暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.13~9.19)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年9月613日~9月19日の情報をまとめた。

グルメSNS「シンクロライフ」と川崎フロンターレが提案する「スタジアム飲食と地域活性化をDXで実現」プロジェクトを神奈川県が支援

トークンエコノミー型グルメSNS「シンクロライフ」を運営するGINKAN(ギンカン)は9月14日、Jリーグ川崎フロンターレと共同で提案する「スタジアム飲食と地域活性化をデジタルトランスフォーメーションで実現」プロジェクトが、神奈川県の「ビジネス・アクセラレーター・かながわ」(BAK)に採択されたことを発表した

神奈川県は、スタートアップ企業に対する支援策として「ビジネス・アクセラレーター・かながわ」を実施。新型コロナウイルスの感染拡大によって生じている社会課題の解決に取り組むスタートアップ企業などによる新しいプロジェクトを募集した。今回45件の提案から、有識者らによる審査の結果、県が支援を行う6プロジェクトが決定。GINKANと川崎フロンターレの提案が採択され、両社は今後、同プロジェクトを進めていく。

GINKANと川崎フロンターレの提案するプロジェクト「スタジアム飲食と地域活性化をデジタルトランスフォーメーションで実現」は、グルメSNS「シンクロライフ」のスマホアプリ(Android版iOS版)によるモバイルオーダーと、ブロックチェーン活用の暗号資産ポイントシステム(トークンエコノミー)を通して、川崎フロンターレの本拠地スタジアム内の飲食店と、川崎地域の地元飲食店のマーケティング領域におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく。

グルメSNS「シンクロライフ」と川崎フロンターレが提案する「スタジアム飲食と地域活性化をDXで実現」プロジェクトを神奈川県が支援

具体的には、モバイルオーダーによる混雑回避、キャッシュレス推進、試合結果に応じた、来店インセンティブ付与による地元飲食店集客への寄与を目指すという。安心・安全なスタジアム運営と、地域経済の活性化の実現を目標としている。

グルメSNS「シンクロライフ」は世界で展開中

GINKANが提供するグルメSNS「シンクロライフ」は、飲食のレビューや加盟店の利用を通して独自のポイント(シンクロポイント)を受け取れるグルメSNS。AI活用のレコメンドシステムを搭載し、独自アルゴリズムによる分析・機械学習により、自分好みの飲食店を見つけることもでき、ユーザーは「口コミへの不審感」と「検索の煩雑さ」から解放される仕組みが特徴。現在、シンクロライフは155ヵ国4言語(日本語・英語・韓国語・中国語)にて展開しており、23万件の食レビューと10万件以上の飲食店が掲載されている。

「シンクロライフ」は、サービスの基盤にブロックチェーンを活用しており、シンクロポイントをイーサリアムのERC-20準拠トークンとして発行する暗号資産シンクロコイン(SYC)へ変換できる(「SynchroCoin」ホワイトペーパー)。加盟店で飲食することで食事代金の1%以上のトークン還元を受けることも可能(法律の関係上、日本ではポイントの付与)。シンクロコイン(SYC)またはポイントは、店舗から提供されたQRコードを読み取ることで、アプリ内のウォレットに付与される。

シンクロライフは、ギフティが提供する法人向けサービス「giftee for Business」と連携し、シンクロポイントでファストフード店、コンビニやマッサージ施設などで利用できる「eギフト」の購入が可能。購入したeギフトは、店舗で利用が可能なほかプレゼントも行える。eギフトは順次ブランドを追加予定となっている。また、将来的には加盟店にてシンクロポイントによる電子決済を行うことも可能になるという。

シンクロコイン(SYC)は、GINKANの子会社SynchroLife Limitedが発行する海外の暗号資産取引所LATOKENにて上場する暗号資産。アプリ内に表示される「SYC活用ガイド」によると、将来的には、シンクロポイントはシンクロコイン(SYC)に1対1で交換可能になるという。シンクロコイン(SYC)は、現時点では国内において他の暗号資産や法定通貨との交換はできない。

損保協会とNECは、ブロックチェーン技術を活用した共同保険の契約情報交換に関する実証検証を実施

一般社団法人日本損害保険協会(損保協会)日本電気(NEC)は9月17日、ブロックチェーン技術を活用した共同保険の契約情報交換に関する共同検証の実施を発表した。共同保険の事務効率化に向け、ブロックチェーン技術の有効性や課題の洗い出しを行う。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、with/afterコロナの「新しい生活様式」への対応が求められている中、損害保険業界においても新しいテクノロジーを積極的に導入し、業務効率化を図っていくことが重要になっている。そこで、損保協会はNECの協力のもと、共同保険の書面・押印・対面での手続きを見直すなど、ブロックチェーン技術の活用による手続きの事務効率化の効果を測るべく、共同検証を実施する。

共同保険は、複数の保険会社が共同で保険を引き受ける方式の共同保険契約による保険証券。一保険会社では引き受けることが難しい巨大なリスクを分散するなど、各保険会社が自ら抱えるリスクを多様化・平準化するために共同保険とするもの。共同保険は、現在は年間数10万件におよぶ契約情報を、引受保険会社間で書面により交換し、各保険会社で契約計上業務を行っているという。

今回の共同検証には、損保協会の会員保険会社8社が参加し、ブロックチェーン技術を活用することで、書面を使わずに契約情報の交換を行う実証実験を開始する。実証実験により、迅速性、正確性、効率性を共同で検証する予定という。それにより、年間数10万件におよぶ契約情報の交換をペーパーレス化する。書面での情報交換をデータによる情報交換にするだけでも、各保険会社での契約計上業務が大幅に効率化されることが期待できるとしている。

損保協会とNECは、ブロックチェーン技術を活用した共同保険の契約情報交換に関する実証検証を実施

損保協会では実証実験を通じて、今後、業界横断での業務の共通化・標準化・共同化を通じて、社会インフラとして損害保険が持つ機能・役割をより発揮すべく、新しい技術による変革に努めていく。また、NECはブロックチェーン・AIなどの先進技術を活用するなど、デジタルを活用した金融サービスや金融業務の変革を支援する「Digital Finance」の取り組みを推進していくという。

Digital Financeでは、金融取引に特有のセキュリティや本人確認に対応した上で、デジタル技術を活用した新たな顧客体験・顧客理解を可能にするサービスや金融機関が有するサービスをオープンAPIでセキュアに連携可能とするサービスを提供していく。さらには、金融サービスのデジタル変革として、デジタルを活用した新たな業務プロセスや、セキュアなワークプレイス、新サービスを短期間で可能とする金融サービスのAPI群などを提供する。複雑化する金融業務におけるリスク対策や規制対応に対して、デジタル技術の活用を推進していく。

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

暗号資産取引所bitFlyerを運営するbitFlyerは9月17日、Tポイントをビットコインに交換できる同取引所のサービス「Tポイントプログラム」における月間交換利用者数が、8月に過去最高を記録したことを発表した。

2020年8月のTポイントプログラムの利用状況は、ビットコインの価格高騰を受け、Tポイントのビットコインへの交換数量が前月比1.8倍に、月間交換利用者数は前月比1.9倍を記録した。月間交換利用者数は昨年8月のサービスリリース以来、過去最高となった。

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

bitFlyerとTポイントジャパンは2019年8月に業務提携し、Tポイントとビットコインが交換できるサービス「Tポイントプログラム」の提供を開始した。同取引所のアカウントにTカードを連携することで、Tポイント100ptにつき85円相当のビットコインと交換できる。また、対象加盟店でbitFlyerウォレットを用いてビットコイン決済を行うと、500円ごとにTポイント1ptが付与されるサービスとなっている。Tポイントの会員数は現在、2020年7月時点で7066万人とされており、国内大手の共通ポイントサービスのひとつである。

Tポイントプログラムの連携者数推移は、8月は前月比3.8倍となり、月間連携者数はサービスリリース以来、過去2番目に多い月となった。

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

ビットコインの高騰が影響

2020年7月末にビットコインの価格が高騰し、90万円台から110万円台となった。8月に入ってからも価格上昇し、8月17日には約1年ぶりに130万円台を記録、bitFlyerのビットコインの取引量・取引者数が増加したという。ビットコインのみならず、イーサリアムも、2万5000円台から一時期4万円台まで変動している。

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

これを受けて、同社のマーケットアナリストを兼任する金光碧トレジャリー部部長は、「ビットコインの価格上昇については、コロナショックを受けて世界的な金融緩和が進んでおり、個人が投機的に買う投資対象からインフレヘッジとして機関投資家も買う資産へと見方が変わってきていることが影響しているのではないでしょうか」と分析。

「また、イーサリアムの価格上昇については、分散型金融(DeFi)で注目を集めていることが影響しています」という。「Tポイントプログラム利用者数増加の背景も同様に、ビットコインの価格上昇に伴いニーズが伸びているのだと思います」と指摘した。

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カテゴリー:ブロックチェーン

タグ:仮想通貨 / 暗号資産

成功報酬型でコロナ時代の飲食業を支援、「シンクロライフ」運営が2.8億円を調達

写真右からGINKAN代表取締役CEO 神谷知愛氏、同CTO 三田大志氏

グルメレビュー投稿や加盟店利用で暗号通貨が貯まるグルメSNS「シンクロライフ」を運営するGINKANは6月2日、MTG Ventures、ギフティ、オリエントコーポレーションなどから総額約2.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達は同社にとってシリーズAラウンドに当たり、これまでの累計調達額は約4億円となった。

シンクロライフはグルメSNSとして、レストランの口コミ投稿・閲覧機能のほか、AIが口コミを分析してユーザーの嗜好に合ったレストランをレコメンドする機能を備える。ユーザーは、投稿やレストラン利用により暗号通貨「シンクロコイン(SYC)」をアプリ内のウォレットに貯めることができ、貯まったシンクロコインをギフティが提供する「giftee for Business」のeギフト購入に使うことが可能だ。

「シンクロライフ」アプリ画面イメージ

飲食店側は、初期費用・月額費用0円、売上の5%の成功報酬で加盟店として参加ができる仕組みとなっている。

シンクロライフのスキーム

インバウンド重視からリピーター見直しへシフトした飲食業界

新型コロナウイルス感染拡大にともなう自粛要請や、緊急事態宣言の発令により、特に都市部の飲食店では営業を自粛したり、テイクアウト販売への転換を余儀なくされていた。

GINKANでは5月1日から、シンクロライフへのテイクアウト商品情報の無料登録を受付開始。同時にユーザーが、情報を掲載した飲食店のテイクアウト利用やレビュー投稿などで飲食店を応援することで、将来のイートイン来店時に利用できる優待券を受け取ることができる機能を追加した(優待券配布はシンクロライフ加盟店が対象)。

また5月28日には、テイクアウト対応店舗をAIがレコメンドする機能も追加。食レビューにもテイクアウト情報の投稿が可能になったほか、タイムラインにもテイクアウト特設フィードを追加した。

テイクアウト情報、レビュー掲載に対応したシンクロライフ

GINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏は、この3月から5月にかけての消費者・飲食業界それぞれの変化について、次のように述べている。

「まず消費者のほうでは、テイクアウト対応店舗が増えたこともあり、“食”の消費方法として、あまり経験がなかった人でもテイクアウトを体験する機会が増えた。またSNSユーザーの動向は緊急事態宣言前の3月から既に変化していて、アクセスの良い街から住居の多いエリアへと投稿・行動はシフトしていた」(神谷氏)

飲食業界の方でも2つの変化があったと神谷氏は言う。「飲食業界というのは従来売上が大きく変動しない業界だが、コロナショックのスタートからウィズコロナに続く過程で大きく売上が変動したことで、固定費が注目されるようになった」(神谷氏)というのが1つ目の変化だ。

「固定費が必要なマーケティングの需要が低下している中で、成果報酬でマーケティングが可能なシンクロライフのような仕組みの需要は上がっている」と神谷氏。実際、4〜5月はリモートのビデオ会議で営業を行っていたGINKANだが、営業活動は増えたそうだ。

もう1つの変化は、飲食店から見た顧客のターゲットだ。「感染拡大前は、一見客、特にインバウンドの顧客に対する戦略が立てられてきたが、今は固定客・リピーターが見直されて、一定以上の割合がないといけないという見方になっている」(神谷氏)

コロナ禍で飲食店の状況は2極化していると神谷氏は言う。「固定客やファンがついている店、地域密着型の店はこの状況でも強い。緊急事態宣言で大幅な営業自粛が始まるまでは、それほど大きく売上を落としていない。4〜5月の緊急事態宣言発令はさすがに影響が大きかったが、宣言解除後、売上が戻らない店もあれば、100%近くまで戻したところもある」(神谷氏)

今後、緊急事態宣言が解除されたとしても、公的な会食などが一気に戻るわけではないだろう、と神谷氏は見ている。「宣言解除で『まずどこへ行こうか』となったときは、好きな店、いつも通っていたところが選ばれる。せっかく外食するなら質を重視したい、という動きは5月後半ごろからあり、しばらく続くのではないか」(神谷氏)

アフターコロナまで活用できるサービス提供で飲食業界に貢献

「消費者・飲食業界両方の変化に対して、GINKANとしては、成功報酬で利用できるCRMプラットフォームとして対応していけると考えている」と神谷氏は話している。新型コロナ感染拡大の影響についても「我々はまだ駆け出しで、これから伸びるところなので、インパクトもそう大きくなかった。指標などもそれほど変わっていない」という。

神谷氏は、今回の調達資金の使途について「アプリ機能、飲食加盟店向けサービス拡充のための開発と、サービス認知、ユーザー獲得のためのマーケティング費用などに充てる」とコメント。また、「新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受ける飲食業界のためにも、アフターコロナまでを一気通貫で活用いただけるサービス提供に取り組み、飲食業界の未来に貢献していきたい」とも述べている。

GINKANの本ラウンドにおける第三者割当増資の引受先は以下の通りだ。

  • MTG Ventures
  • ギフティ
  • オリエントコーポレーション
  • セレス
  • 三生キャピタル
  • オークファン
  • DDホールディングスベンチャーキャピタル
  • 三菱UFJキャピタル
  • エスエルディー

GINKANは、2月18日にギフティのeギフトとの連携を発表しているが、「今後さらに各社との連携を深めていく」としている。神谷氏は「大手との事業連携も進んでおり、近く発表できるだろう」と述べており、「株主とはシナジーもある。我々だけでは取り組めない課題に、今ラウンドでは全力で取り組む」と語った。

グルメSNS「シンクロライフ」にレストラン検索不要の「AI厳選」機能が追加

グルメSNS「シンクロライフ(SynchroLife)」は、SNSとAI活用により、ユーザーのレストラン探しをサポートするアプリだ。ほかのグルメアプリとの大きな違いは、トークンエコノミーの概念を取り入れていること。良質なグルメレビューの投稿者にはトークン(暗号通貨)による報酬を付与する。また来店ポイントのような形で、飲食代金からの還元リワードをトークンで受け取れる仕組みもアプリ内に持っている。

シンクロライフを運営するGINKAN(ギンカン)は4月4日、同アプリへの「AI厳選」機能追加を発表した。従来のレストラン検索機能は廃止され、現在地点などのエリア情報に基づき、AIがオススメする店を写真中心のインターフェースから選ぶスタイルに変更された。

またSNSのタイムラインには、ユーザーの日頃の生活圏などから優良なレビュー投稿をパーソナライズして表示する「For You」フィードが登場した。

2018年8月にベータ版が公開されたシンクロライフ。今回の一連のレコメンデーション要素の強化により、「これまで以上に直感的に良質なレストランをすばやく発見できる」ようなユーザー体験の実現を図ったという。

確かに従来のグルメレビューサービスでレストラン探しをするときには、エリアやカテゴリーだけではまだ多くの店から候補が絞り込みきれず、レビューの文面など、さまざまな要素を自力でチェックして選んでいくので、決定までに時間がかかることもしばしばだ。

シンクロライフのAI厳選機能では、SNS上の人気指標やリピート指標などを分析しているため、あらかじめ一定以上の人気があり、投稿者のリピート率が高い店をレコメンドしてくれる。エリアやジャンルは指定することができるので、現在地だけでなく、これから訪れる旅行先などの土地勘のない場所でも、ほかのユーザーが薦めるレストランを知ることができる。

また新たな指標として「リピート希望」の表示も加わった。実際に来店して投稿したユーザーの評価指標をもとに「10人中8人がリピート希望!」といった表示がリスト上の各店に示される。

iOS版/Android版が提供されているシンクロライフは現在、155カ国・4言語(日本語、英語、韓国語、中国語)で利用可能。累積19万件以上のレビューが投稿されている。

GINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏は「もともとレストラン選びに時間をかけずに済み、検索しなくても表示されるシステムを目指して、レコメンドエンジンやロジックを改善してきた。今回のAI厳選機能で、ようやく作りたかったものができたというところ」と話している。

とはいえ、中には自分が選んだ細かい条件で検索をかけたいユーザーもいるのではないだろうか。神谷氏は「世の中には詳細な検索でレストランを探せるサービスは既にいくつもあるし、僕自身も利用している。だが、予算やシーンなどの細かい条件検索と“場所と食べたいものが大体決まっている人”向けの提案を両立するのは、インターフェースが複雑になって難しい」と述べ、「“大体決まっている人”へのサービスは、ありそうでなかったので、そこへフォーカスした」と答えている。

「シンクロライフは、テレビ番組や雑誌と同様にレストラン情報を眺めたいというシチュエーションには、SNSフィードでパーソナライズした表示を、場所と食べたいものが大体決まっている人には、AI厳選機能でレストラン提案を行う。“提案されたものからレストランを選ぶ”というのは、あまり体験したことがないユーザー体験になるのではないか」(神谷氏)

GINKANでは、今後もユーザーのアクションや閲覧データをもとに、さらにシンクロライフ収録レストランの評価の質を高めていく予定だ。

シンクロライフは、トークンエコノミーの概念を導入することで、レストランのマーケティング課題の解決に取り組むプロダクトでもある。今年3月にはこうした取り組みが評価され、MUFG Digitalアクセラレータのプログラム第4期に採択された。

神谷氏は「ユーザー体験に関しては、SNSとAIでハズレなしのお店選びを、ということで、消費者のニーズや課題に合わせたアップデートをして、最終形に近づいてきた。またレストランのマーケティング課題については、東急不動産の協力で飲食店来店客へのトークン還元の実証実験も行い、準備が進んでいる」と話す。

さらに「飲食店の広告宣伝費率の課題を、ブロックチェーンを活用した暗号通貨で解決した暁には、ユーザーである消費者は今までの『飲食店での食事で消費する』スタイルから『デジタルアセットをもらう』スタイルに変わっていく」と神谷氏は述べ、「一般消費者がアセットを持つ、ということでフィンテックの入口にもなるサービス」としてシンクロライフを構想していると語る。

今後、さまざまな金融機関やペイメント事業との接続により、ほかの暗号通貨への変換や資産運用、国内外での決済なども、シンクロライフで可能にしたいという神谷氏。「まずは飲食店の参加により、O2Oビジネスとしての土台を確立し、そこから加盟店の決済手数料の軽減やユーザーの支払いをシンクロライフで完結させるなど、課題を解決していきたい」と話している。

トークンエコノミー×グルメSNS「シンクロライフ」、トークンへの転換権を付与したスキームで資金調達

つい先日、グルメSNS「シンクロライフ」がトークンエコノミーの仕組みを導入することで、同サービスをさらにユニークなものにしようとしていることをお伝えした。

具体的には良質なレビュアーなど、プラットフォームに貢献しているユーザーが報酬として独自トークン(SynchroCoin)を受け取れる仕組みを設計。将来的に保有するトークンをレストランの食事券と交換したり、食事代金の支払いに使えるようにしたりすることで、独自の経済圏を作ろうという取り組みだ。

この構想の実現に向けて、シンクロライフを運営するGINKANは8月10日、セレスと元サイバードホールディングス代表取締役会長の小村富士夫氏を引受先とする第三者割当増資により、総額8000万円を調達したことを明らかにした。

セレスとは業務提携も締結。モッピーなどアクティブ会員が350万人を超えるスマホ向けポイントメディアの基盤を持つセレスとタッグを組み、メディア間のシナジーやブロックチェーン技術の実サービスへの活用に向けた研究開発を進める方針だ。

なお今回の資金調達はGINKANの子会社であるSynchroLife, Limitedが発行するトークンへの転換権を付与した形での、株式の第三者割当増資というスキームを採用。詳細については後述するが、これによって株式市場への上場や事業売却以外のエグジットも可能になるという。

AI活用で好みにあった飲食店をレコメンド

シンクロライフは、ユーザーがレストランでの食体験を投稿できるグルメSNSだ。

特徴のひとつがAIを活用したレコメンドシステムによる、パーソナルキュレーションの仕組み。ユーザーの投稿や観覧履歴を始めとしたアプリ内でのアクションを独自のアルゴリズムで学習・分析することで、使い続けるほど自分の好みに合った飲食店が見つかりやすい仕様になっている。

同アプリにはすでに17万件以上のレビュー、42万枚の写真が掲載。現在は日本語のほか英語や韓国語、中国語にも対応し、82ヶ国でユーザー登録、48ヶ国でレビュー投稿がされているという。

そして8月2日にβ版をリリースした新バージョンでは、ここにSynchroCoinというトークンの概念が加わった。冒頭でも触れた通り、良質なレビューや飲食店情報の登録、編集、翻訳といったプラットフォームに貢献したアクションに対して報酬が付与されるようになる。

コミュニティを加速する手段としてのトークン

ここでおそらく多くの人が気になるのが「良質なレビューとはどんなものか」「トークンを付与したところでどれほどの効果があるのか」といった点ではないだろうか。

この点についてGINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏に聞いてみたところ、各ユーザーが持つスコアや各レビューの性質、そしてそこに対する「行きたい」などの反応をスコアリングする仕組みのようだ。シンプルに言えば「そのレビューは誰が投稿したものか、そしてそれに対してどんな反応があったか」が基準になる。

もう少し補足をすると、そもそもシンクロライフには以前から「経験値」というゲーム要素が導入されていて、トークンのようなインセンティブはないものの同じようなシステムが回っていた。

ユーザーは投稿した口コミのサービス貢献度に応じて経験値を獲得でき、経験値がたまるごとに称号(初段〜神)がランクアップする仕組みを導入。例えばまだ誰も投稿していない店舗や投稿が少ない店舗のレビューを書いたり、他のユーザーの参考になる(「行きたい」が多くつくなど)レビューを書いたりすると経験値が貯まるようになっている。

ここですでにレビューをスコアリングする機能は実装されていて、しかもこのシステムがシンクロライフのコミュニティを拡大するのに大きな影響を与えてきたのだという。それは投稿数や写真枚数の増加はもちろん、店舗情報の追加や修正、閉店依頼といったアクションにも繋がったそうだ。

「実は以前からアプリ内通貨のような仕組みをやりたいという思いはあった。今まではレビューや情報提供を通じて飲食店やプラットフォームに貢献しても、それはボランティア的な位置付け。そこにトークンという経済的な要素を入れることで、ユーザーのモチベーションや継続率も上がるのではと考えた。トークンはもともと動いているコミュニティを、さらに大きく強固にするためのものだ」(神谷氏)

今までにないグルメコミュニティの可能性

シンクロライフでは報酬用として全体の20%となる2000万トークンをプールしていて、そこから1週間ごとに一定量を分配するように設計されている。つまり毎週スコアの集計が行われ、その値に応じたトークンがもらえるというわけだ。

現時点でトークン付与の対象になるのは飲食店のレビューと店舗情報の作成。今後は情報の翻訳や加盟店舗の紹介などに対してもトークンを提供したいということだった。

神谷氏いわく「レビューではなく、良質なレビューであることが重要」というように、とにかくレビューを書けばトークンがもらえるという仕様ではなく、トークンの付与はあくまでサービスへの貢献度が高いアクションに限定する。

その一方で「消費者が気軽に楽しめる環境を作ることがキャズムを超える鍵」とも話していて、加盟店舗で食事をした際に還元リワードとして一定割合のトークンが付与される仕組みを作る計画。この還元率を店舗が設定できるようにすることで、顧客を呼び込む集客ツールとしても機能するようにしたいという。

その先にはトークンをレストランの食事券と交換したり、食事代金の決済で利用したりできるようにする予定。もしこのサイクルが上手く回れば、今までとは違ったグルメコミュニティができる可能性もあるだろう(もちろん加盟店をどれだけ開拓できるかなど、超えなければならない壁はある)。

トークンへの転換権を付与したスキームによる調達

最後に今回の資金調達のスキームについても少し触れておきたい。冒頭でも紹介したように、今回はGINKANの子会社であるSynchroLife, Limitedが発行するSynchroCoinへの転換権を付与した形での、株式の第三者割当増資という形を取っている。

GINKANではこれまでエンジェルラウンドで小村氏らから3000万円を調達しているほか、昨年香港法人のSynchroLife, LimitedにてICOを実施。755イーサ(日本円で約5000万ほど)を集めた。

ただこのICOを取り巻く環境はまだまだ不透明な状況にある。今回は神谷氏に加えセレスの担当者にも話を聞くことができたのだけど「一部ではICOをしていると監査法人が監査契約を結んでくれないとか、投資家から出資を受けづらいといった話も聞く」のだという。

GINKANとセレスのメンバー。前列の左から2番目がGINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏

セレスではこれまで仮想通貨・ブロックチェーン領域の事業展開や、関連するスタートアップへの出資を推進してきたが、アプリケーションレイヤーへの投資はまだ多くないそう。シンクロライフについてはトークンエコノミーとの相性なども鑑みて出資をしたいと考えた一方で、ICOをしていることがひとつのネックになった。

「(セレスは)事業会社なのでそこまでエグジット、エグジットと言う訳ではないが、取締役会などで話をする際にはそのストーリーを話す必要はある。もし仮に監査法人がつかなかった場合にどうするかを相談した上で『だったらトークンへの転換権をつければいいのでは』という話が出てきた。ビジネスとしてきちんと成功すれば、その裏側にあるトークンは値上がりしていると考えられるためだ」(セレス担当者)

トークンへの転換権を行使することで、IPOやM&A以外でのイグジットも仕組み上は可能になり、これがスタートアップの新たなオプションにもなりうるというのが双方の見解。フレキシブルな資金調達の手段を作ることで、スタートアップ界隈へはもちろん「トークンエコノミーの発展にも寄与できれば」という。

良質なレビューにはトークン報酬、グルメSNS「シンクロライフ」が新バージョンのβ版公開

AIを活用したパーソナライズエンジンによって、ユーザーのレストラン探しをサポートするグルメSNS「シンクロライフ」。このグルメサービスがトークンエコノミーの仕組みを持ち込んで、新たにバージョンアップしたようだ。

シンクロライフを運営するGINKANは8月2日、同サービスの新バージョンのβ版を公開した。

新しくなったシンクロライフでは良質なレストランレビューを投稿したユーザーに対し、報酬として独自のトークン(SynchroCoin)が付与される仕組みなどが追加。トークンエコノミーを活用することで、自律性を持ちながら成長し続けるレストランレビュープラットフォームの構築を目指すという。

なおGINKANでは2017年9月に香港法人SynchroLife LimitedにてICOを実施。今回のβ版は同プロジェクトのロードマップにおいて、最初のマイルストーンとしていたものだ。

シンクロライフは「AIとユーザーが作るレストラン格付けガイド」をコンセプトとしたグルメSNS。各ユーザーごとの食の好みなどを学習し、レストラン検索やフィードをパーソナライズすることで、自分に合ったお店を探しやすい環境を作っている。

同サービスには現在17万件以上のレビュー、42万枚の写真が掲載。全登録ユーザーのうち19.68%のユーザーがレビューを投稿しているという。日本語からスタートしたのち、2017年7月には英語・韓国語・中国語にも対応。世界中で利用できるグローバル版の展開を開始した。今は82ヶ国でユーザー登録、48ヶ国でレビュー投稿がされているそうだ。

そして冒頭でも触れた通り、今回の新バージョンでは従来の仕組みにトークンという概念やウォレットという機能が加わることになる。

シンクロライフでは現在のレビュー貢献度のスコアをより合理的なアルゴリズムへとアップデートするとともに、良質なレビュー投稿者がSynchroCoinをインセンティブとして受け取れる仕組みを導入。レビュー、翻訳、レストラン情報の作成や更新などへ報酬が提供されるようになる。

この報酬制度はレビュアーの信頼スコアが反映される構造のため、しっかりと機能すれば不正やレストランから依頼を受けて投稿することを抑制し、健全なグルメSNSを育てることにも繋がりそうだ。

また今回全てのユーザーが利用可能な暗号通貨ウォレット機能も追加。報酬として受け取ったSynchroCoinが管理できるほか、ETHを始め様々な暗号通貨を追加予定とのことだ。

なお今後加盟店で飲食をした場合に、食事代金から還元リワードとしてSynchroCoinを受け取れる仕組みを展開する計画。トークンを受け取る際にもこのウォレット機能を利用することになるという。

当然ながら細かい機能や特徴に違いはあると言えど、レストランのレビューを投稿したり美味しいお店を検索できるプラットフォーム自体は「食べログ」や「Retty」などを含め複数存在する。

ただ今回のシンクロライフの取り組みはとてもユニークかつ興味深いものではないだろうか。アプリを見ている限り、2018年冬以降にはSynchroCoinをレストランの食事券と交換したり、食事代金の決済で利用したりできるような仕組みも予定しているようだ。

これは勝手な想像だけど「レビューを投稿して獲得した報酬を使って新しいレストランで食事を楽しみ、そのレビューを書いてまた報酬を手にする」といった新たな経済圏のようなものが誕生する可能性もありそうだ。