スマートマグメーカーのEmberが新たに約26.5億円を調達、医薬品・母乳ストレージにも期待

2021年2月、Emberのコンシューマー部門CEOに就任した元Dyson(ダイソン)COOのJim Rowan(ジム・ローワン)氏は、TechCrunchに対し、同社の名前を冠した温度調節機能付きスマートマグカップ以外にも事業を拡大する計画を説明した。その際、ローワン氏は、コールドチェーン、特に医薬品の輸送が、今後の同社にとって重要なカテゴリーになる可能性があると述べていた。

その約束を果たし始める時が来たようで、Emberは、新たにシリーズEラウンドで2350万ドル(約26億5000万円)を調達し、累計資金調達額を約8000万ドル(約90億3000万円)に引き上げた。注目に値するのは、今回のラウンドを主導したのはFoxconn(フォックスコン)の子会社であるGOLDTekと、シンガポールのEDBIだということだ。後者は、Emberが国際的なプレゼンスを高めるために、東南アジアにR&Dセンターを開設する計画を発表したのを受けての投資だ。

Emberは2021年に入ってからチームを76%増員しているが、センターの開設でさらなる人員の拡大が必要となる。

創業者でグループCEOのClay Alexander(クレイ・アレクサンダー)氏は、リリースの中でこう述べた。「5年前にEmberを立ち上げて以来、当社の使命は、精密な温度制御に関する専門知識を用いて、お客様の現実的な問題を解決することでした。Emberは現在までに、温度制御、データ、および接続に関する129件以上の特許を取得しています。今回の追加資本は、今後数年間で、特にヘルスケアや乳児の授乳の分野で、当社の膨大な特許ポートフォリオの技術を実現するために役立ちます」。

コールドチェーンの分野では、同社は「初の自己冷蔵型クラウドベースの配送箱」の登場を示唆している。製薬業界を対象としたこの技術は、現在、かつてないほどの負担を強いられているグローバルサプライチェーンを対象としている。

画像クレジット:Ember

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

アマゾンがミルクが切れそうになると教えてくれるスマート冷蔵庫を開発中と情報筋

Amazon(アマゾン)は、レジなしのAmazon Goストアで使用している技術の一部を、あなたのキッチンに導入することを目指していると報じられている。InsiderによるとAmazonは、中に入っているアイテムを監視し、なくなりそうなものがあれば注文をアシストしてくれるスマート冷蔵庫の開発に取り組んでいるという。

このプロジェクトは少なくとも2年前から同社が取り組んでいるもので、Amazon Goシステムを開発したチームが指揮を執っているという。Goストアで使用されているJust Walk Out技術は、買い物客がカートに入れたものを追跡し、退店時に自動的にチャージするものだ。この冷蔵庫のプロジェクトには、Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)とLab126のハードウェアチームのメンバーも参加しているとのこと。

報道によると、この冷蔵庫は、中に入っている商品をモニターし、ユーザーの購買習慣を把握する。頻繁に購入する商品の在庫が少なくなると、冷蔵庫が知らせてくれ、Whole Foods(ホールフーズ)やAmazon Freshに追加注文しやすくするということで、同社の食料品部門が活性化する可能性がある。また、冷蔵庫はレシピの提案もしてくれるので、賞味期限が近づいている商品を忘れていた場合などにも便利かもしれない。

Insiderの情報筋によると、Amazonは冷蔵庫を自社では作らないだろうとのこと。家電メーカーとの提携を検討しているようだ。また、Alexa(アレクサ)による音声コントロールが搭載される可能性もある。それは大きな懸念ではないそうだが、家庭用ロボット自社製テレビなど、他のほぼすべてのタイプの製品にAlexaを詰め込んでいる同社の傾向を考えると、冷蔵庫が音声アシスタントに対応していても不思議ではない。

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同社はこれまで、このプロジェクトに年間5000万ドル(約55億7000万円)以上を費やしてきたと言われている。それでも、Amazonが計画を棚上げにする可能性もあるため、冷蔵庫が市場に出るという保証はない。もしこの冷蔵庫が発売されたとしても、おそらく安くはないだろう。Amazonの広報担当者は、同社は「噂や憶測については」コメントしないと述べている。

このコンセプトはまったく新しいものではない。2016年、Samsung(サムスン)は、ドアを開けなくても中のものを把握できる冷蔵庫を発表した。内蔵のタッチスクリーンを使って食料品を注文することもできる。Amazonの冷蔵庫は、切らしそうな商品にフラグを立て、Amazon独自の食料品エコシステムを通じ、それらの商品を補充注文できるということで、Samsungのアイデアをさらに推し進めたものといえる。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Kris Holt(クリス・ホルト)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Anna Omelchenko / Shutterstock

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(文:Kris Holt、翻訳:Aya Nakazato)

レストランに近い味が楽しめるスマートオーブンと食事キットサービスTovalaがさらに約31億円調達

新型コロナウイルス(COVID-19)をきっかけに自宅で過ごす時間が増えたことで、食事の仕方や内容に注目が集まっている。料理をするのが好きな人であっても、特に忙しい人や料理が得意でない人にとってはなおのこと、美味しいもの、栄養のあるもの、新しいものをいつでも食べられるように工夫するのは難しいだろう。そうした状況に機運を得て事業が好転したスタートアップの1社が2021年2月初旬、事業拡大のための資金調達ラウンドを発表した。

スマートオーブンと食事キットサービスを提供するTovalaがシリーズCラウンドで3000万ドル(約31億円)を調達した。シカゴに拠点を置く同スタートアップの共同創設者でCEOのDavid Rabie(デビッド・ラビー)氏はTechCrunchに対し、今回の資金の大部分は米国西部への生鮮食品の流通を支援する第2の施設を開設するために使われる予定であり、それはおそらくユタ州になるだろうと語った。その他の投資用途には、顧客サービスの改善や人材の獲得などが含まれる。

さらに将来的には調理済みの料理やレシピの選択肢も徐々に増やしていく予定だ。ラビー氏によると、Tovalaオーブンでの調理を目的とした料理づくりのサービスを、一流のレストランやシェフと提携して準備しているという。

「このオーブンがあれば、レストランに近い体験ができると思います」とラビー氏は説明する。「温め直すだけのものではなく、下ごしらえされた食材の提供により、地域のレストランへのリーチを開拓できると考えています」。

資金調達はLeft Lane Capitalが主導しFinistere Ventures、Comcast Ventures、OurCrowd、Origin Ventures、Pritzker Group Venture Capital、およびJoe Mansueto(ジョー・マンスート)氏も参加している。すべてこれまでの支援者だ。

Y Combinator出身のTovalaは、食肉加工大手Tyson(タイソン)をはじめとする興味深い投資家を惹きつけてきた。注目すべきは、2020年6月のシリーズBラウンドで2000万ドル(約21億円)を調達して以来、半年で2回目の資金調達ラウンドとなることだ。

前回のラウンドと同様、評価額は公表されていない。しかし、同社が相当数の実績を上げていることは今回の資金調達で証明されており、同社の価値がいかに上昇傾向にあるかを示している。

過去18カ月の年間収益は10倍に増加し(新型コロナ以前の増加を含む)、従業員数は40%増加、出荷量は300万食を超えている。同社によると、オーブンは毎月平均32回所有者によって使用されている(デバイスが接続されているため追跡可能)。

しかしラビー氏によると、総ユーザー数はまだ明らかにされていないという。

Tovalaのオーブンは299ドル(約3万1200円)で販売されているが、購入後半年の間に11.99ドル(約1250円)の食事(1食につき1人分)を6回注文することを約束すると、通常100ドル(約1万500円)安くなる。Tovalaは現在、そうした食事の義務なしに最大で130ドル(約1万3600円)の割引を提供しており—レストランが休業して家で過ごす時間が増えたことで、食事を考え直す人達の波に乗ろうとしているのかもしれない—オーブンの価格は約170ドル(約1万7800円)程度に下がっているようだ。

オーブンに入れ、付属のつけ合せを添えるだけで完成する同社独自の既製トレイの食事に加え、Tovalaのオーブンを使用して店で売られている何百もの既製食品もパッケージのバーコードをスキャンして仕上げることができる。Tovalaのアプリを使って自分でプログラムして調理したり、それとは別にトースト、スチーム、ベイク、ブロイルなど、通常のオーブンと同じようにTovalaのオーブンを使用したりすることも可能だ。

指1本でタップするだけで食べ物を注文することができるキット食品や宅配食品の数々は、多くの人々の家庭での食事に対する考え方に変化をもたらした。

どれも手軽に食べられるように作られている。しかしTovalaは、より幅広い選択肢の中で特定のニッチをカバーできることを期待して事業を拡大してきた。自宅で調理した新鮮な料理を食べたいが、料理キット会社によってあらかじめ加工された材料があったとしても、そうした料理を準備する時間も関心もない人たちである。

しかしそれはビジネスの一側面にすぎない。Tovalaのオーブンは同社が構築したバーティカルインテグレーションの中心的な部分であり、ハードウェアは売れにくいと言われている中でも依然として事業提案の一部として残していくとラビー氏はいう。

「私たちは高品質の食事を人々に届けるビジネスを進めています。オーブンはそれを実現するための重要な手段です」と同氏は続ける。「私たちはテクノロジーと食品に携わる会社であり、オーブンビジネスから離れることはありません」。

一方で、同社はオーブンを製造する他社との提携も拡大している。

たとえばTovalaはLGと契約を結び、自社のソフトウェアをLG製オーブンに組み込んで、アプリとバーコードスキャンシステムでプログラムできる料理やTovalaの食事キットを作れるようにしている。ラビー氏は、Tovalaのソフトウェアを動かすフルサイズのLG製オーブンは「私たちが参入するような製品ラインではない」ためこの取引は理に適っていると語っている。

LGは出資者ではないとされており、これらの新デバイスがいつ発売されるのかも不透明だ。なお両者の提携は2019年に発表されている。

とはいえ、この提携はインターネットに接続された機器やその周辺のサービスを構築しているハードウェア企業が、次の段階に向けて既存企業とより緊密に連携するというケースの良い例である。

競合となり得る企業を買収するケースは他にもある。BBQ製品大手のWeber(ウェーバー)は2021年1月、以前に投資していたスマートオーブンのスタートアップJuneを買収した。そして2017年にはElectrolux(エレクトロラックス)が真空調理家電のスタートアップAnova(アノーバ)を2億5000万ドル(約260億円)で買収している。

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この種のエグジットはTovalaのメニューにあるかもしれないし、ないかもしれないが、将来的に前菜からメインコースに移行するための選択肢であることは否めない。

今のところ同社は、独立性を維持して成長するという方針だ。ラビー氏によると、Left Laneが興味を示した背景には「家庭でスマート食品を作る」というPeloton(ペロトン)のようなカテゴリー定義の役割をTovalaが担っており、人々の日常の習慣や日課の一部になり得るという考えがあったという。

「Tovalaは、食事のサブスクリプションと接続されたデバイスを組み合わせることで、食品デリバリー業界で見られる他のどの製品よりも高い顧客定着率を達成しており、これまで定着率が低かったフィットネス業界でPelotonが達成してきたことと多くの点で類似しています」とLeft Lane Capitalの共同創設者でマネージングパートナーのJason Fiedler(ジェイソン・フィードラー)氏は声明で述べた。「私たちのチームはカテゴリーを定義する消費者サブスクリプション事業への投資における実績を有しており、Tovalaが次なる大手食品テック企業になる可能性に期待しています」。フィードラー氏は今回のラウンドで取締役会に加わる予定だ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Tovalaスマート家電資金調達料理

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

スマートマグの先を見据えるEmberが元ダイソンのトップをコンシューマー部門CEOに指名

温度制御スマートマグのEmberは米国時間2月12日、創業者のClay Alexander(クレイ・アレクサンダー)氏が2月16日付でグループCEOに異動することを発表した。同氏の後任には、ロサンゼルスを拠点とするスマートマグカップメーカーの同社は、コンシューマー部門CEOとしてJim Rowan(ジム・ローワン)氏を迎える。ローワン氏はDyson(ダイソン)のCOOを5年間務めた後、2017年から2020年までCEOを務めていた。

これは、Emberのような比較的小規模な企業にとっては大きなゲットだ。2012年に設立されたこのハードウェアスタートアップは、直近では2019年初頭に2000万ドル(約21億円)のシリーズDを調達し、資金調達総額は5000万ドル(約52億5000万円)弱となった。

アレクサンダー氏の同社における継続的な役割は、Emberのコンシューマー部門を超えた追加カテゴリを示している。「私はEmberを設立したとき、当社の温度制御技術には無限のアプリケーションがあると知っていました。ジム(・ローワン)が我々のチームに加わったことで、新興のヘルスケア分野に集中し、当社の技術を利用して生活の改善や救命にまで貢献できるようになります」と同氏は声明でこう述べている。

気の利いたテクノロジーとスマートなデザインのおかげで、同社はかなりニッチな製品にも関わらずそれなりの規模のフットプリントを構築し、Target(ターゲット)、Costco(コストコ)、 Best Buy(ベストバイ)、Starbucks(スターバックス)などでの小売販売を拡大している。同社はおよそ100人のスタッフという少ない社員数を維持しながら、これを実現してきた。

ローワン氏はTechCrunchの取材に対し、こう語っている。「彼らには精密な温度制御を軸にして、優れたIP、優れたデザイン、そして優れたイノベーションがあります。もちろん温度制御マグやフラスコから始まったわけですが、そのIPは他の多くのアプリケーションにも応用できます。私にとっては、無数の異なる産業や市場でそれを使用できるという黄金の糸は、本当に、本当にエキサイティングなことです。その1つがコールドチェーンですが、パンデミックが始まって以来、その重要性はさらに高まりました。これは、新市場での破壊と革新をどうやって実現できるかを示していると言えるでしょう」。

ローワン氏は、BlackBerryのCOOやFlextronicsの上級幹部を務めた経験もある。Dysonを退職した後は、PCH InternationalとKKRの両者にアドバイザーとして参画していた。しかし、Emberで彼が何をしようとしているのかを最も直接的に例示しているのはDysonだろう。Dysonは空気を動かす会社だ。それは掃除機、扇風機、ドライヤー、その他無数の製品カテゴリーに当てはまる。

根本的な疑問は、Ember独自の加熱・冷却技術を他の分野でどのように応用できるかということだ。産業レベルでは、食品や医薬品を国際的なコールドチェーンで出荷している間、所定の温度に保つのに役立つ可能性があることを意味する。また、同じ基礎技術をベースにして作られた消費者向け製品が増えることも意味する。

「現在のマグカップやトラベルマグ以外にも、もっとたくさんの製品がこれから出てきます」とローワン氏はいう。「消費者向けのパイプラインには多くの新製品があり、2022年または数年のうちに発売される予定です。さらに、既存の製品で新しい地域への展開も考えています」とも。

これは主にアジア地域(ローワン氏はシンガポールにとどまる予定)とヨーロッパを意味している。これまでのところ、Emberのフットプリントは米国中心だったが、パンデミックの中でのeコマースへのプッシュは、それをある程度拡大するのに役立っている。しかし、130ドル(約13640円)の電気スマートマグを生活に取り入れる人口の上限がどれだけ高いのかという疑問が残っている。Emberはまだ実際の数字をリリースしていないし、Dysonでの経験があるローワン氏は、プレミアム価格の製品をプレミアム価格で販売することには慣れ親しんでいるが、低価格ポイントまたは格下の製品にコミットする準備はできていないと思われる。

もちろん、保温マグカテゴリーの低価格モデルは近所の99セントストア(100円ショップ)ですでに購入できるし、Emberがそのスペースで競合しようとウズウズしているわけではないのは明らかだ。同様に、Emberの現在のラインアップとは異なり、それらの廉価製品はApple Storeには置かれないだろう。その代わり、同社はプレミアム消費者ブランドとして、より急速なペースで他のカテゴリーへの進出を続けることになりそうだ。ローワン氏は、「実際の技術は、温度制御技術により、飲料だけでなく、多くの新しい分野に拡大することができます」と述べている。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Emberスマート家電人事

画像クレジット:Ember

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

外はサクサク中はふんわり、トーストの味を上げるRevolution Cookingのスマートトースター、ただし約3万円とお高め

この10年間で数々のスマートなホームガジェットが生まれ、私たちがどれだけ家電にスマートさを求めているかが明らかになった。しかし、こと料理に関しては古いやり方のほうがよい場合が多く、スマート機能は物事をかえって複雑にするだけだったりする。そこに見事なバランスを持ち込んだのが、新登場のRevolution Cooking(レボリューション・クッキング)のR180 High-Speed Smart Toaster(ハイスピード・スマートトースター)だ。価格は299.99ドル(約3万1000円)。正真正銘、テクノロジーによって便利になった家電だ。トースターに必要のない、例えばインターネット接続などの機能は一切省かれている。

概要

Revolution Cooking R180で最もわかりやすい機能は、大きなよく目立つタッチスクリーンだろう。ボタンやスイッチなど、通常の機械的操作はこの画面で行うことになる。また、トーストの状況も画像で示される。まさにこれは、R180をスマートトースターたらしめる一面だろう。しかし同社のInstaGo(インスタゴー)加熱テクノロジーこそが、むしろ最大の差別化ポイントとして取り上げるべきものと考える。

基本的な形状は、ベーグルやハンバーガー用のバンズもゆったり入る広口のスロットを2つ備えたトースターだ。ベーグル、食パン、イングリッシュマフィン、ワッフル、トースターペストリー(Pop-Tartsなどのトーストして食べるお菓子)のモード選択が可能。設定できる加熱モードは、Fresh(生)、Frozen(冷凍)、Reheat(温め)の3つ。焦がし具合は7段階に調整できる。

使っていないときは、スクリーンに時計を表示させておくことができ、ときどきパン屑のトレイを掃除して空にするようにとリマインダーも現れる。

デザインと性能

画像クレジット:Darrell Etherington

R180の工業デザインは、奇抜でも過度に未来的でもなく良好だ。基本的にヘアライン仕上げのステンレス製直方体で、傾斜したクローム仕上げの正面パネルにタッチスクリーンが配されている。キッチンカウンターの上でも間違いなく見栄えが良く、タッチスクリーンの傾斜は立ったまま使うときでも表示がよく見えて、タッチ操作がしやすい。カウンターが混み合っている場合でも、比較的コンパクトなのであまり場所をとらない。

タッチスクリーンの表示は大きくて明るい。静電容量式タッチセンサーを採用しているので、入力に対してとても反応がいい。このインターフェイスで優れた点は、デジタルではあるがシンプルにまとめられているところだ。必要なものがすべて画面の中に収められている。標準的な歯車アイコンで設定が開く。ここには普段は必要ない時刻合わせや、スリープ時に表示される時計のアナログとデジタルの切り替えといった項目が格納されているので、画面がすっきり整理される。

使い方は簡単だ。インターネットの接続設定もアプリのインストールも必要ない。コンセントに電源プラグを差し込むだけで起動し、パンの種類、焦がし具合、加熱モードの設定が画面に現れる。焼きたいパンの種類を表示されるイラストで選択して指でタッチするか、左右にスクロールさせて別のパンを選ぶ。3つの加熱モードから1つ選び、色で示される焦がし具合から、自分の好みにいちばん近いものを選ぶ(ここでの選択に合わせて、すでに設定したパンの画像がアップデートされる)。そしてStart(スタート)ボタンをタップすれば、後は放っておいて忙しい朝のレースを開始できる。

画像クレジット:Darrell Etherington

これはまさにレースだ。Revolutionのこのトースターは最速クラス。同社の宣伝文句からはもっと早く焼けそうな期待があったが、それでも普通のトースターより早いことは疑いない。もう1つの目玉が、Revolutionが謳っている焼け具合の品質だ。パサパサにならずに、焼き上がりの味が向上すると約束している。冷凍パンをこんがり焼くという難しい設定においてもだ。

実をいうと、送ってもらったトースターを初めて試したとき、そうしたRevolutionの主張のことはよくわかっていなかった。しかし、私も私のパートナーも、R180で焼けばどんなパンでもパサパサにならないことにすぐに気がついた。普段使っているブレビルのトースターとまったく違う。ふっくらしていながら、トーストされた部分は黄金色でサクサクだ。意外に聞こえるかも知れないが、Revolutionの主張は実証された。スマートトースターは、トーストの味を良くする。

結論

2枚焼きトースターに300ドル(約3万1000円)というのは、いくらなんでも贅沢すぎると感じられるだろう。たしかに、そのとおりだ。しかし、スマートではない高級トースターも、すでに家電製品の予算の上限を押し上げている。Revolutionの優位性を謳う中の最大の主張は外はサクサク、中はふわふわでパサパサにならないという点だ。そこはしっかりやってくれる。タッチスクリーンのせいで価格が吊り上がっているのはほぼ間違いないだろうが、それによって望みどおりの焼き加減を設定できるハッキリとわかりやすいインターフェイスが実現している。しかも使っていないときは、カウンターの上の置き時計としていい感じに見える。

まとめるなら、Revolutionのスマートトースターは、ほどよくスマートだということ。スマート家電として求められる場所でスマートさを発揮する。ただし、自分がどれだけトーストにこだわっているかを、じっくりとよくよく考えるべき価格ではある。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:スマート家電レビュー

画像クレジット:Darrell Etherington

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(翻訳:金井哲夫)