マネーフォワードがスマートキャンプを子会社化、SaaS事業拡大へ

マネーフォワードは11月11日、SaaSマーケティングプラットフォームを提供するスマートキャンプを子会社化(グループ会社化)したことを発表した。来期となる2020年11月期初よりP/Lが連結対象となる。株式取得の費用は、手元現預金と金融機関からの借入金を充当予定としているが、当期業績への影響は軽微としている。

具体的には、スマートキャンプの既存株主から19億9800万円で72.3%の議決権所有割合ベースの株式を取得。内訳は、複数のVCが持っていた66.0%の株式をすべて買い取ったうえで、経営陣の持株の一部も約20億円で買い取って、持ち分を72.3%とにした。

スマートキャンプは、SaaSプロダクトと導入希望企業をつなぐBOXIL、見込顧客獲得・興味喚起を目的とした「インサイドセールス支援」を実現するうBAILES、Biscuetなどのサービスを手掛けており、コア事業のBOXILは同社の売上高の7割を占め、黒字安定化している。また、BALES事業は前年比で売上高が287%と急成長。Biscuet事業は現在先行投資の段階だ。

今回のグループ会社の狙いについてマネーフォワードは、高成長するSaaSマーケティング領域への事業拡大を挙げる。マネーフォワードが注力する、バックオフィスSaaSの潜在市場規模は約1兆円、スマートキャンプがカバーする国内SaaSマーケティングの潜在市場規模は約0.9兆円。今回のグループ会社により、グループ全体の潜在市場規模は1.9兆円と約2倍になることから、マネーフォワードはバックオフィスSaaS、SaaSマーケティ ング領域で圧倒的No.1を目指すとしている。なお今後も、アライアンスやM&Aを通じて、その他SaaS領域への展開を図るとのこと。

SaaS企業のマーケ・営業一環支援を目指す「ボクシル」運営がKDDIと資本業務提携

法人向けクラウドサービスの比較サイト「ボクシルSaaS」やインサイドセールス支援サービス「BALES(ベイルズ)」を運営するスマートキャンプは5月20日、KDDI Open Innovation Fundから資金調達を実施し、KDDIと業務提携を行うと発表した。両社は業務提携により、SaaS企業のマーケティング・営業をワンストップで支援するプラットフォームの実現を目指す。調達金額は非公開。

写真中央:スマートキャンプ代表取締役 古橋智史氏

スマートキャンプが提供するボクシルは、SaaSユーザーとSaaS企業のマッチングプラットフォームだ。ユーザーは、経費精算システムや営業支援システム、採用管理システムなど、さまざまなSaaS製品を比較したり、口コミを確認したりすることができる。2015年5月の運営開始以来、2019年4月末時点で月間1200万PV以上、10万人以上の会員に利用され、SaaS企業のマーケティングをサポート。月間3万件以上のSaaS企業のリード獲得に至っているという。

また、インサイドセールス支援サービスのBALESは、BtoB営業をコンサルティングとアウトソーシングでサポートするサービスだ。見込み客獲得後のインサイドセールスのターゲット選定やKPI設計、スクリプト作成、電話代行などによる営業活動の効率化や、オンラインセールスのアウトソーシング、フィールドセールスのコンサルティングなどによる支援を実施。2017年9月に提供を開始し、100サービスを超えるSaaS企業の営業支援を行ってきた。

今回、KDDIとの資本業務提携によりスマートキャンプでは、SaaS企業の認知度向上からリード獲得、商談、受注、請求まで一気通貫でサポート可能なSaaSプラットフォームの実現を目指す。

スマートキャンプはボクシルやBALESによる、オンラインでの認知度向上から受注までの支援を担当。KDDIが保有する法人向け通信サービスやクラウドサービスの販売チャネル、あるいは契約・請求管理の仕組みと連携することで、オンライン・オフライン両面でSaaS企業のマーケティング・営業活動を一環して支援できるプラットフォームの実現を狙う。

サブスクリプション型のSaaSビジネスでは、ユーザー顧客の成功体験を向上させ、契約継続やアクティブな利用を促すことが成長には不可欠で、むしろ成約してからの“カスタマーサクセス”実現が勝負とも言える。

スマートキャンプ代表取締役の古橋智史氏は「現在はインサイドセールス支援を行うBALESで、主にオンラインでカスタマーサクセスの支援をしている。その後どうしても対面でのサポートが必要になったときに、KDDIに協力していただく、という連携も強化していきたい」と述べ、顧客企業の支援をさらに強めていく考えを明らかにした。

古橋氏は「提携に先駆けて、既にかなり時間をかけて事業開発に取り組んでおり、早い段階で結果を出せるようにしたい」と意欲を見せる。「スマートキャンプとしては、大手企業と資本も絡んだ業務提携は初となる。国内でのSaaS普及を、KDDIと共に推進できればと思います」(古橋氏)

米SaaS領域への投資額は年間3.2兆円、SaaS業界レポート

SaaSを提供する企業とそれらのサービスを利用したい人をつなぐ「ボクシル」を提供するスマートキャンプは8月21日、SaaS業界の現状をまとめた「SaaS業界レポート」を発表した。発行は今年で2回目。なかなか興味深いレポートなので、TechCrunch Japan読者のみなさんにも簡単に紹介しよう。

国内におけるSaaSの導入状況

企業によるクラウドサービスの導入は年々拡大している。本レポートによれば、2013年時点でクラウドサービスを利用している企業は全体の33%程度(n=2183)だったのに対し、2017年時点では57%にまで上昇している。僕たちTechCrunch Japanの運営はほぼクラウドサービスに依存しているから、正直「まだこんなものか」と思ってしまったけれど、それでもオンプレミスに比べてクラウドが主流になりつつあるのは事実だ。

クラウドサービスを利用することのメリットの1つとして、労働生産性の向上が挙げられると本レポートは指摘している。ここでは労働生産性を「営業利益、人件費、減価償却費の合計を従業員数で割ったもの」と定義しているが、クラウドサービスを利用していない企業に対して利用している企業の労働生産性は約30%高いことが分かったという。

クラウドサービスはオンプレミスに比べ、導入コストが低く、更新性や拡張性にも優れているうえ、本レポートによれば労働生産性も高くなる。クラウドを導入していない企業でも、こうしたメリットは理解しているようだ。本レポートによれば、「(クラウドサービスの)メリットが分からない、判断できない」と回答した企業は前年比で約6%ほど減ったという。でも、今年になって増えたのは「必要がない」という回答だった(約4%以上)。TechCrunch Japanで普段取り上げるスタートアップはSaaSを開発していることも多いが、これまで以上にサービスが持つ良さ、必要とされる理由を打ち出す必要があるということなのかもしれない。

SaaS業界における資金調達の動向

普段、TechCrunch Japanでスタートアップによる資金調達のニュースを伝えるのは、「資金の流れから業界のトレンドが見えてくる」と僕たちが考えているのが理由だ。なので、SaaS業界についても、資金調達の動向からこの業界のトレンドを見てみることにしよう。

まずは米国から。本レポートによれば、米国のVCはSaaS領域に年間で約300億ドル(約3兆2000億円)を投資している。この数字は2014年頃からVCマネー全体の拡大とともに上昇していて、2016年にはVCマネー全体の40%がSaaS領域に投資されたという。SaaS企業によるIPOも盛んだ。2015年のAtlassian、box、Shopifyや2016年のtwillio、2017年のmongoDB、oktaなどがその代表例だろう。そして今年はSaaSの代表格とも言えるDropboxの上場があった。

国内におけるSaaS企業の資金調達も活発だった。2017年には名刺管理サービスのSansanが約42億円を調達MAサービスのフロムスクラッチも約32億円を調達している。2018年における大型調達にはSmartHRの約15億円プレイドの約27億円などがある。また、2017年には会計分野のSaaSを展開するマネーフォワードが上場するなどしている。各分野における資金調達状況(2018年)は以下の通りだ。

この記事で紹介したのは「SaaS業界レポート」のほんの一部だ。レポート全文にはこのWebページからアクセスできるので、確認してみてほしい。また、このレポートでは各分野ごとの国内外のSaaSをまとめたカオスマップも公開されている。まさに“カオス”マップという様相で目がチカチカしてくるけれど、「自分は大のSaaS Loverだ」と主張したい人がいれば、これをデスクトップの壁紙にしてみてもいいかもしれない。

法人向けクラウドサービスの比較サイト「ボクシル」が総額3億円の資金調達

法人向けクラウドサービスの比較サイト「ボクシル」を運営するスマートキャンプは5月29日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ三菱UFJキャピタルSMBCベンチャーキャピタルおよび既存株主を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額3億円を調達したと発表した。

同社は2015年11月に1億5000万円の資金調達を実施しており、ボクシルをリリースした2015年4月以降の累計調達金額は約5億円となる。

スマートキャンプが手がけるボクシルは、いわば“BtoBクラウドサービスの価格.com”のようなサービス。会計ソフトやマーケティングオートメーションなど様々な種類の法人向けクラウドサービスの特徴や価格などを比較したり、口コミをチェックすることができる。現在、サービスの掲載数は2400件以上で、口コミの掲載数は1万件以上だ。

ユーザーが気になるサービスの資料請求を行うと、サービスの提供元には資料請求をした企業の担当者のプロファイルが提供される。クラウドサービスを提供する企業にとって、ボクシルは見込み客獲得のための1つの手段だ。一方のスマートキャンプは資料請求1件あたり1万円〜の報酬を受け取る。

なお、以前は専用のチャットで直接サービス提供企業の担当者とやりとりを行うことができるという機能があったが、現在その機能は提供されていない。

リリースから約2年が経過した今、月間PV数は120万PVを超え、ボクシルを通した資料請求の数は累計で約6万件を数える。同社は今回調達した資金を利用して、このボクシルの更なる開発と採用強化を進めるとしている。

それに加えて、スマートキャンプは新サービスのリリースも同時に発表している。見込み客のマネジメントプラットフォーム「BALES(ベイルズ)」だ。

ベイルズの最大の特徴は、見込み客の“興味度”を可視化して管理ができるという点だ。スマートキャンプ代表取締役の古橋智史氏は、「資料請求を行ったユーザーに対して検討具合などのヒアリング(オンラインおよびオフライン)を行い、それにメールの開封率などのデータを組み合わせることで見込み客ごとの興味度を可視化する」と話す。また、その興味度をもとに、どの見込み客に対して対面営業を行うべきかなどを教えてくれるリコメンド機能も備えられている。

ベイルズのマネタイズ方法について古橋氏は、「今後1年間くらいで月額課金方式が良いのか、もしくは有料課金方式が良いのかを見定めていく」と話す。

これまで、グリーベンチャーズなどインターネット色が強いVCから資金調達を行ってきたスマートキャンプだが、今回のシリーズBでは、伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどBtoB領域でも名の通った投資家が加わっている。古橋氏は、「私たちはまだ社歴が浅く(2014年創業)、BtoBの領域ではそれだけで受け入れられないこともあった」と語る。今回のラウンドに参加した投資家のおかげで、この領域でも通用する知名度を手に入れたと言えるかもしれない。

見込み客を“獲得”するためのボクシル、そして見込み客を“管理”するためのベイルズをリリースしてきたスマートキャンプ。同社は今後もマーケティングの各フェーズで利用できるサービスをリリースしていき、それらを1アカウントで利用できるサービス網を構築することも計画している。