シフトワーカーと雇用主をマッチングするマーケットプレイスShiftsmartが107億円獲得

先に始まったホリデーショッピングシーズンの結果はいまひとつだったが、雇用主は依然として労働者を切望している。

The Great Resignation(大退職時代)」の影響もあり、労働市場が逼迫していることから、雇用可能な労働者と雇用主と結びつける、テクノロジーを駆使したツールの必要性が高まっている。

ニューヨークを拠点とする労務管理会社Shiftsmart(シフトスマート)は、投資家の関心をひき、シリーズBで9500万ドル(約107億円)を獲得した。同社は、さまざまな業種や仕事の時間給労働者を、空きがあるシフトとマッチングする労働力管理ソフトウェアを提供している。

2015年の創業以来、同社は50カ国以上で50万人以上の労働者のネットワークを築いてきた。労働者は、働く場所、働く量、給料を受け取るまでの期間を柔軟にコントロールでき、雇用者は、人材ニーズをカスタマイズして離職率を下げることができる。

「需要側にはすでにさまざまな要素が存在していましたが、供給側、つまり労働者にこそイノベーションがあると考えました」とShiftsmartの創業者でCEOのAakash Kumar(アーカシュ・クマール)氏はTechCrunchに話した。「私たちは、ソフトウェアを扱いやすくしました。ユーザーは、プロフィールの作成やアプリの起動ができますし、好きなときに作業できます。ギグエコノミーはポイント・ツー・ポイントの物流でした。私たちがこれから進めるのは、自分のスケジュールをコントロールできるようにすることです」。

今回の資金調達により、Shiftsmartの調達総額は1億1700万ドル(約132億円)となった。今回のラウンドは、D1 Capitalがリードし、Imaginary Ventures、Spieker Partners、Oakridge Management Group、S12Fの他、業界の経営幹部層や組織が参加した。

S12FのマネージングパートナーであるJeff Leventhal(ジェフ・レベンタール)氏は、労働者のエンパワーメントと待遇を信奉している。Shiftsmartのアプローチは、労働者の1日の中に柔軟性をもたらすだけでなく、さまざまな企業や役割で働く機会を与えてくれると考えている。

「『午後2時に出社しないとクビ』というようなシフトワークの日々は、もはや時代遅れの概念なのです」と同氏は話す。

「正しく対処するのが難しいことの1つに、ユーザーエクスペリエンスがあります。Shiftsmartは世の中の標準を設定します」と付け加えた。「この会社は独自の方法で正しく始めました。マーケットプレイスを構築し、機能させるのは難しいことですが、同社のテクノロジーは、雇用者と被雇用者の双方に柔軟性をもたらします」。

Shiftsmartの顧客リストには、Circle K、Humana、Deloitte、Airbnb、Small Business Administrationなどが名を連ねる。同社は約3年前にベンチャーキャピタルから資金を調達したが、売上高が毎年2〜3倍のペースで増加したため、新たな資金調達を検討する時期を迎えたとクマール氏は述べた。特に最近では、雇用者が労働力不足に直面していることもある。

「私たちは、雇用主に仕事をシフトレベルまで分解してもらい、市場全体の規模を拡大する手助けをしています」とクマール氏は付け加えた。「週40時間働いて2週間ごとに給料をもらう人を見つけるよりも、週に数回、3時間のシフトに入ってくれる人を見つける方が、はるかに確率は高いでしょう」。

今回の資金調達は、監査と契約、小売、国際物流などの新しい業種への拡大と、ヘルスケアなどの新しい業種への進出に充てられる。また、追加の採用も行う。現在の従業員数は60人で、1年前の約30人から増加した。

人材紹介のために開発されたテクノロジーの多くは、知識労働者を中心としたものだったが、Shiftsmartのように時間給労働者に焦点を当てる企業も、最近では投資家の注目を集めている。

例えば、11月には、シフト登録のためのメッセージングプラットフォームWhen I Workが2億ドル(226億円)という巨額のラウンドを完了した他、レストラン従業員向けツールのFountainSeasonedがそれぞれが8500万ドル(約96億円)と1870万ドル(約21億円)を獲得した。2021年の初めには、Homebaseが7100万ドル(約80億円)を調達し、ホームサービスのプロに特化したWorkizが1300万ドル(約15億円)を調達した。

こうした競合他社や、自社で時間給労働者を管理する企業がある中で、クマール氏は、Shiftsmartの差別化のポイントは、顧客との提携方法だと話す。顧客はShiftsmartの労働力と自社の労働力のいずれに関しても、このプラットフォームを利用することができる。

「今はこのビジネスにとってエキサイティングな時期です。世界的な労働力不足は危機的状況になっています」とクマール氏は付け加えた。「私たちの主な焦点は、需要をに応えるためにオペレーションをいかにスケールアップするか、そして労働者の行動をもっと学び、よりユニークな体験を生み出すことです」。

画像クレジット:picture alliance / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ますます活躍する時間給労働者のシフト調整などを行うメッセージアプリ「When I Work」が約226億円調達

時間給労働者は全労働人口の約55%を占めているが、仕事の世界のために構築されたテクノロジーに関しては、いわゆる知識労働者がその空間を支配している。米国時間11月1日、前者のニーズに特化して作られたアプリを提供する企業が大規模な資金調達ラウンドを発表した。ビジネスソフトウェアの進化する展望、そして時間給労働者とシフト制労働者がますます活躍していることを示すものだ。

When I Work(ウェン・アイ・ワーク)は、企業に雇用されている時間給労働者のシフトへのサインアップ、同僚とのシフト交換、シフトに入れないときの経営者や他者への通知などを可能にする、広く利用されているメッセージングプラットフォームだ。同社はこのほど2億ドル(約226億円)の資金調達ラウンドを完了した。この資金は事業開発とプロダクトの拡充に充てられる。

今回の資金は単一の投資家であるBain Capital(ベイン・キャピタル)、具体的にはそのTech Opportunities Fund(テック・オポチュニティーズ・ファンド)によるもので、両者は評価額を明らかにしていないが「過半数の成長投資」と説明しており、約4億ドル(約451億円)を示唆している。When I Workの収益性は好調で、2020年の6月から続いている、とCEOのMartin Hartshorne(マーティン・ハートショーン)氏はインタビューで語っている。パンデミック渦中の生活と経済の不確実性の深刻さを考えると注目に値するものだ。11年前に2400万ドル(約25億円)ほどの資金を調達後、同社が確保した堅調な伸びが、今回の資金調達の理由につながった。

「当社は新たなフェーズに入りました」と同氏は述べ、現在の成長率は「35%を超えて」おり、利益を生み出していることを明らかにした。「顧客はプロダクトを気に入り、企業文化は実に優れています。すばらしいものを手に入れて、新しい段階に挑戦する時を迎えました」。

これまでの投資家にはArthur Ventures(アーサー・ベンチャーズ)、Drive Capital(ドライブ・キャピタル)、Greycroft(グレイクロフト)、High Alpha(ハイ・アルファ)などが名を連ねている。

2010年にミネアポリスで創業したWhen I Workが提供するアプリは、小規模ビジネスや有名どころのフランチャイズ(Dunkin’[ダンキン]、Ace Hardware[エース・ハードウェア]、Ben&Jerry’s[ベン&ジェリーズ]、Kenneth Cole[ケネス・コール]など)を中心に、全米の約20万のビジネスで約1000万人の時間給労働者に利用されている。その成長の一部は、特に市場のニーズの変化に起因している。一部の小売業者は事業を閉鎖せざるを得なくなり、完全に閉鎖したところもある一方で、ヘルスケアなどの他のセクターは勢いを増してきた。

2021年の第2四半期に同社が「ワクチン接種オペレーションのスピンアップ」としてシフトベースのシステムを構築し、50社を超える顧客を獲得したことにハートショーン氏は言及した。同社は計画として、米国におけるオポチュニティの強化を継続し、国際的な展開で他の市場への進出を開始することを視野に入れている。

アプリ自体に関しては、主にシフト制や時間給のスタッフとのコミュニケーションを容易にするためのツールの提供において、その存在を認められてきた。こうした人々の勤務時間の特徴として、会議時間に合わせて全員が同時に仕事をしている可能性は低く、仕事中のスケジュールも変動する可能性があり、顧客のトラフィックや従業員自身の状況に応じてシフトする必要のあるスケジュールも存在する、という側面がある。

その名が示すように、When I Workの最も使用されている機能はシフト管理とチームとのコミュニケーションであり、このセグメントの労働者にとって最大かつ最も一般的な生産性の課題に対処している。しかし、時間の経過とともに、同社はオーディエンスとエンゲージメントを活用して他のサービス、例えば給与管理の促進(より特化した給与管理ソフトウェアとの相互接続)、労働レポートやアナリティクスを追加してきている。この部分は、自律的な成長としても、そしておそらく買収という形での成長としても継続していく要素として見込まれている。

仕事の世界に対応するソフトウェアは、この10〜20年の間、いわゆる知識労働者に主に焦点を当ててきた。コンピュータやスマートフォンを装備し、ソフトウェアやアプリに依存する仕事に縛られているこのセグメントは、より多くのソフトウェアツールに自然に適合してきたものの、どちらかといえば時が経つにつれて専門化されるだけであり、特定の業界やユースケースに対応するものとなっている。

しかし、デジタル変革および一般の人々の間のスマートフォン利用の増加は、職場におけるソフトウェア向けのプロダクトやユースケースの幅を広げ、より広い範囲の労働者の利用につながる新たなオポチュニティを数多く提供している。全体として、人々は日々の仕事以外の生活の中でアプリやその他のデジタルプロダクトを使用する方向にシフトしており、そうした人々はまた、自分たちの仕事をより簡単にするためのツールを求めていて、それを受け入れる準備もできている。

When I Workの場合、従業員は自分のスマートフォンにアプリをインストールする。これは、このカテゴリーの労働者の間で個人所有デバイスの持ち込みが知識労働者よりもさらに強い傾向にあることを示している(ログイン方法は他の仕事用アプリと同様で、自分が働いている会社と自分の携帯電話番号やメールの情報に基づいている)。ハートショーン氏によると、成長の大部分は口コミによるもので、以前の仕事で同社のアプリを使ったことがある従業員が、新しい雇用主にその導入を勧めているという。

しかしそのより広範なトレンドを考えると、競合他社が存在することは驚くに値しない。またそこまでの存在にはまだ至っていないものの、同じセグメントの労働者に対応していて、競合相手となるポテンシャルがある企業も存在する。その中には次のような企業が含まれている。2021年初めに7100万ドル(約80億円)を調達したHomebase(ホームベース)、ホームサービスのプロに特化したWorkiz(ワークイズ)、現在は採用およびフルタイム以下の従業員のシフトへの登録を主な目的としているFountain(ファウンテン)とWonolo(ウォノロ)、WorkWhile(ワークホワイル)、現在はフロントラインの労働者のための生産性プラットフォームとして機能しているYoobic(ヨービック)、Squareが2021年初めに買収したCrew(クルー)、現在700万の有料ユーザーを擁するWorkplace(ワークプレイス)、そして9月に上場申請を行ったJustworks(ジャストワークス)。これらの中には同じユーザー層を対象としながらも機能が異なるものもあるという事実は、When I Workのロードマップのようなものを提示しており、それがどのように拡張され得るかも示している。

Bain Capital Tech Opportunities(ベイン・キャピタル・テック・オポチュニティーズ)でマネージングディレクターを務めるPhil Meicler(フィル・メイクラー)氏は、 When I Workのエンゲージメントが、この大きなフィールドで同社のアプリをより魅力あるものにしていると語っている。When I Workは、ユーザーの85%が少なくとも週に1回ログインし、利用するアプリとなっている。

「今日の現代的なワークフォースにおいて、これほどあきらかな生産性向上と強い従業員エンゲージメントをもたらすソリューションは他に類を見ないものです」。時間給労働セクターの労働力不足が最近ますます深刻になっていることを指摘しながら、メイクラー氏は続けた。「それを大規模かつ効率的に行うことは、実行に困難をともないます。成長と収益性の組み合わせは、When I Workに私たちが大きな期待を寄せた理由の中核部分でした」。

同氏はまた、BainはHRスイートの拡大継続を目指して「マーティン(・ハートショーン)氏のビジョンを共有している」と付け加えた。「その目的は、従業員が他に何を使うのか、彼らの生活をより楽にするために私たちはどのように拡張できるのかという、従業員の目を通してプロダクトを構築することに置かれています。そしてWhen I Workにはスケジューリングのすばらしい基盤があります。自律的に、またM&Aを通じて成長していくための独自のオポチュニティを同社は有しています」。

画像クレジット:Dunkin’

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)