answersはエンタープライズレベルのカスタマーサポートを提供し、ZendeskやSalesforceの競合となることを目指すという。

Wixの米国事業のゼネラルマネージャーであるJoe Pollaro(ジョー・ポラーロ)氏によれば、Wixは規模の大きいエンタープライズクラスのユーザー向けに事業を拡大してきたが、Wix Answersはもともとそのような大きな戦略に含まれていたわけではないという。実はWix Answersは自社のニーズに応じて作られたプロダクトであり、後になって製品化されてWixから別会社としてスピンアウトしたものだ。

ポラーロ氏は筆者に対し「顧客とのコミュニケーションが重要だからといって何かを作る企業は多くないだろう。自分たちのニーズに合うものがないと思ったら、自分たちで作る。これは我々のDNAだ」と述べた。

既存のプロダクトには何が欠けていたのか。Wixは単にチケットをオープンして問題を解決して次へ進むのではなく、顧客とのコミュニケーションの全体像がわかるものを必要としていたとポラーロ氏は語る。発表の中で同氏は「その後、この新しいプロダクトで1億8000万人の顧客のサポートを管理することに成功したため、これを別のプロダクトとして企業に提供すべきだと認識した」と述べている。

画像クレジット:Wix

Wix AnswersのプロダクトソリューションエキスパートであるCarl Lane(カール・レイン)氏も、プロダクトのデモの際に同じように語った。例えばレイン氏は、このプラットフォームは顧客が働いている会社、その顧客が「VIPユーザー」かどうか、電話やチャット、ウェブサイトのチケット、メールなどあらゆるチャネルで交わされたカスタマーサービスのすべての会話などがわかる「ユーザーの360度ビューだ」と述べた。

Wixの社長兼COOのNir Zohar(ニール・ゾーハー)氏は発表の中で「カスタマーサポート業界を統合化された新しいアプローチに進化させるニーズはある。我々はナレッジを活用し顧客一人ひとりに応じたサポートのスタイルを推進することで、業界標準を変革し向上させる」と述べている。

レイン氏も、このプラットフォームはAIを活用してカスタマーサポート担当者の対応を速くし、チームの成果を上げる方法(カスタマーサポートの記事をもっと使いやすくするなど)を提案すると説明した。

また、Wix Answersのダッシュボードには、(顧客が)利用したチャネルにかかわらず、担当者には一貫したエクスペリエンスが提供されるという。

例えば電話がつながるのを待っている人数が相当数を超えるとフラグが立てられるなどの機能により、ワークフローが改善される可能性がある(おそらく、何人かに会議を抜け出してもらわなくてはならない)。

画像クレジット:Wix Answers

「従業員全体をいつでも完全に可視化できる」とレイン氏は言う。同様に分析についても、同氏は「カスタマーサポートの組織にとって分析は不可欠だ。顧客がチャットの製品をひとつ、メールの製品をひとつ持っている場合、1日の終わりに全員がきちんと対応したかどうかを確認するのは本当に難しい」と述べた。

レイン氏は筆者に、マネージャーはWix Answersを使ってカスタマーサービスのチームメンバーの記録から対応したチケットの合計数を表示することができ、顧客満足度調査の多くは後から入力されると説明した。

Wix Answersをすでに利用している企業には、Getty Images、MyHeritage、Guesty、Viber、Fiverr、Yotpoなどがある。

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画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)