人間味のあるロボアドバイザーを運営するシンガポールのSyfeが1860万ドルを調達、Valar Venturesが主導

シンガポールを拠点とし、アジアにおける投資をより身近にすることを目指すスタートアップのSyfeは今日、フィンテックに特化した投資会社Valar Venturesが主導するシリーズAを2520万シンガポールドル(約19億6000万円)でクローズしたと発表した。

今回のラウンドにはPresight Capitalの他、Syfeが昨年実施したシード資金調達ラウンドをリードしたUnboundも再び参加した。

2017年にCEOのDhruv Arora(ドルブ・アローラ)氏が設立したSyfeは、2019年7月に事業を開始した。RobinhoodやAcorns、Stashといった「ロボアドバイザー」たちと同じく、Syfeが目指すのは投資にもっとアクセスしやすくすることだ。投資を始める際の最低預入残高は必要なく、その手数料体系はすべての費用込みで年あたり0.4%から0.65%である。

Syfeは23か国で顧客サービスを提供するが、現在はシンガポールでのみ精力的なマーケティング活動を行っている。シンガポールにおいて同社はシンガポール金融庁の認可を受けている。新規調達資金の一部は、新たにアジアの国々へ進出するための投資に充てられる見通しだ。Syfeは正確なユーザー数を公表していないが、今年の初めから顧客数と預かり資産が10倍に増加しており、新規顧客のほぼ半分が既存ユーザーからの紹介で運用を開始したと述べている。

Valar Venturesのポートフォリオに含まれるその他の企業には、TransferWise、Xero、そしてデジタル銀行のN26がある。創業パートナーのAndrew McCormack(アンドリュー・マコーマック)氏は、Syfeに関する声明の中で「資産の拡大を目指す富裕層が急増しているアジア地域が持つ可能性と、チームの経歴と力強い牽引力が相まって、揺るぎない絶好の機会をSyfeにもたらしています」と述べている。

Syfeを起業する前、アローラ氏は香港のUBS Investment Bankで投資銀行業務に従事していた。後にインド最大のオンライン食料雑貨デリバリーサービス会社のひとつであるGrofersの副社長になる。UBS時代、アローラ氏は上場投資信託(ETF)を担当していた。

「銀行の顧客である多くの機関投資家と一部の超富裕層がETFを運用している様子を見ることができました。この商品は個人にとっても、すばらしいツールだと考えたのです。しかし、ETFの活用方法が実はそれほど良く知られていないということがわかりました」とアローラ氏はTechCrunchに語る。

アジアの多くの国々では資金を銀行に預金するか不動産に投資するほうが好まれる。とはいえ、預金利率と不動産価格は停滞し、消費者は投資を行うための別の方法を探しているところだ。Syfeは現在3種類の投資商品を提供している。1番目は株式、債券、ETFを組み合わせた国際分散ポートフォリオで、投資家が選んだリスクレベルに応じて自動的に資産運用されるものだ。2番目はシンガポール証券取引所のiEdge S-REIT Leaders Indexに基づくREITポートフォリオである。最後は全世界の1500社以上の株式を含むETFで構成されるSyfeのEquity100ポートフォリオだ。

この他のアジアに焦点を合わせた「ロボアドバイザー」サービスにはStashawayとKristal.aiがあり、Grab Financialも最近「マイクロインベストメント」商品を発表した。アローラ氏は今後、この分野への参入者が増える可能性があることを認識している。ただし現時点でのSyfeの主な競争相手は、それでも銀行に預けるのが一番、という考え方だと同氏は言及する。カスタマー教育もSyfeの業務の一部だ。「お金を銀行に預けるというのは、私自身も含めて多くの人の心に、文化的にしっかりと根付いていることだからです」というのがその理由だ。

Syfeでは財務アドバイザーのチームを編成して差別化を図っている。アドバイザーにはゴールドマンサックス、 Citibank、モルガンスタンレーの出身者がおり、ユーザーの相談を受けている。アローラ氏によれば、Syfeのユーザーのほとんどがプラットフォームへの加入時にアドバイザーと面談し、そのうち20%がこのサービスを継続的に利用している。投資にはクレジットカードを使うべきかという質問もあった。これについては、アローラ氏によれば金利が高いため止めるようアドバイザーが説得するという。

「当社はもちろんテックファーストのプラットフォームを目指していますが、そこには価値観というものが存在することを理解しています。50代や60代のお客様に対応するときは特にそうです。そういった皆さんはテクノロジーに適応している最中なのです。そこに人がいて、資産を運用してくれるということが分かる必要があるのです」と同氏は言う。

Syfeの平均的なユーザーは30才から45才だが、増加しているグループのひとつが退職に向けて、あるいは年金生活を補うために資産作りに意欲的な50代の人々である。ユーザーは大体、初回の投資を1万シンガポールドル(約76万7000円)で開始する。5人のユーザーのうち4人が定期的にこの残高に追加している。

一部のユーザーは投資連動型保険などの別の投資商品を試したことがあるが、多くの人にとって株式、債券、ETFに投資するのはSyfeが初めての経験だとアローラ氏は述べる。

「そこそこの人数のお客様が、それぞれの分野のプロフェッショナルで非常に裕福であり、30代後半で、多額の財産を築き上げたものの投資の機会がなかったか、投資の方法について適切なアドバイスを受けてこなかったことがわかりました。これは私たちには最大の新事実で、当社のプラットフォームに人間味を持たせるべきだと考えるきっかけになったのです」とアローラ氏は語る。

同社のプラットフォームは、投資チームとアルゴリズムの組み合わせで資産を運用する。このことが人間のバイアスを回避するのに役立つとアローラ氏は言う。Syfeのアルゴリズムは、グロース株かバリュー株か、株のマーケットキャップ、ボラティリティ、セクターのモメンタムを織り込んでいる。リスクのバランスを取るべく、個々の資産が同じポートフォリオの他の資産とどのように相関するかも分析する。

アローラ氏によれば、Syfeは現在いくつかの国の規制当局と協議を進めており、来年末までに少なくとも2か国の新しい市場に参入する見通しだ。また、チームの規模を倍に拡大し、さらなる消費者向け財務商品を開発する計画もある。

COVID-19の流行期間中、アローラ氏によればSyfeのポートフォリオはS&Pなどのインデックスに比べ大幅な下落局面が少なく、解約したユーザーはわずかだったという。むしろ、投資金額を増やしたユーザーも多かった。

「皆さんがファイナンスと将来について考え直し始めていると感じます」と同氏は述べ、さらに「世界中で銀行が金利を下げています。シンガポールもそうです。多くの人々が別の選択肢を検討し始めています」と語った。

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カテゴリー:人工知能・AI

タグ:ロボアドバイザー 投資 シンガポール

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(翻訳:Dragonfly)

細胞培養スタートアップのインテグリカルチャーがエビ細胞培養肉の研究開発を開始、シンガポール企業とタッグ

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細胞培養スタートアップのインテグリカルチャーは7月20日、シンガポールのShiok Meats Pte. Ltd.(Shiok Meats)とともにエビ細胞培養肉の共同研究を開始すると発表した。

インテグリカルチャーの食品グレード培養液と汎用大規模細胞培養技術「CulNet System」は、これまでに牛と家禽の細胞における有効性を確認済み。同共同研究では、これらを新たに甲殻類の細胞にも拡張し、長期的にはエビの細胞培養肉を安価で大規模に製造することを目指す。

細胞培養肉の原料である培養液は、タンパク質・糖質・脂肪・ビタミン・ミネラル・血清成分からなり、特に血清成分の低価格化が培養肉の実用化において鍵となるという。同研究ではCulNet Systemの技術をベースに、血清成分を添加せずにエビの細胞を大量培養する技術を開発。Shiok Meatsは、この培養技術を活用し製造される培養エビ肉を2022年頃商品化することを目指す。

また同研究は、2020年5月開始のCulNet Systemにおいて、個別企業の細胞培養商用化をサポートする「CulNetパイプライン」ソリューションにおいて運用する。

インテグリカルチャーは、細胞農業(細胞培養)が普及する世界の実現に向けて、その低価格化・大規模化の技術開発を行うスタートアップ企業。

従来の細胞培養方法で純肉を生産するには、100gで数百万円のコストがかかっていたという。そこで同社では、食品材料を用いた培養液とCulNet Systemとともに、細胞培養のコストを大幅に下げる技術を開発した。

CulNet Systemは、汎用性の高い細胞培養プラットフォーム技術で、動物体内の細胞間相互作用を模した環境を擬似的に構築する装置となっているという。同技術は、理論的にはあらゆる動物細胞を大規模・安価に培養可能で、培養肉をはじめコスメから食材まで様々な用途での活用を想定している。

すでにラボスケールでは、管理された制御装置下で種々の細胞を自動培養し、高コストの一因であった血清成分の作出を実現している(国内外で特許取得済み)。血清成分の内製化実現により、従来の細胞培養が高コストとなる主因の牛胎児血清や成長因子を使わずに済み、細胞培養の大幅なコストダウンを実現した。

CulNetパイプラインは、CulNet Systemを用いて、個々の企業が希望する動物種の細胞を使い、細胞農業商用化をサポートするソリューション。

Shiok Meatsは、幹細胞の研究者Dr. Sandhya Sriram(CEO。写真右)とDr. Ka Yi Ling(CTO。写真左)が共同設立した、シンガポールおよび東南アジアで初の細胞農業企業。同社は、動物ではなく細胞から食肉を製造することで、クリーンで上質で健康的な魚介類や食肉を提供することをミッションとしており、エビ・カニ・ロブスターなど甲殻類の細胞培養肉に取り組んでいる。

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